検図者ガチャ。ハズレると出図はただのパワハラ現場、賽の河原と化した

私が機械設計者として働いていた、とある職場でのお話。
図面を描き上げて別工程に渡すタイミング、「出図」が苦痛でした。

検図者によって非常に建設的になるか、一方無意味な説教をくらって時間がすぎゆくのか。
どちらなのかは、運でした。

■ 出図、検図って何?

描いた図面を加工会社に提出して製作を依頼したり、別工程に渡すのを「出図」と呼んでいました。
外部に図面を発行する、というイメージです。

ただ図面を印刷する事を「出図」と呼ぶ場合もあるので、ひとまずこの記事内での定義とします。

出図の際は稟議書などの書類と同様、数人のハンコが必要です。

担当者 検図者 承認 認可 とかだったかな。

「検図」は、技術的に図面内容の妥当性をチェックする役割です。
検図が通過すると承認以降は、費用と用途をさらっと聞かれる程度でした。

で、まずこの検図のハンコを貰うのに、悲喜こもごもだったというわけです。

「不備を指摘されて逆切れしてただけじゃねw」と思われるかもしれません。いやいや違うんです。

■ ハズレの検図

数年先に入社した先輩が私の検図担当になると、憂鬱でした。

・  寸法線の太さ、位置を0.01mm単位でチェック

図面の線の太さは、JISで規定されている太さを自分でCADに登録して描いていました。社内ルールも特になかったので。
印刷しても何ら問題ないのですが、物言いが入ってしまうんですね。「0.18mmは太くみえる、0.16mmにしなさい」という類です。

「『神は細部に宿る』と言うだろう?」とかもっともらしく言ってましたが、忙しいともはやパワハラです。

修正して印刷してみせる。また物言いが入る、修正する……の繰り返し。
結局元の太さに戻ることもあり、河原で石つんでるような気分でした。

・  縮尺に謎のこだわり。小一時間言い合い

図面には縮尺があります。
たいていA3やA4の用紙に印刷しますから、それ以上にでかい部品は縮小して紙面に収めます。ここでも一悶着です。

たとえば1/2で描いた図面だと、「窮屈だから1/2.5にしなさい」と物言いが入ります。別にはみだしているわけでなし、もう気分のレベルです。

CADでも後から縮尺を変えるのは余計な手間と時間がかかりますから、納期や優先順位的にやるべきではないと私も反論し言い合いに。
そして気が付けば小一時間経過、残業確定です。
精神、肉体的に疲労して仕事が進まず、こんなくだらないことのために終電を何度も逃していました。

・  数時間の昔話

CADは甘え、本当の設計者はドラフターで描くべき、みたいなのを延々聞かされるのです。
あの、、検図オナシャスと口を挟むと機嫌を損ねて怒鳴られるので、辛抱強く聞き終えねばねりません。説教が始まったら残業確定です。書いててしんどくなってきた。

そう、ここまで色々修正に手間かけたり議論していますが、何一つ設計上のチェックがないんです。「この部品、大丈夫なのか?」と不安の中出図することになります(笑)

■ マトモな検図

片や、別の設計者の方の検図はとても建設的でした。
この方が検図担当だと、アタリの気分でした。

まともだと思った特徴をあげます。

甘くてぬるいから好きなわけではありません。
内容によっては図面がなかなか承認されないことだってあります。

例えばこんな感じ。

・どうやって作るの?
・どれくらい費用がかかるの?
・納期は?

加工部品と一口にいっても、いろいろな加工法があります。
材料は?板金?切削?成形?どこに発注するの?
……という具合です。

さすがにここを無策で出図には臨みませんが、話しているうちに問題点やさらに改善点がみつかることだってあります。

・どうやって使うの?
・どんな雰囲気中で、用途で、誰が使うもの?

・どうやって取り付ける?

目の前のペラペラの紙図面を通り越して、その先にある現物に焦点があっているのです。

考えていないと、返答に詰まります。
検図者が適切に問い詰めてくれるおかげで、設計時にしっかりと考慮できるようになりあいまいな部分がなくなりました。

図面の細かい見た目にはほぼ見向きはされません。
(その分、つまらない寸法漏れなどは自分で潰す必要がありましたが)

■ チェックリストという御札で封じ込めた

まともな検図者の方は役職持ちで忙しく、いつも検図が受けられるわけではありませんでした。
私は本気で参っていたので、こんな対策をしました。

・社内にかけあって出図チェックリストを作成
・線の太さも、JISをベースに社内の製図ルールを簡易に規定

私がいる間はこのリストすごく快適でした。
チェックポイントが明確になるし、細かい事を毎回考えずに済むし。

辞めるまでの間は、件の先輩はこれでなんとか封じ込めることができました。「みんなでルール決めたでしょッ!」的に枝葉末節攻撃を封じるのです。
言い出しっぺの私がいない今はもう形骸化してると思いますが(笑)
新人が苦労してないといいなあ……。

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