見出し画像

【群ドローン(ドローンスウォーム)】とは何か?

ドローンデリバリーで医療サプライチェーンに変革をもたらし、インフラ点検や警備、スマート農業やスマート測量など「Society 5.0」でゲームチェンジャーとなる「飛行ロボット」「空飛ぶIoTデバイス」として注目されるドローン(drone)。

そのドローンテクノロジーの中でも取り分け注目を集め、「未来の大量破壊兵器」とも言われて脅威となっているのが、世界各国が開発に注力する「群ドローン」(drone swarm)である。本稿では「群ドローン」とは何かを概観する。

「群ドローン」の定義

「群ドローン」とは「drone swarm(ドローンスウォーム)」の日本語訳で複数(多数)のドローンによる集団飛行、つまりドローンの群飛を指す一般名称である。「群ドローン」のことを中国語では「蜂群」と言う。(「蜂群」を「自爆ドローン」の意味だと誤解している向きも多いが、「蜂群」とは「群ドローン」のことであり、「群ドローン」は必ずしも「自爆ドローン」だけから構成される訳ではない。)

群ドローンは集団飛行であっても必ずしも編隊飛行とは限らない。人の集合体である「群衆」を構成する個々人はプログラムによって動いているわけではないが「群衆」全体としての方向性を有するように、自律型ドローンによる群ドローンにおいてプログラムによる編隊(フォーメーション)を組むことはないが目的に応じて総体としての群飛を形成する。

「プログラム」か「AI(人工知能)」か

群ドローンの定義でも少し触れたが、群ドローンには大きくふたつの方式が存在する。一方は「プログラムによる群ドローン」であり、他方はAI(人工知能)ベースの「自律飛行による群ドローン」である。

プログラムによる群ドローン

プログラムによる群ドローンで代表的なのは『【ドローンライトショー】とは何か?』で書いた民間利用の「ドローンライトショー」(drone light show)である。プログラムベースのドローンライトショーでは各ドローンはプログラムに沿ってシナリオ通りの集団飛行を行う。この場合の群飛はほとんどにおいて編隊飛行である。

自律飛行による群ドローン

画像1

自律型システム(autonomous system)ベースの自律型ドローン(autonomous drone)による群ドローンは、椋鳥(ムクドリ)の群飛のように総体としては集団を形成するが、個々のドローンは目的に則して自律飛行しており編隊を組んでいるわけではない。自律飛行による群ドローンは「群ドローン攻撃」(drone swarm attack)など主に軍事利用され、まさしくこれが「未来の大量破壊兵器」と目され、世界の脅威となっている。

群ドローンテクノロジー

低速度・低高度で侵入してくるドローンは現代の防空システムで捉えることが非常に難しい。かと言って、群ドローンを人間が認知して対応するには速過ぎるというジレンマを抱える。

従って、世界各国は群ドローン攻撃のためのアルゴリズム開発、防御のためのカウンタードローンシステム(C-UAS)あるいはアンチドローンシステム開発と攻守にわたる群ドローンテクノロジー(drone swarm technology)開発に注力している。

ドローンはもともと軍事技術であり、群ドローン技術の民間商用利用となる前述の「ドローンライトショー」先進国がアメリカ、ロシア、中国であることは偶然ではない。

自律型システムとAI

自律型ドローンはAIによって自律飛行しており、個々のドローンが電子戦におけるレーダー無効化、通信無効化、迎撃機能破壊、ミサイル誘導などの目的を持って総体として群ドローン攻撃を遂行するのが現段階でのスタンダードである。

しかし、AI搭載の対人戦闘用ドローン(市街戦用ドローン)も既に開発されている。AI搭載ドローンの顔認識機能は標準的だが、イスラエルの企業がドローンを用いた顔認証(照合・識別)技術の特許を保有するなど自律型ドローンによる対人識別戦闘能力は向上している。対人群ドローン攻撃によって無差別大量殺戮を行うことも、市街地で特定の人物を捜し出して攻撃することも容易となりつつある。これが「未来の大量破壊兵器」と言われる所以のひとつである。

国連の報告によると、既に2020年のリビアで世界初となる自律型対人戦闘用ドローンによる自発的な人間への攻撃が行われたという見方も存在する。

AIとアルゴリズム

また、AIのアルゴリズムにもバイアスが存在することが判明している。アルゴリズムのバイアスなどにより、AIベースの群ドローンが壊滅的な間違いを犯すのではないかと懸念する向きもある。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?