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True Detective Night Country 感想: ペース配分の乱れた刑事スリラー

トゥルーディテクティブ シーズン4 ナイトカントリーを観ました。
今回は5年ぶりの新シーズンであることや、ジョディ・フォスターが主演と制作指揮を務めたりと、配信前から話題を集めていました。
個人的には、配信前に高まった期待を超えてくることはありませんでした。


概要

舞台はクリスマスを間近に控えたアラスカ州の田舎町エニス。日が昇らない極夜の中、研究所から失踪した科学者をダンヴァース達が捜索に乗り出す部分から物語が始まります。

1エピソード60分程度、全6話で完結します。HBO作品のため見放題での配信はU-NEXTのみとなっています。

True Detectiveと言えば2014年に放送されたシーズン1が批評家やネットから非常に高い評価を受け、次のシーズンがリリースされるたびに「シーズン1を超えられない」という評価を受けてきました。自分も全シーズン観ましたが、あながち間違っていない総評だと思います(個人的にはシーズン2のやるせなさや終わり方も好みです)。

良かった点

舞台となるアラスカの描き方が特徴的でした。田舎の街並みや狭い人間関係、気候環境との共存、鉱山労働者と地元民の対立等、閉鎖的な空間を上手く表しており、物語上でも存在感を放っていました。

アラスカの伝統についても尊重を以て描かれています。原住民としての生き方は偏見無くありのままに表現され、シリーズ特有の超常現象にも繋がる役割を担っていました。

登場人物の演技も見事な場面が多かったです。それぞれの役の背景に合わせた葛藤や苛立ちがかなり現実的に表現されていました。特に息子刑事ピーター役のフィン・ベネットは家庭・仕事間での板挟みと若者としての立ち居振る舞いが素晴らしかったです。彼にとっての出世作になりそうな予感もします。

気になった点

タイトルにも書いた通りストーリーの進むペース配分に乱れがありました。1,2話までは導入や本編、次回への引き等が丁度良いペースで進んでいたのですが、3~5話は本筋と関係の薄い登場人物の掘り下げが多く、逆に最終回の6話は駆け足で進んでしまったように思います。
その最終話も伏線回収と言えば聞こえは良いですが、全て回収された訳でも無く、解釈が思い思いに取れる結末にも見えるため、消化不良感も残ります。

他シーズンは全て8話構成だっただけに、今シーズンも8話あればもう少し話のテンポや間に入るエピソードの進め方を丁寧に行えたように感じます。

キャラクターのエピソードも小出しにされて展開されていくのですが、それらの間で関連性が薄く、話がぶつ切りになってしまっている印象を受けました。人物の心情を扱う上で重要ではあるのですが、一部の話はありきたりで特徴の無い話に感じられました。

音楽の使い方もあまり好みではありませんでした。他シーズンと比べて有名なライセンス曲が多く使われている印象を受けましたが、極夜のアラスカに合った雰囲気の曲ではなく、少し場違いな感覚を持ちました。緊迫した様子を表すBGMがもう少し使われていても良かったように思います。
オープニングに至ってはビリー・アイリッシュのBury a Friendです。ただこれはストーリーと非常にマッチしていました。

最後に

「True Detective」という看板はやはり偉大なもので、どうしてもシーズン1の名声を超えられない印象を受けます。
しかしその看板によって、猟奇的事件を扱う刑事モノのドラマシリーズとして唯一無二の魅力を生み出すことも事実です。

個人的な好みからは少し外れましたが、シリーズが求められているものは提供できているように感じました。シーズン1から3まで観て満足した方は試しに観る価値は充分にあるように思います。

まだTrue Detectiveシリーズを観ていない方は、シーズン1から観ることをお勧めします。事前情報やネタバレも無しで、カーテンを閉めて部屋の電気も消して、出来ればスマホも遠くに置いて。

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