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親・メンピン良形良形一向聴の破壊力

0、はじめに

 私は『知るだけで強くなる麻雀の2択』において、

中巡・対子リーチ・親
メンピンリャンメンリャンメンイーシャンテン
初手無筋端牌押し・聴牌時無筋端牌押し

の状況で

「押しても降りても局収支的に大差ない」

旨のことを書いた(以下はページの該当部分)。

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 そして、この問いに関する解説のページがこちらである。

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 局収支は押しても降りても約ー1700。
 よって、トントンである、と。

 今回はこれを補足しようと思う。

1、基礎数値の確認

 まず、この結論だけ見て、「信じる」、「信じない」などという二者択一の態度を示すことはデジタル的麻雀観に照らして合理的ではない
 すべきことは「数値を確認し、疑問点を洗い出し、場合によっては自分で手を動かし計算し、検証すること」である。

 この点、通称『二択本』においては、『「統計学」のマージャン戦術』と異なり、細かい数値が書いていない
 よって、私が局収支を求めた際に参照した数値を明らかにする。

 押した場合・降りた場合の諸数値(牌譜解析結果に基づく予測値)は次の通りである。

○ベタオリ時 局収支-1700点(局収支は10の位四捨五入
 アガリ率・放銃率 0%
 被ツモ率 40%(被ツモ時点棒収支-3600)
 横移動率 27%
 流局率 33%(流局時点棒収支-900)

○1p押し時 局収支-1700
 アガリ率 12%(アガリ時点棒収入6900)
 放銃率  19%(放銃時点棒収支ー5300)
 被ツモ率 33%(被ツモ時点棒収支ー3600)
 横移動率 22%
 聴牌流局率 4%(聴牌流局時収支900)
 ノーテン流局率 10%(ノーテン流局時点棒収支-900)
 全体のリーチ棒没収割合28%(リーチ棒没収時点棒収支ー1000)


 以上が、両者をトントンと考えた数値的根拠である。

 これから、こうなった理由を考えてみる。
 理由は次の3点に集約されると思う。

2、ベタオリすると結構点数を持っていかれる

「対親リーチで愚形聴牌した場合で押すか引くか」を考える場合も言えることであるが、ベタオリするというのは相応の損失を要求される行為である。

 上のデータは9巡目というデータ(データの巡目の詳細は17ページを参照のこと)であるが、この場合のベタオリ時にツモられる場合は4割近くになる。
 ちなみに、その場合に支払う失点はー3600点、ほぼ満貫である。

 他方、横移動になる確率は約4分の1程度であり、無失点で済む確率はそれほど高くはない。

 自分が親である場合、ベタオリ時被ツモの影響は小さくない。
 この事情が思ったよりもベタオリを不利にしていることが分かる

3、親のメンピン聴牌は相当の破壊力がある

 それから、親の追いかけメンピンリーチの和了素点は5900(上の和了時収入期待値から先行リーチ者の供託リーチ棒1000点を引いた数値)であり、これは子の非一発リーチ時和了素点5300点を上回る
 つまり、親のメンピンリーチは一定の破壊力があるのである。
 これが、押しを有利にしている事情である。

 もっとも、それでも局収支はトントンである。
 しかも、手牌はリャンメンリャンメンのイーシャンテン。
 そう考えれば、イーシャンテンから反撃することの難しさが表れているわけだが。

4 このデータはゼンツを想定していない

 最後に、今回予測した数値に由来するアガリ率・放銃率など確率関係のデータは「非先制・リャンメンリャンメンイーシャンテンの牌譜」を片っ端から調べたものである。
 とすれば、その後もゼンツしているとは考え難い

 例えば、1pを切り飛ばした3巡後に無筋の5pを持ってきたとする。
 とすれば、この場合は9sを切って撤収した方が得だろう。
 このデータはこの事情が加味されている

 中途半端押しを考慮することで、押し側の事情は現実的かつ妥当なものになっている。
 この点も、数値を見る点で注意してほしい点である。


 以上、理由を3点あげたが、前二者の事情が強く効いているように思う。
 つまり、

ベタオリした場合の失点率がそれなりに高い
親のメンピンの打点は子の非一発リーチ時和了素点を上回る

 以上の事情が組み合わさって、「押しても降りてもトントン」という結果を導いているものと思われる。


 ところで、「押しても降りてもトントン」ということは必ずしも「プッシュせよ」ということを意味するわけではない
 状況として振ったらまずい状況なら降りればいいわけだし、逆に和了しなければならない状況であれば押せばいいわけである。

5 別の研究から見た場合の結論

 ところで、今回の結果、他の研究はないのだろうか?
 そう思って探したところ、約5年半前の著書『神速の麻雀 堀内システム51』に旧・旧nisiシミュレータのデータがあったので紹介する
 具体的なページは154ページ。
 そこの押し引き表には次のような結果が書かれている。

中巡・対子リーチ・親・初手無筋2378押し
 自分の打点がのみ手・リャンメンリャンメンイーシャンテンの場合
 → どっちでもいい。押しの期待値とオリの期待値が同程度
 自分の打点が2ハン・リャンメンリャンメンイーシャンテンの場合
 → どっちでもいい。押しの期待値がオリの期待値を概ね上回っている

 こちらにはリーチのみとリーチドラ1の2つのデータしかなく、メンピンのデータはない。
 しかし、打点を比較すれば、上の中間にあることが分かる。
 とすれば、旧旧nisiシミュレータの結論としては、(局収支的には)

どっちでもよいが、どちらかと言えば押し

になる。
 この結論は上の結論と概ね似た結論になる。
(旧・旧nisiシミュレータの結論が押し寄りになっているのはベタオリ失敗が考慮されているからと思われる、だが細かいことなのでここでは割愛する)。


 以上、私の書籍に関してちょっと補足してみた。
 数値を見る上での参考にしていただければ幸いである。

 では、今回はこの辺で。

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