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If you are…#15 Bubble(烏羽空)

画像:パブリックドメインQ様(https://publicdomainq.net/soap-bubbles-0017318/)

期末テストも明け、あとは通知表を待つだけとなった休日の昼下がり、私は空先輩と公園に来ていた。梅雨も明け夏空が広がりそこに木々のフレーム、それらに手を伸ばす先輩はとても愛らしい。

「満足ですか?」と私が聞くと「とっても!」と良いお返事が返ってきた。

「みんな心配性だから『公園行きたーい!』って言っても『我慢しなさーい!』って言われちゃって。だから…もしかしたら公園初めてかも。」

その言葉に嘘がないのはキョロキョロしている先輩を見れば一目瞭然だった。周りはほとんどが家族づれのようで、ボールで遊んでいる子もいればレジャーシートの上で静かにしている子もいる。

すると先輩はあるものを出した。色んなビビッドカラーの容器に緑のストロー状のもの、皿だったり持ち手のある輪っかまで入っている─そう、シャボン玉セットだ。

「これね、ずっとやってみたかったんだ。ほら、お家でやるとベトベトしちゃうし窓から飛ばすと何言われるかわかんないから。あと…単純に智子ちゃんとやりたかった。」

そういうと先輩は筒にシャボン液をつけた。彼が筒を吹くと洗剤液がシャボン玉となって空中に放たれる。最初こそ強く吹いていたから小ぶりなものばかりであったが一回ゆっくり吹いたらしく大きなものもできた。

それを横目に私は輪っかの方でそれらを楽しんだ。普通に振ればそれこそ大きい球が量産できるが、輪っかの中心を吹けば小さなものだってできる。その時に膜越しに見える先輩はシャボンの虹と小さなシャボン玉に包まれて余計綺麗だ。

空中で私が作った大きいシャボン玉と先輩の作った小さなシャボン玉が合体して手を繋いだかのようになった。そして二つ繋がったシャボン玉を見て先輩は言う。

「あれは君と僕ね。」

確かに言われたことは嬉しかったけど、私はそれだけじゃなかった。

「だとしたら、あまりに儚いですよね?」

「え?」

「シャボン玉のようにすぐに弾けて終わっちゃうような関係、私は嫌です。」

その繋がったシャボン玉は弾けてしまった。すると、先輩は私を抱きしめた。さっきのシャボン玉とはサイズ比がまるで逆だ。

「僕だって嫌だ。でも僕がシャボン玉みたいに弱くて…だから、ビー玉くらいに強くなってみせるから。」

さっきまで可愛いしかなかった先輩が急にかっこよくなるのは反則だと思う。どんな気持ちか分かりたくないのか分かられたくないのか、どっちだかは分からないけど私はつい「それじゃ強すぎて私が弾けちゃいそうです。」と照れ笑いをした。

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