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局収支シミュレータを理解するための下準備 2

 前回、具体的な状況でどうやって和了率を求めるのかについて調べた。
 具体的には、

1、状況に対応したモデルを作る
2、局の終わった原因とそのタイミングを逐一調べる
3、2で調べた結果の確率を全部調べる
4、和了した場合の確率の和、放銃した場合の確率の和、、、などを足し合わせる


 これが、計算を求める方法である。
 今日はモデルを現実に近づけることで、より詳細にイメージしてもらいたいと思う。


 なお、今日からテクニカルタームを2つ使う。
 見慣れない言葉だが文字数を少なくするために必要なのでご容赦願いたい。

 まずは、「ランダム牌和了率」という概念。
 ランダム牌和了率とは、「山から1枚牌を引いたときに、その牌が当たり牌だった確率」である。

 天鳳の牌譜解析結果に従うと、リャンメン立直なら約7%、数牌愚形待ち立直なら約4%、立直全体で考えた場合は約6%となる。
 両者、2/34や1/34にはならない。
 これが、プレーヤーの指向のせいか、見えない牌はやはり山にあるのか、は分からない。

 次に、「ランダム牌放出係数」という概念。
「ランダム牌放出係数」とは「そのプレーヤーが山から牌を1枚切った場合に、手持ちのアンパイに切り替えないで牌を切る確率」である。
 例えば、立直しているとする。
 この場合、自分はゼンツするため、プレーヤーが他家3家(全員)に対してアンパイにきりかえない確率は100%であり、係数は1.0となる。
 また、アンパイを抱えまくっていて、ベタオリしている場合、プレーヤーがアンパイに切り替えないで切る確率は0%であり、係数は0になる。
 さらに、他家の状況が不明であれば、この値は和了時ツモ割合という牌譜解析結果から推測するしかない。
 また、その場合は0~1の数値を取る。
 このように、この係数は、聴牌に対してどの程度押してくるかを評価するパラメータである。
 また、このパラメータはAのBに対する、という形を採るので、12種類ある。


 さて、以上のパラメータを紹介したところで、今日は現実的なモデルに近づけて、数値を求めてみよう。
 具体例として3つ用意する。
 回答はすぐ見ていいとは思うが、自ら研究をしようと思っている人は、なぜそういうモデルになるのか少し想像してほしい。


 具体例1
 適切なモデルを設定し、対1家追いかけリャンメン立直の和了率・放銃率・被ツモ率・横移動率・流局率などを見積もれ。
 ただし、巡目は11巡目、初手に立直者に切る牌はアンパイ(振る可能性0)とする。

 前回はモデルがあるために、和了率だけ出せばよかった。
 しかし、現実にはモデルがすでにあることは少ない。
 とすれば、現実の状況を考慮して、モデルを作らなければならない。
 そのうえで、そのモデルを組み立てた時の各々の結果とそれが生じる確率を求める必要がある。

 対1家立直ということは

 自分、聴牌、ゼンツ
 先行立直者、聴牌、ゼンツ
 残り2家、ほぼノーテン、ほぼベタオリ 

という状況になっていることは想像できる。
 そこで、これをモデルに転換する。
 具体的には次のとおりである。

問1のモデル
① 自分は南家とする(特定しないと計算できないため適当に設定)。
② 先行立直者は西家とする(①に同じ)。
③ 東家、北家はずっとノーテン、降りようとするが完全に降りきれずにたまにぼろを出す。
④ これまで誰も鳴いておらず、これからも鳴かない(自分が18巡目に牌を切って放銃しなければ局終了する(簡単化のためにこのように設定)
⑤ ダブロンはレアケースであるため考慮しない(簡単化のためこのように設定)

⑤ 自分が最初に切る牌の危険度は0%である。
⑥ 自分のランダム牌和了率は7%である。
⑦ 自分の先行立直者に対するランダム牌放出係数は1.0である(ゼンツ)

⑧ 先行立直者の先行立直者のランダム牌和了率は5.7%である(先行立直全体の牌譜解析結果を反映)
⑨ 先行立直者の自分に対するランダム牌放出係数は1.0である(ゼンツ) 

⑩ 東家・北家は一切聴牌・フーロしない
⑪ 東家・北家の立直者2家に対するランダム牌放出係数は0.2である(これはかなり適当)


 以上が求めるモデルとなる。
 似たようなものができたであろうか?


 ちなみに、このモデルを採用した場合に生じる結果とその結果が生じる確率、和了率、放銃率、被ツモ率は次のとおりである。

画像1

 このようにして、モデルによる計算を行った場合、

和了率49%
放銃率15%
被ツモ率19%
横移動率6%
流局率11%

という結果が得られた。
 このようにして現実の麻雀における数値を求めることが可能である。
 

 他にも具体例を2つ出そう。

具体例2

 自分は11巡目に2家立直を受けて、リャンシャンテンの上、アンパイが豊富にあるためベタオリするものとする。
 この状況を適切にモデル化し、被ツモ率・横移動率・流局率を見積もれ。

具体例2モデル概略
 自分はベタオリし、聴牌もフーロも聴牌もしない、アンパイが豊富にあるので放銃もしない
 下家、対面は立直しており、聴牌かつゼンツ
 上家は降りており、中途半端にベタオリ(危険牌が漏れ出る可能性があるため)

具体例2モデル
① 自分は南家とする
② 先行立直者は西家と北家とする
③ 東家はずっとノーテン、降りようとするが完全に降りきれずにたまにぼろを出す。
④ これまで誰も鳴いておらず、これからも鳴かない
⑤ ダブロンはレアケースであるため考慮しない

⑤ 自分の2家立直者に対するランダム牌放出係数は共に0である。
⑥ 自分は一切聴牌しない(ランダム牌和了率は0%)

⑧ 西家・北家の先行立直者のランダム牌和了率は5.7%である
⑨ 西家・北家の自分に対するランダム牌放出係数は1.0である

⑩ 東家は聴牌・フーロしない
⑪ 東家の立直者2家に対するランダム牌放出係数は0.2である

 
 以上のモデルを前提とした場合の計算結果は次のとおりである。

画像2

以上より、対2家立直時ベタオリの

被ツモ率は40%
横移動率は44%
流局率は16%


となった。


具体例3
 自分は11巡目に2家立直を受けて、リャンメン聴牌となった。立直をかけた場合の牌は2家立直者双方にとってアンパイである。
 この状況を適切にモデル化し、和了率・放銃率・被ツモ率・横移動率・流局率見積もれ。

具体例3モデル(モデルの概略は省略)
① 自分は南家とする
② 先行立直者は西家と北家とする
③ 東家はずっとノーテン、降りようとするが完全に降りきれずにたまにぼろを出す。
④ これまで誰も鳴いておらず、これからも鳴かない
⑤ ダブロンはレアケースであるため考慮しない

⑥ 自分が立直宣言時に切る牌の危険度は0%である。
⑦ 自分のランダム牌和了率は7.0%である。
⑧ 自分のランダム牌放出係数は1.0である。

⑨ 西家・北家の先行立直者のランダム牌和了率は5.7%である
⑩ 西家・北家の自分に対するランダム牌放出係数は1.0である

⑪ 東家は聴牌・フーロしない
⑫ 東家の立直者2家に対するランダム牌放出係数は0.2である

 以上のモデルによって計算された結果は次のとおりである。

画像3

 よって、11巡目・対2家追いかけリャンメン立直・初手双方アンパイの和了率などの計算結果は、

和了率 37%
放銃率 15%
被ツモ率 23%
横移動率 24%

となった。

 以上、計算のイメージの参考にしてほしい。
 それでは。

 

 

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