ペルー

ペルー
 
8か月に渡り中南米7か国に滞在しましたが、一番好きで住むことも十分考えられると感じたのはペルーでした。特にクスコ、ピサックは是非再訪したい所です。
実はペルーは33年前に行ったことがあり、リマとチャチャポヤスに滞在しましたが、食べ物、特にデザートが美味しかった記憶があるものの、当時は全体的に大変貧しく、左翼ゲリラが跋扈していて危険な印象でした。今回リマが以前と比べてとても発展しているのに驚きましたし、治安も以前より格段に改善している印象を持ちました。リマはともかく、アンデス地方はコロンビアと比べると治安は格段にいいと思います。
ペルーに行く観光客の大多数はマチュピチュ観光目的なのでクスコに行きますが、クスコは誰もが大好きになる素晴らしい都市だと思います。スペイン人によりインカ帝国が滅ぼされて500年ほど経つにも関わらず、インカの面影と文化を色濃く残し、ケチュア語もまだ現役で使われています。私は中南米ではメキシコ、ボリビア、ペルーが好きでしたが、これらの土地ではアステカ、マヤ、インカ文明が高度な社会も持っており人口も多くいたため、スペイン植民地時代を経ても伝統、文化がまだまだ残っているという特徴があります。中南米旅行中には、スペインの新世界征服というのは世界史の大事件だったのだということを改めて認識しました。そしてキリスト教の布教を禁止し、宣教師を国外追放した上、鎖国政策を貫いた故国の先人の慧眼に、しみじみ感謝しました。文化、伝統、言語は一度失われてしまえば二度と元には戻らない貴重なものだということを強烈に感じましたし、何百年もの植民地時代を通じて伝統を継承し続けてきたアンデスの人々には敬服の念を抱きます。地元の人と話すと、ペルーの人々はインカ文明をとても誇りに思っていることがよく伝わってきました。
クスコは世界中から観光客が訪れるので、ショッピングから各種ツアーまでありとあらゆるサービスが提供されていて、観光客も大金持ちからバックパッカーまで様々ですので、高級から格安まですべてのレンジが整っています。短期、長期に関わらずありとあらゆるタイプの外国人滞在者が快適に過ごせるのがクスコだと思います。ベジタリアン、ビーガンフードも充実しており、市場の食堂ですら食べられます。又、大観光都市なので英語が南米にしてはよく通じます。
クスコは素晴らしい都市ですが、私が大好きだったのはピサックというクスコから車で1時間ほどのヒッピータウンです。広大なアンデスの山々に囲まれた静かな町は民芸品の市場で有名ですが、何故か欧米系のヒッピーたちが長期滞在するヒッピータウンになっており、アヤワスカ、サンペドロ等の所謂サイケデリックを経験しに来る人達も多くいます。ヨガ、マッサージ、各種ヒーリングや講義も随時行われており、私もいくつか参加しましたが面白かったです。もちろんヒッピーの中には所謂変な人もいますが、都会の様に麻薬中毒で犯罪を犯すような危険な人はおらず、治安は良好でとても平和な雰囲気でした。物価も安く、QOLの高い生活が過ごせる所だと思いました。基本的には長期滞在者は欧米人なので、彼らを主な顧客とするレストランや店は英語もOKですし、すぐに顔なじみになるので地元民のように暮らせる感覚が味わえます。
唯一クスコとピサックの難点を挙げれば気候と高度です。クスコは3400M、ピサックは3000Mの高度に位置するため、昼間はともかく夜は大変冷えます。クスコとピサックでは民泊を利用しましたが、クスコではガスストーブがあったものの部屋全体を暖めるほどの効力はなく寒かったですし、ホテルに暖房が無い観光客は大変そうでした。ピサックでは家に暖炉があったので段違いに暖かかったですが、毎晩夫は火おこしに格闘していました。高山病に関しては個人差があり、症状が酷い人にも多く会いましたが、幸い私達夫婦は高山病の症状は出ませんでした。そうはいっても体内に入る酸素量が少なくなるのは間違いないので、個人的にはそう影響を感じませんでしたが、多分体には影響があったと思います。とはいえアンデス山脈は壮大で素晴らしく、クスコ周辺どこへ行ってもヒマラヤ並みに美しい山々の風景があります。このような山々の麓で暮らすだけで英気が養えると思います。
又これはペルーだけの問題ではなく多くの発展途上国共通なのですが、家のトイレで(外も同様ですが)トイレットペーパーを流せないのは微妙なストレスでした。後日カナダの民泊で分厚い高級トイレットペーパーが備えられていた時には、先進国のトイレの排水の強力さに感動しました。又、外で使うトイレはたいてい汚いしトイレットペーパーも無いので、常時ジャケットのポケットにトイレットペーパーを持ち歩いていましたが、カナダに着いた途端に無用の長物と化しました。
これはペルーだけの問題ではありませんが、ペルーは政治が安定しているとはいえず、2022年年末にはデモで観光客がクスコ、プーノ周辺に足止めされた事件もありました。現在でもプーノ周辺はデモをしているということで、特にチチカカ湖の観光産業は壊滅的な影響を受けています。私達が訪れた2023年4月はプーノ周辺でデモが続いているということで、まだ観光客は例年並みに戻っておらず、どこも比較的空いていたので個人的にはラッキーでした。
ペルー人、特にアンデス地方の人は観光地でありながらも押しが強くなく、所謂ラテン気質ではなくおとなしめの所は日本人には好感が持てました。クスコ周辺では手織りの素晴らしい民芸品を買えるのですが、スーツケース一杯買いたかったものの、旅がまだまだ続くため買えなかったのが残念でした。
ボリビアでも同じでしたが、とても印象深かったのは、民族衣装を着て織物をしたり売ったりしているおばさん、おばあさん達でした。街中はもちろん、ピサック遺跡の険しい山の中にもいましたし、朝晩に鮮やかな織の風呂敷を背中にしょって山道を歩いている姿をよく見かけました。ピサックでは民泊から町まで徒歩20―30分ぐらいで、帰りは上りなのでよくトゥクトゥクを使っていましたが、4ソル(1USD)の運賃は私達にとって安価でも彼女達には高価に違いなく、黙々と荷物を背負って山道を歩いている彼女達の姿には心を打たれました。ペルーの物価は安いですが、特に山岳地に住んでいる普通の人々の収入は低く、道端の行商人から買い物をするとおつりを全く持っていない人にも遭遇しました。南米は資源も観光資源も豊かな国が多いのですが、残念ながら貧困は出口の見えない大きな問題となっています。政治が安定して、少しでも経済が上向きになることを祈っています。
 
まとめ
プラスポイント
物価が安い
スペイン語は習得が比較的容易
食べ物が美味しい
国内旅行先が豊富
人はフレンドリー
アンデス地方の治安は良好
歴史、文化が素晴らしい
観光地では英語が通じる
アンデスの自然は雄大で素晴らしい

マイナスポイント
リマは治安が微妙な所も有
アンデス地方は高山病リスク有
アンデス地方は朝晩寒い
政治的に不安定
トイレの清潔さは期待出来ない
トイレットペーパーは流せない
貧困問題有

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