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「交通取り締まり ~ 若かったあの頃」

 スピード違反や一時停止不履行などで捕まった経験のある人も多いと思う。長野県に住んでいた頃は、仕事であちこちと移動する必要があったので、ちょくちょくお世話になったものだ。

 経験してみれば分かるが、その瞬間、実に悔しい思いをする。一瞬にして違反者となり、しかも、以後1年間無違反で過ごさないと免停への道をひた走ることになる。クルマ無しには成り立たない仕事をしていたので、生活そのものを脅かされる事態と言っても過言ではない。
 今の今まで、仕事のことを考え、まじめに生きていた善良な市民から、大金(僕にとっては大金だ)を巻き上げ、多大なストレスに晒すなんて、真っ当な行為ではない(警察関係の方、ごめんなさい。これは厭くまでも、その瞬間の感じ方を大袈裟に言っているだけなのです。絶対的真実だとは思っておりません)。

 その悔しい思いを引きずったままにしていると、その後の運転に影響が出てしまうのでよろしくない。だから、目の前の警察官をいびり倒すことにしている(もとい。していた。すでに過去形である。今はそんなことはしない。それ以前に、捕まるような違反おすることさえない)。
 以下は実際の体験談である。
「あそこ、一時停止なんですよ。危ないですからね。気をつけてくださいね」
「あなた、それ本音で言ってるわけじゃないでしょ? 今の一停不履行、完全には止まらなかったけど、ほぼ止まったと言っても良いほど減速してたし、ちゃんと安全は確認しましたから、あれで事故が起きる可能性は無いでしょう。悪いけど、本当に悪いことをしたとは思ってませんよ。完全に止まること以上に安全確認のほうが大事なことは子どもでも分かるでしょう? そこを見てください」
「安全確認したかどうかまでは分からないですから」
「え? 警察が無能だからって、日本国民をそのレベルに合わせて、不必要な完全停止を強いるわけ? それって、安全のための規則じゃなくて、完全に取り締まりのための規則ですよね? まあ、あなたもノルマあるから大変でしょうけど、世の中の人間が真面目に働いてる間、大の大人が真っ昼間からそうやってバカみたいにじっとして、善良な市民から金を巻き上げるために潜んでるなんて、因果な商売だね。私だったら、絶対したくない仕事だけど、そんな変な役回りも社会のためには必要なんでしょう。取締りの警官なんて、みんなから嫌われて、毎日寝付きが悪いでしょうけど、まあ、自己嫌悪に陥らないように、せいぜい頑張ってくださいね。陰ながら応援してますよ!」
「すみませんねえ。気をつけて帰ってください」
「・・・」
 その若い警官、次第にうなだれ、申し訳なさそうに「すみません」などとのたまった。
 君ぃ・・・、それは、ちょっと立場上まずいでしょうが・・・。この場合、取り締まる側のあなたが謝ってしまっては、いかんのだよ。

 そのときは、その間抜けさ加減に内心笑いをこらえていたが、やっぱどう見ても僕のほうが哀れなことは、誰の目にも明らかである。
 っていうか、これを読んだ誰もが、警官の味方になってしまうだろうなぁ・・・。やれやれ、我ながら変な人でした、まったく^^;

 これは厭くまでも遠い過去の話です。最近では、もちろんこんな悔し紛れの振る舞いはしません。みんないろんな経験積んで、大人になるんですよ。

 鹿児島に帰ってからはや20年。今では立派なゴールド会員です。帰郷したとき感じたけど、こっちでは長野県に比べて、みんなゆっくり目に走ってますね。そのペースに合わせて走ってると、違反しないみたいです。
 さらに、ここ4年ほどは、車もバイクも手放し、もっぱら徒歩がバスでの移動。運転する機会さえほとんどありません。
                  (2023年 9月)

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