キーワード解説:嚥下と誤嚥性肺炎

嚥下とは、食物を認識して口に取り組むことに始まり、胃に至るまでの一連の過程のことです。ヒトの嚥下は、先行期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期の5期に分けて説明されています。

先行期:認知期ともいわれ、これから摂食する食物の性状を認知することにより、食べ方・唾液分泌・姿勢といった摂食に必要な準備を整える時期。

準備期:食物を口腔に取り込み、歯で咀嚼して飲み込みやすい大きさの塊(食塊)を形成する時期。

口腔期:嚥下第1期ともよばれる。随意運動(意識して止められる運動)であり、食塊を舌によって咽頭へ送り込む時期。

咽頭期:嚥下第2期ともよばれ、これ以降は不随意運動(意識して止められない運動)となる。 舌尖(舌の先端)が持ち上がり、食塊が咽頭に達すると嚥下反射が生じて、極めて短時間(約1秒)の間に一連の動きを行う。

食道期:嚥下第3期ともいう。食道壁の蠕動運動が誘発され、食塊が食道入口部から胃へと送り込まれる。輪状咽頭筋は収縮し、食塊が逆流しないように食道入口部が閉鎖される。舌骨、喉頭、喉頭蓋は安静時の状態に戻る。


VF(嚥下造影検査)やVE(嚥下内視鏡)で視覚的に診断をすることが可能です。嚥下造影検査は、レントゲンをあてながら、バリウムの入った模擬食品を実際に口から食べていただいて、口から食べる機能に異常がないか調べる検査です。被爆量は通常の胸部エックス線撮影と同じ程度といわれています。VEに比べると被爆はありますが、内視鏡の違和感がないのと、誤嚥を観察しやすく治療のために得られる情報が多いのが特徴です。


VEは、鼻から約3mmの内視鏡(カメラ)を挿入し検査を行います。口腔リハビリ外来の診療室だけではなく、持ち運びができるため病院のベッドの上でも検査ができます。使用する食品は、普段食べている食事を使うことができるので、ほうれんそうは残る感じがするけど、プリンは大丈夫など、普段よく食べている食物による違いを見ることができます。

ヒトの死因は、1位が悪性新生物、2位が心疾患、3位が肺炎となっています。肺炎による死は、80歳以上の高齢者の嚥下能力の低下に伴って発生することが多いことがわかっています。高齢者の場合、食事だけではなく自分の唾ですら肺にはいってしまうことがあります。誤嚥による肺炎をとくに、誤嚥性肺炎と言います。嚥下機能の低下による誤嚥性肺炎を防ぐには、口腔ケアや嚥下体操が有効であることがわかっています。

また、認知症患者のなかには、嚥下反射が低下していないにもかかわらず、誤嚥性肺炎を起こすことがわかってきました。認知症の場合、食べ方を忘れ、無理やり飲み込もうとするために誤嚥が発生するのです。

従来、誤嚥をした場合には痰吸引などの処置を行ってきました。また、誤嚥を繰り返す患者には、食物を直接胃に送る胃瘻が造設されていました。いったん胃瘻を造設すると、食事を口からとることをやめるケースがほとんどで、患者の QOL がみるみる低下していくことが問題になっています。

誤嚥をめぐっては、近年制度が大きく変わってきています。まず、胃瘻を造設するには、VF や VE といった画像診断が必須になるなど、その必要性が厳密に調べられることになりました。さらに、痰吸引と胃瘻は、介護士などが扱えるようになりました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?