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インフルエンザ感染症と比較する新型コロナウイルス感染症


地域医療ジャーナル 2021年2月号 vol.7(2)
記者:syuichiao
薬剤師

 2021年1月現在、新型コロナウイルスの感染は世界規模で拡大し続けており、日本でも指数関数的に感染者数が増加しています。他方で、先月もご紹介したようにインフルエンザの定点当たりの報告数は、前年同月比で激減しています。

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【図1】インフルエンザ定点当たり報告数推移(参考文献1より作成)

 【図1】は昨年末までのインフルエンザ定点当たり報告数です【1】。例年であれば、12月末にかけて感染者数は増加しますが、今シーズンの報告数は0.01のまま横ばいであり、流行の兆しさえも見られません。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う予防意識の高まりが、インフルエンザの流行状況に小さくない影響を与えていることは明らかでしょう。また、インフルエンザには感染を予防するためのワクチンがあり、国民の多くがワクチン接種をすれば、集団的な免疫を獲得することができます。高い感染予防意識とワクチンの接種で、感染症の流行を強く制御できるということを、コロナ禍は間接的に実証したことになります。

 しかし一方で、当の新型コロナウイルス感染症については流行が加速しています。新型コロナウイルスに対するワクチンは開発されて間もなく、日本ではまだ接種が行われていません。新型コロナウイルスに対する集団的な免疫を獲得できていないことが、感染拡大の大きな要因なのでしょう。現状では不要不急の外出を控える、三密を回避する、手指衛生をしっかり行うなどの基本的な感染対策をより強化することでしか、感染を制御することは困難と言えます。

 そのような中でも、“新型コロナウイルスは風邪を引き起こすウイルスの一種であり、その感染者の多くは軽症だから、それほど神経質になる必要はない” というようなメッセージも様々なメディアで見かけます。新型コロナウイルスは本当に単なる風邪のようなウイルスにすぎないのでしょうか。今回は僕たちにとって身近な感染症の一つであり、今シーズンにおいては流行が激減したインフルエンザと比較しながら、新型コロナウイルス感染症について、あらためて文献的考察をしてみたいと思います。

【参考文献】
【1】厚生労働省 インフルエンザの発生状況について(https://www.mhlw.go.jp/content/000717018.pdf


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