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なぜAlzheimer型認知症は女性に多いの?

Alzheimer型認知症女性に好発する理由は主に2つあります。

1)リスク因子であるAPOEε4保因者では男性が短命となるため。
2)閉経後エストロゲンの減少による認知機能の低下。

1)リスク因子であるAPOEε4保因者では男性が短命となるため。

Alzheimer病のリスク因子としてアポリポタンパクE(apolipoprotein E;APOE) 遺伝子のε4対立遺伝子が知られています¹。APOEはAlzheimer病の原因の1つであるアミロイドβを除去しますが、APOEε4では除去能力が低下することが明らかになっています。男性が保因者だと短命となり、女性が相対的に長生きのため²、Alzheimer病を発症している人口が女性に多くなるのです。

2)閉経後エストロゲンの減少による認知機能の低下。

エストロゲンという女性ホルモンは脳に色々な作用を及ぼし、認知機能や神経細胞の保護に広く関与していると考えられています。閉経直前の女性でも記憶力は同年代の男性より優れており、閉経後に女性ホルモンが急激に減ることが記憶力の低下、認知症の発症につながっている可能性があります。
ただし、エストロゲン製剤の投与ではAlzheimer病の発症を抑制する症例もある一方で、改善しなかったという報告もあり未だ研究が必要な議題です⁴。

ちなみにシヌクレイノパチ―であるParkinson病は欧米では男性に好発しますが、本邦では女性に好発します。欧米で男性に好発することからParkinson病とエストロゲンの関連が研究されていましたが、そもそも本邦では女性に好発するため、関連はないという研究報告もあり、こちらも興味深いですね。


参考文献
1)認知症と性差 森本茂人, 奥野太寿生, 濱口毅, 小野太輔 金沢医科大学病院認知症センター 老年精神医学雑誌 34(10): 968-971, 2023.
2)http://www.med.nagoya-cu.ac.jp/1seika.dir/kenkyu.html
3)女性ホルモンはパーキンソン病発症の防御因子になるか? 「No」の立場から 西川典子 愛媛大学大学院医学系研究科薬物療法・神経内科学 准教授 Frontiers in Parkinson Disease 8(4): 191-198, 2015.
4)治療 2) HRTのリスクとベネフィット (2) ベネフィットについて 小川真里子, 高松潔 東京歯科大学市川総合病院産婦人科 診断と治療 102(8): 1195-1201, 2014.


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