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第2回「僕の好きな漫画② -鈴木裕之編-」

前回の「僕の好きな漫画① -中村信彦編-」に続き、今回は「僕の好きな漫画② -鈴木裕之編-」をお送りします。

「僕の好きな漫画① -中村信彦編-」はこちらから↓

今回もお相手は、DJのMIGHTY MARS、イラストレーターの鈴木裕之、デザイナーでベーシストのヨシカワショウゴ、大工の中村信彦の4人です。
前回の「僕の好きな漫画① -中村信彦編-」では、遊人の「ANGEL」と、それにまつわる思春期のエロ事情をお送りしましたが、今回は、どんな漫画が登場するのか!?
第2回「僕の好きな漫画② -鈴木裕之編-」スタート!
(2019年4月収録)

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少年期の原体験 -「ガロ」からの洗礼-

MIGHTY : では次は、鈴木裕之さんの一冊をお願いします。

鈴木 : 僕なんですけどね。子供の時から、家に漫画がある環境やったというか。父親が漫画読む人やったから。

MIGHTY前回放送でも言ってたけども、中学の頃から既に「ガロ」に到達してたという。
早熟やね。

鈴木 : そう。家にわりと漫画があって。なんかさぁ、昭和の漫画のアンソロジーみたいなぶっとい文庫とかってあったのしってる?

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MIGHTY : 知らんわ。

鈴木 : オムニバスで昭和の漫画とかが入ってる。

MIGHTY : それは、どういう漫画が入ってるの?

鈴木 : 色々あって、その中の一冊で黄金時代の漫画のオムニバスみたいなんがあって。それこそつげ義春とか、永島慎二とか。

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MIGHTYアングラ系が載ってるって感じ?

鈴木 : いうたら、当時(60年代)のフォークとかの感じの文脈で「ガロ」とか、手塚治虫がやってた「COM」の作家が一冊にまとまったような文庫が家にあって。その中に鈴木翁二っていう人が載ってた。
「ガロ」の。

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MIGHTY : あ、まずその「ガロ」っていうのを説明してもらっていいですか?

鈴木 : 「ガロ」は雑誌で、長井勝一っていう編集長がいて、その人が白土三平っていう漫画家の「カムイ伝」を連載させるために作ってん。

MIGHTY : へーそうなんや!

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鈴木 : ほんで、水木しげるとか、つげ義春とか、林静一とかそういう巨匠が描いてる感じ。

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鈴木 : で、学生運動が終わるくらい(70年代)に「カムイ伝」も終わって、そこで家の文庫のオムニバスにも入ってた鈴木翁二っていう漫画家も出てくる。
子供の頃僕が文庫で読んでたのは「マッチ1本の話」っていう話やねんけど、何故かそれを読んだ子供の頃の僕はものすごく感動して、ボロボロボロボロ泣いてね。

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一同 : へー!

MIGHTY : 今回紹介する漫画っていうのはこの「マッチ1本の話」?

鈴木 : うん。「マッチ1本の話」が小学校のときくらいに読んですごい印象に残ってる。
その作家(鈴木翁二)を認識するのは中学校くらいになってからやねんけど。なんか作風的には宮沢賢治とか、ああいう感じの世界観なんかな。

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MIGHTYファンタジーみたいな感じ?

鈴木 : うん。今読んでもそこまで感動できへんねんけど、小学校くらいの時に「ファミコン通信」っていう雑誌があって。アスキーから出てたやつ。

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一同 : うんうん。読んでた。

鈴木 : あれで桜玉吉っていう漫画家が「しあわせのかたち」って漫画を描いてて、最初はゲーム系の漫画を描いててんけど、だんだん日記風になっていくんやんか。

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鈴木 : その中につげ義春オマージュみたいな流れになっていくんやけど、それで「つげ義春ってなんやったけ?なんか知ってるぞ!読んだ事あるぞ」みたいな。

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鈴木 : で、その小さい時に読んだ文庫本の中に多分「ねじ式」とかが入ってんねんな。ほんであれや!ってなって。

一同 : へー。

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ショウゴ : ようわかってない時に読んでる感じやね。

鈴木 : そう。インプットしてる感じ。で、昔から漫画がめちゃくちゃ好きやって、小6の時でもうヤンマガ(週刊ヤングマガジン)とかも買っててんやん。

MIGHTY : 早いな!

鈴木 :「 ゴリラーマン」とかも読んでて、めっちゃ面白かったし。

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鈴木 : ほんまに漫画好きのオタク小学生やってんけど、行き着く所まで行き着いて、なんかおもんないなぁみたいな感じになってて。
で、実家が大阪芸大に近いエリアやったから、そこの本屋に「ガロ」が置いてあった。
で、小学生の時にたまたま「ガロ」を立ち読みした事があるねんけど、その時は根本敬の「タケオの世界」やったかな?そういうのを読んでもうて「この雑誌は絶対読んだらあかん領域や!」と思ってたから(笑)。

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一同 : 笑

鈴木 : そこだけは触れへんかってんけど。

MIGHTYトラウマやもんな。小学校の時に読んだら。

ショウゴ : そりゃ怖いね(笑)。

中村 : 怖いん?

