AM4:00

ふと目が覚めた。時計の針は午前四時を指していた。

たまに用もなくこんな時間に起きてしまうことがある。

普段なら起きてしまってもまたすぐに目をつむって夢の世界に戻るが何を思ったのかカーテンを開き窓を開け、ベランダに出た。

東京を「眠らない街」と例えているのをどこかで聞いたことがある。朝も夜も明かりが点り続け、絶えず人々が活動を続けているさまを「眠らない」と表現したらしい。

自分が今住んでいる場所は東京近郊に該当し、東京と同じようにこんな時間でも外は明るく、車も絶えず走っているのかと思っていた。

しかしベランダから見えているその景色の中に明かりなんて数えられるほどしかなく、しんとしていた。車や人の姿も全く見えない。

期待外れではあったが予想外なものを見ることができ、いい意味で期待を裏切られた。

そして何故か心の奥底から「勝った」と思った。

日が出ているうちは人々はせわしなく働き、車を走らせる。そんな社会で生きるには「何者か」でなければならない。会社員や保育士、銀行員など「何者か」でなければ生きていけないのが今の社会だ。

そして人々は「何者か」であると同時に「何者でもない」。会社や街なんかの風景や空気へ溶け込んでいき、自分という存在すら忘れていく。

そんな残酷な世界とは打って変わって今自分の目の前に広がる景色はそんな残酷さは微塵も帯びておらず、感じ取ることもできない。

今自分は人々とは違う世界に立っているんだ。くだらない競争から逃れることができたんだ。

そんな優越感に似た感覚をしばらく堪能して窓を開けたままベッドに倒れた。


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