サイドミラー

死の気配はサイドミラーでは見えない位置に

毎日"死ぬ"ということを考えます。

といっても、死にたい、ということを思うのではなく、死にたくない、と強く思います。

このまま、終わりたくない、と。不治の病にかかっているわけでもないのに。

毎日です。

ここから、震災の話になります。

こう思うようになったのは、東日本大震災にあった日からです。

最初に言っておくと、私の近い家族が亡くなったり、津波に飲み込まれたりしたわけではないので、本当に辛い思いをされた方からすると甘すぎることは重々承知なのですが。

(という前置きをする弱さを許してください。)

私は地震の日、仙台にいて、のちに倒壊の危険ありで立ち入り禁止になった古い建物にいました。

警報がなって、初期微動にしては強い揺れがきて、あっという間にものすごい横揺れがきました。

私は華奢な折りたたみテーブルの下に入って、戸棚を押さえてくれている先生と先輩を見ながら(全部が揺れすぎててそれも本当はあまり意味がなかったんだけど)、早く終わって早く終わってと呪文みたいに口にしていました。

古い建物で、感じたこともない揺れ。崩れてしまうのではと本気で思いました。

2階だったから、飛び降りてしまおうとも思ったけれど、足を骨折したらどうしよう、ていうか戸棚を押さえてくれている2人を置いて逃げるなんてできない。というか揺れすぎていて動けない。

揺れに翻弄されながら、強烈に思いました。

死にたくない。死にたくない。私はまだ、何も成し遂げていない。

永遠に続くと思われた揺れが一旦おさまって、急いで外に出て、裏庭にみんなが集まりました。

その時はみんな一旦揺れがおさまった安堵と何か大変なことが起きている、との興奮だけがありました。停電、断水状態でしたし、やばいもうサバイバル開始だよ!お金なんか使えない世界になっちゃったよ!みたいに冗談を言う余裕すらありました。(もちろんこの時はまだこの地震で人が亡くなっているなんて誰も知らなかったのです)

余裕というか、現実が不安すぎて、認めたくないから逆にこんなことを言っていたのだと思います。

携帯もなかなか繋がらなくて、情報も手に入りにくい中、ああ、もしかしてもしかしたら本当にもう、私の日常は戻ってこないのかもしれない。

ちらつく雪の中で、どう処理したらいいかわからない不安が、どんどん膨らんで行きました。

この時思った”これが"今までの世界の終わり"の始まりなのかもしれない”という強烈な気付きが、今でも心の奥底でくすぶっています。
それまで、そんなことを考えたこともなかった。
世界は続く。日常は続く。想像力が欠けていたと、今なら思うけれど。

そして、夜になって聞いたのが、津波の情報。

この時点では、浜辺に数百人の方の遺体が打ち上げられた、という情報でした。

夏にはみんなで遊びに行っていた浜辺に。

衝撃すぎて、言葉が出なかった。


私の中で、世界は”それ以前”と”それから”に分かれてしまいました。

地震を直接体験した方は、よりリアルに、この感覚を強くもっていると思います。
世界はずっと続くわけではない。命もふとしたことで奪われてしまう。それに気づかされた日。

そして私は、明日死んでいいと思えない。だってまだ、何も、一つも、成し遂げていない。

この日から私は、絶望と焦燥感をかかえています。


そしてその焦燥からか、ひっそりとした死への不安がずっと拭えないのです。

真正面にいるわけではない。ひっそりと、斜め後ろあたりに張り付いている。

ちょうど、サイドミラーでは見えない、けれどピタッと後ろに気配だけがする。

そのような感覚がずっとついて回るのです。


結局3/11は丈夫そうな知人の家にお邪魔させてもらい、靴を履いたまま、余震に怯えながら一晩を過ごしたのち、次の日の夕方に先輩の車で仙台を抜け出すことができました。
(本当はこの時、2日目にして仙台を出たことすら、みんなが耐えている中で"自分は逃げた"という申し訳なさとなって、まだ心の底にわだかまっています。)

まとまりがなくなってしまいました。

できることなら経験したくなかったけれども、この絶望と焦燥感が、人生の原動力となっているのは確かなのです。

何かに妥協しそうな時、ぬるぬると日常を過ごそうとしてしまっている時。

いや、あの時強く思ったじゃないか。何も成し遂げていない、と。

そして強く思うのです。やっぱりまだまだ足りない。やりたいことが沢山ある。

死にたくない。

この感情を、自分を奮い立たせて、強く人生を生きようと思う火種としていきたい。

そうでなければ、意味がない。

そう、思って生きています。


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