ショウゴ : 怖い。というか汚い。

MIGHTY : 表現が違うから。

鈴木 : もう別ベクトル。

中村 : あ~、そうかそうか。普段見てる様なもんとは全然違う。

鈴木 : けど、好奇心から漫画雑誌を全部読みあさって最終「ガロ」にまたいってみたら、ドはまりしてん。

ショウゴ : 笑

鈴木 : で、また鈴木翁二に行き着いて。

ショウゴ : あ、そこで確認するんや。

鈴木 : うん、子供の頃ボロボロ泣いてた漫画が「これやったんや!」ってちゃんと認識して、単行本買ったり。

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MIGHTY : この「マッチ1本の話」はどういう話なんすか?

鈴木 : これは、少年が家出をする話やねん。
遅くまで起きてて、夜の未知な世界みたいな。

一同 : はいはい。

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鈴木 : なんか自分らが寝てる間の夜に色んな事が起こってるんちゃうかな?みたいな好奇心とか、そういうのを刺激する感じやったな。

ショウゴ : 絵見たらそんな感じやね。

鈴木 : だからすごい繊細な感じやね。さっきの遊人とかとはまた全然違う(笑)


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一同 : 爆笑

中村アッパーやもんな(笑)。

MIGHTY : 遊人はハイやな。

中村 : これは読んだらしっとりする感じかな?

MIGHTYダウナー系?

鈴木 : ダウナーっていうんかな?宮沢賢治とかダウナー系?

MIGHTY : どうなんやろね。ちょっと不思議な世界やな。

中村 : うん。ファンタジーやけど。。

MIGHTY : けどちょっと日本の情念系の感じはある。

ショウゴ : そやね。

MIGHTY : これが「透明通信」という単行本にのってるんすね。

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鈴木 : うん。「ガロ」の青林堂から。
青林堂つったら今イメージがネトウヨの出版社になってるけど。

MIGHTY : え!そうなんや!

鈴木 : 今そうやねん。ガラっとかわって。

中村 : 「ガロ」っと変わって(笑)。

MIGHTY : へー!編集長が変わったん?

鈴木 : 長井勝一が亡くなってから、なんやかんやあって今はなんかこんなんじゃない。ヘイト本ばっかり出してる。


アウトサイドの扉 -「ガロ」からの影響-

中村 : 見た感じやっぱりこう全編切ないよね。

鈴木 : そうそう(笑)切ない。

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ショウゴ : 黒が多い。

鈴木 : 夜な感じ。

中村 : これがやっぱり今の鈴ちゃんのスタイルに影響してるん?

鈴木 : いや、あんまり影響っていうのは。

MIGHTY : うん。思うねんけど、前の「90年代の音楽」でも鈴ちゃんは、最初POP GROUPを中学校の時に聞いてたっていう話をしてたり。
みんなそれぞれマニアックなモノも聴いたりしてたけど、同時に「ドラゴンボール」とか、そういうのも読んでるねん。

ショウゴ 、中村 : 読んでる読んでる。

鈴木 : あったもんね。

MIGHTY : だから同じ様な感じで、JUDY AND MARYも聞いてるけど、ハードコア・パンクも聞いてんねん。

鈴木 : だから鈴木翁二を読んでた時もクローズも読んでた。

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MIGHTY : そやんね!そういう事やねんな。

ショウゴ : そやんな。なんか気になるみたいな。

MIGHTY : 成人向けの、同世代のわかる人に向けた本とか音楽がたくさん当時はあるねんけど、その時は、俺らも中学生とかやから全部ごった煮にされてる訳よ。同じフィールドで聞いたり、モノを読んだりしてるっていう。
そこは今にもみんな反映されてる感じはあるかなぁ。

鈴木 : 雑食な感じやな。

一同 : うんうん。

ショウゴ :みんな雑食やもんな。

中村 : 何でも好きやもんなぁ。ほんまに何でも好きや、音楽でも何でも。

鈴木 : けどみんなそういう所(ガロ側)にいかんかっただけの話やね。
みんなあんま「ガロ」とかって通ってない?

中村 : 通ってない。

ショウゴ : 僕も通ってない。

MIGHTY : あんま読んだらあかん雑誌って感じやったなぁ(笑)。

中村 : あの、ねこぢる

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MIGHTY : あー!あんまり好きじゃなかった(笑)。

中村 : あれもすごい怖くて、絵はポップやねんけど(笑)。

MIGHTY : なんかものすごい毒を感じたよな笑

鈴木 : ねこぢるも亡くなっちゃたね。旦那が山野一っていう漫画家で。山野一とか読んだりしてた?

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MIGHTY : 全然知らん。

鈴木 : 今読んだら、なんでこんなひどい話を無理して読まなあかんのかっていう(笑)。

ショウゴ : 笑

鈴木 : 所謂バッドテイストの漫画。

中村 : あー、グロい?暗ーくなる感じ?

ショウゴ : 救いようのない。

MIGHTY : 絶望的な感じ?

