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エヴァンゲリオンに学ぶ、ウルトラバズらせるために必要なこと

ウルトラバズとは、世間が認知している状態


ここでいうウルトラバズの定義とは、数千回、数万回リツイートされることだけではなく、文字通り世間の多くの人が知っている、認知している状態を指しています。

例えば港区女子の寿司屋での言動がX(旧ツイッタ―)で炎上して、数万リツイートされていました。多くのXユーザーはこの事件を知っていましたが、Xをやっていない人は事件のことを知りませんでした。つまり、寿司屋炎上事件はネット上ではバズっている範囲にとどまっており、世間が認知している=ウルトラバズっている状態ではありませんでした。

それでは、ウルトラバズ=世間が認知している状態に至るための条件とは何でしょうか。

ネット上のバズと、ウルトラバズ=世間の認知の深い溝


まず、ウルトラバズに至るまでのステップを解説します。ウルトラバズまでには次のステップを踏みます。

  1. Xなどの各種SNSでネタ元が投稿される

  2. 数千、数万の単位で拡散されてネット上にてバズる

------------深い溝-------------

3.テレビ局や雑誌社が動いて取材を行う
4.Yahoo!ニュースのトップに掲載され、ワイドショーで取り上げられる

まず始まりは、X(旧ツイッター)などでネタ元が投稿され、それが数千、数万という単位で拡散されます。そして、そのネタがテレビ局や雑誌社の目に留まり取材が行われ、最終的にはYahoo!ニュースのトップに載ったり、ワイドショーで取り上げられることで、一般の人々に広く知られるようになり、ウルトラバズっている状態にいたります。

しかし、このプロセスの中で、ネット上でのバズとマスメディアが関心を持つまでの間には深い溝があります。その溝を埋めるためには、ネタ自体が世間全体にとって重要であり、興味を引くものである必要があるのです。

社会問題にすらなったWELQ騒動


ここで、DeNAのWELQ騒動を例に上げます。WELQ騒動は、2016年に発生した一連の事件です。WELQは、日本の大手インターネット企業DeNAが運営していた健康・医療情報サイトで、サイトに掲載されていた記事に健康被害を引き起こしかねない不正確な情報発信の問題があることが発覚しました​。
最終的にはテレビでも連日取り上げられ、関連するキュレーションサイトは全て閉鎖、当時流行していたキュレーション・バイラルメディアを考え直すきっかけとなりました。

もともとキュレーションメディアについてはSNS上で小規模に炎上していましたが、マスメディアはこれを取り上げませんでした。なぜなら、当時の問題点は主に「画像やテキストの無断転載」に関するもので、その影響を受ける人たちはコンテンツプロバイダーやライター、イラストレーターなどに限定されていたからです。

しかし、WELQが配信していた健康被害を引き起こしかねない医療情報という問題は、世間全体にとって非常に重要な問題でした。このような社会全体に影響を与えるテーマは、マスメディアが動きやすいテーマなのです。
「健康被害」という世間一般に関連する問題に踏み込んでしまったため、一気にマスメディアが次々と報道し、社会問題へと発展したのです。

WELQの場合は世間にとって重要なテーマだったため、マスメディアが動きました。一方で世間にとって興味を惹くネタというのは、例えば動物になります。朝のワイドショーでは犬やネコが取り上げられるますが、これは世間全般の興味を惹けるネタだからです。

このようにウルトラバズの状態になるには、世間にとって重要なテーマであるか、世間全般の興味関心を惹けるかといういずれかの条件が必要です。

しかし、ごく個人的なテーマを扱っているのにも関わらず世間一般に普及するコンテンツがたくさん存在します。庵野秀明監督の「エヴァンゲリオン」シリーズもその一つですが、世間にとって重要なテーマを扱っているわけでもなく、内容も難解だといわれながらも多くの人の支持を集めました。最後の作品となった「シン・エヴァンゲリオン」は、動員数が650万人を超えて興行収益は100億円を突破しています。なぜこんなにも人気なのでしょうか。

「エヴァンゲリオン」が多くの人から支持される理由


エヴァンゲリオンは、表面上はロボットアニメですが、作品の中では主人公碇シンジの内面世界が描かれています。碇シンジを始めとするキャラクターは庵野秀明監督自身の体験や思考が投影されていると言われており、極めて個人的な作品であるともいえます。

本作は、多くの視聴者にとって、ただのエンターテイメントを超えた何かを提供しています。それは、人間の心理や自我というテーマを深く掘り下げた物語です。このように、視聴者自身の感情に直接訴えかけるコンテンツは、特に強力な共感を呼び起こします。

しかし、ここで重要なのは、本作がただの個人的な作品ではなく、そのテーマが普遍的な人間の問題に根ざしている点です。多くの人々が、自分自身の不安や孤独、人との関わり合いの中での葛藤を作品を通じて再認識し、考えるきっかけを得ています。つまり、個人的な体験や感情を、普遍的なテーマとして捉え直し、それを共感しやすい形で表現することが、多くの人の支持を得る=ウルトラバズを生み出す鍵となるわけです。

物語(ナラティブ)を通して普遍性を獲得する


その"共感しやすい形での表現”とは、物語(ナラティブ)を通して表現するということです。
一件個人的な作品でありながら多くの人が支持するのは「エヴァンゲリオン」という物語(ナラティブ)に共感しているからです。ごく個人的な体験や考えも、物語(ナラティブ)として描くことで観ている人は没入して追体験することができるのです。視聴者は物語(ナラティブ)に共感し、自分の体験として受け入れられるのです。

世間の関心を惹けるネタか、あるいは物語(ナラティブ)か


ウルトラバズを起こすために必要な条件についてお話ししてきましたが、まとめると、大きく二つのポイントがあります。一つ目は、そのネタやコンテンツが、社会全体、あるいは広い層の人々にとって重要かつ関心を持たれるものであること。二つ目は、個人的な体験や感情を普遍的なテーマとして捉え直し、強力な物語(ナラティブ)を通じて共感を呼び起こすことができるかどうか、です。
一つ目はただ単に世間から認知されている状態ですが、二つ目は体験をした人が強く物語に没入し、支持をする状態になります。

エヴァンゲリオンから学ぶことは、ただ人気作品を分析するだけではありません。それは、いかにして個人的なメッセージを、広く共感を呼び、そして多くの人々にとって意味のある形で伝えるか、という深い洞察です。このようなアプローチは、単にアニメーションに限らず、あらゆるクリエイティブな活動やメディアコンテンツの制作において、参考になるはずです。

最終的に物語(ナラティブ)は、そのコンテンツが人々の心に深く響き、長く記憶に残るような価値を提供するのです。


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