鈴木 : けど、コメディみたいな。

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中村 :そういうのを読みたい時もあるけどな。

MIGHTY : まぁ、年齢的にな。

鈴木 : そういうのでいうと根本敬とか。

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MIGHTY : 根本敬も結構好みが別れるよね。

ショウゴ : 僕、昔はめっちゃくちゃ嫌いやったけどすごい好きになった。

鈴木 : いや、真っ当に生きてたらああいう世界って多分受け付けへんような気がする(笑)。けどなんか惹かれる。

ショウゴ : そやね。

鈴木 : 根本敬の漫画より文章がめっちゃ面白くて、「因果鉄道の旅」とか。

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ショウゴ : うん、面白いね。文章が面白い。そっから入ったら絵も普通やんね。なんかわからんけど。

MIGHTYエクストリームやね。

鈴木 : エクストリームやなぁ。後にも先にもフォロワーもいないし。

ショウゴ : いない。ああいう感じの。

MIGHTY : テレビとかでもさ、ぎりぎりのラインあるやん?ホームレスやったりちょっと差別的なライン。そこをすごい拡張して問いただしてくる感じはあるな。みんながわかる所やねんそこは。なんかみんなが持ってる所をさらけ出してくるというか。

鈴木 : だから未だに「ガロ」とかを早くに読んだから全然話し合う人がずっとおらんかったっていう感じやなぁ。

中村 : そんな中学の時に「ガロ」とか読んでさ、共感できる人がおらへんかったら、自分大丈夫なんかな?とかなれへん?寂しいとか。

MIGHTY : いや、その当時は、優越感もあるよ。

ショウゴ中村 : あー!そういう事ね。

MIGHTY : 洋楽とかを聞き漁る事も同じなんよ。

中村エアロスミスな(笑)。

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MIGHTY : そんなん、クラスで聞いてる奴とかもおらへんねんけど。そこで高校行った時に、一人二人と出会ってくるねんな。

ショウゴ : 出会ってくる、出会ってくる。

MIGHTY : で、興奮してくるねん(笑)。

中村 : ほんでめちゃ仲良くなんねんや。

MIGHTY : で、そういう奴ばっかりの環境に行きたくなって、こういうコミュニティが出来る。仲間が出会ってくるんちゃうかな。

鈴木 : 僕も、ヤンキーとかと遊びながら「ちょっと待って」って言うて本屋行って「ガロ」を買って(笑)。

一同 : 笑

中村 : 「何買うてきてーん!」って言われて(笑)。

鈴木 : 「女のはだか載ってるやん」とか言われて。

一同 : 爆笑

鈴木 : 当時アラーキー(荒木経惟)の写真も連載であったから。

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MIGHTY : うんうん。「ガロ」は俺の中ではアート誌って感じやな。コミック誌というか。

ショウゴ : うん。そやんね。

鈴木 : 当時の90年代くらいの僕ら世代の「ガロ」って、文字情報と漫画が半々くらいで鈴木邦夫の連載とか、松沢 呉一とか、沼田元氣とか、なんかすごい文化の坩堝というか(笑)。

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MIGHTY : 尖りまくってる人らが。

鈴木 : すごい中学校の吸収しやすい時にそれ読んでたからビンビンにやられた。

MIGHTY : 俺も鈴ちゃんに最初に会った時に色々教えてもらったもんな。
沼田元氣やったり、根本も最初に読んだのは鈴ちゃんに貸してもらったん違うかな?そういうのを色々教えてもらった感じやな、鈴ちゃんには。

鈴木 : その辺が自分の文化とか何か知っていく上の最初の扉というか。


隠された鈴木父からの影響

MIGHTY : けど、やっぱり親父さんの影響はでかいんちゃう?最初に家に置いてあったっていう原体験はショックやと思うで。

鈴木 : うーん。たまたま買った一冊やと思うねんけど。うちの父親とか基本、藤子・F・不二雄とか。「ゴルゴ13」とか。。
「ゴルゴ13」と「AKIRA」は隠してあってんけど。

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MIGHTY : 「AKIRA」も買ってんねや!

一同 : 笑

中村 : やばいやん。若い!

MIGHTY : それ親父さんの感覚もあるで絶対。

鈴木 : 漫画がめっちゃ好きやってん。

中村 : そういう話はした事ないん?

鈴木 : ないねん。

中村 : それ絶対するべきやろ!

MIGHTY : 今してみ!面白いと思うで。

鈴木 : 「AKIRA」だけじゃなくて「ショート・ピース」とか初期作品もあって。

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ショウゴ : もしかしたら凄いのを知ってるかもしらん。

中村 : そやで。

鈴木 : (父親は)映画とかもめちゃくちゃ好きやって。「ゆきゆきて、神軍」とかもあってん。

一同 : 笑

MIGHTY : それ完全に確信犯やん(笑)。

ショウゴ : ちゃんと話した方がええな(笑)。

(次回へ続く。)


ー 次回「めっちゃエイリやーん」は、デザイナーヨシカワショウゴのルーツに迫るマイフェイバリットな1冊を紹介!「第2回 好きな漫画③-ヨシカワショウゴ編-」はこちらから!↓

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