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【めーたん試写会に行くの巻 #1】11月17日公開!映画「ア・ゴースト・ストーリー」おばけになったらどうなるの?美しくも切ない魂の旅について考える

死んだらおばけになるの?
その答えの正解は、誰にも分からない。

小さい頃は見えもしないおばけが見えてる気がしたし、学校の怪談シリーズが大好きだった。“ハナコさん”や”口裂け女”の話を何度もした。夏の心霊番組で、成仏できないと地縛霊になって出てくると聞いてよく怖がったりしていた。しかし、この作品はそういった怪談やホラーとは違う。

人間から見たおばけの話はよくあるが、この作品はおばけの視点から魂の旅を描いている。セリフはほとんどなく、1シーン、1シーンの描写や音響に注目してほしい作品だ。映画作品のInstagramアカウントの投稿とともにレビューを書いてみた。(ほぼネタバレなので注意して読んでほしい。)

レビュー

大切な人を失う。
当たり前が当たり前じゃなくなった時のリアルな描写

登場人物は、CとM。2人は夫婦だ。引っ越したいと思う妻Mと、渋る夫C。そんな中、夫Cが突然不慮の交通事故で亡くなってしまうのだった。
夫の遺体と向き合う妻M。病院のスタッフに何かを言いかけるが、どこかぎこちなく何も言わないシーンは、突然のできごとを、現実を、まだうまく理解しきれていないことが描かれてると思った。

静かに妻が病室を去った後、ついに夫がシーツのおばけと化すのだ。むくりと起き上がったのは、シーツのおばけ。よくラクガキで見るまんま。降臨というかなんというか、神々しいともコミカルとも言えないし、かといって恐ろしいわけでもない。不思議な感覚を覚えるシーン。なんだか少しあっけない気もした。
それよりももっと印象的で苦しかったのが、残された妻がパイをひたすら食べるシーンだった。妙にリアルな描写で、泣くわけでもなく、ただひたすらパイをこれでもかと口に運ぶ姿は、見ていて痛々しかった。

美しく彷徨うシーツのおばけ。徹底的に考えられた構図がたまらなく綺麗。

病院を出たおばけが向かう先は、そう、2人が住んでいた家だ。
草原や朝霧の中を進んでいくシーンは、まるで絵画のようでため息が出る。美しいの一言に尽きるし、私の一番のお気に入りのシーンだ。
一方、悲しみに暮れながらも少しずつ前に進み、引越しの準備を進める妻。そして、いつの間にか新しいパートナーもできているのだ。妻の新しいパートナーに対する、おばけとなった夫の嫉妬も描かれており、ポルターガイスト現象となって現れるシーンは、妙に納得させられた。「ああなるほど、おばけの感情ってこうなっているのか」と次第に、感情移入しておばけを見ることができるようになってくる。

妻が夫への思いに別れを告げ、2人の思い出の家を去った時は、どれほど悲しい気持ちだっただろうか。そんなふうに思いを巡らすと、切なさが込み上げてくる。
そして、次にこの家に引っ越してきたのはラテン系のにぎやかなシングルマザーの家族。平和に暮らす家族の姿にイライラしたのか、おばけのフラストレーションは限界を迎え、見る人もびっくりなこれぞまさにポルターガイストやないか!という現象を起こす。もう皿は飛びまくり音を立てて割れまくり、電気はついたり消えたりを繰り返し、泣き叫ぶ子どもたち。誰もケガをしなかったのが不思議なくらいだ。しかし、今思い返すと、それもまたこの夫らしいところなのかもしれない…。ただ、妻と幸せな家庭を築くことができたかもしれないのに、なんで自分はこんな目に合わないといけないのだろう?という現実への納得のいかなさ、悲しみ、怒り…。おばけのモヤモヤが爆発した瞬間にがあらわになったのは確かだった。

シーツのおばけが彷徨い続ける理由とは?残された思いに辿り着くまで

そしてある時おばけは、妻が引っ越す前に塗っていた柱の隙間に、妻が残したメッセージがあることを思い出す。どうしても妻が引っ越し前に残したメッセージを読みたい。それが、死んでも死に切れない夫の思いだった。妻が引っ越す前に塗っていた柱にそっと差し込んだメモ。それがなかなか取り出せない。
やがて、この家が取り壊される時が来る。しかし、そこでお化けが見たのは?未来?それとも過去?そして、再び彷徨い始める。果たして、妻が残したメッセージを手に入れることができるのか?手に入れたら果たしてどうなるのか?時系列があやふやで頭が追いつくのがやっとだった。

ちょっとおもしろいのが、向かいの家の窓際にもシーツ姿のおばけが佇むシーン。お互いに挨拶したり、会話を交えるが、ある日向かいの家のおばけは「もう来ないみたい」と何かを悟ったかのようにシーツだけを残して消えてしまうのだった…。

音楽・音響

はじめにも書いたように、セリフが本当に少なく、自然な物音や音楽をメインにストーリーが進む。セリフが少ない分、自分たちの頭がフル回転する。何を思ってるんだろう?と思考を巡らすことができる
それから、夫が作った曲の歌詞・曲調が切ない…。夫がいなくなった後、ひとりでその曲を妻が聞くシーンがあるが、さらに切ない気にさせる。セリフがないので、何を考えていのかは想像になるが「あの時あんなふうに振舞ったりしなかったほうがよかった…」など、過去に思いを巡らせているのではないかと考えてしまう。

映像・描写

こちらもすでに書いた通り、シーツのおばけが画面に映る角度や構図がすごく練られている。何度も言うが、1シーン1シーンがまるで絵のようだなと思う箇所がいくつもあった。
また、こちらも冒頭に書いたが、ひたすらパイを食べるシーンを見て、私は「千と千尋の神隠し」で千尋がおにぎりを食べるシーンを思い出した。今回の状況のほうがヘビーだと考えるが、負の感情を吐き出し解放されるというのは、食べるという行為と何か結びつくものがあるのかもしれない。

もし死んだら、私の魂もこんなふうに彷徨うのだろうか?おばけが本当に存在したらこんな気持ちなのかもしれない…。そんなことを考えながら、最後まで残されたメッセージの内容が気になり続ける。
あのシーンの意味はなに?と考えさせたり、おばけの気持ちは?と思いを巡らせて一緒に彷徨ったり…。観客に十分な余白を持たせる作品だった。しかし、これは好みが分かれそうだな。

映画公式WEBサイト「ア・ゴースト・ストーリー」
製作は、「ムーンライト」「レディ・バード」など、刺激的な作品を次々と打ち出し続ける気鋭映画製作スタジオA24。日本での公開は、11月17日(土)よりシネクイントほかにて全国ロードショー。

試写会について
今回は雑誌FRAUさんのTwitterキャンペーンでこの試写会に参加することができた。このような機会をいただけたことに感謝するとともに、これからも映画好きとしてこうした機会を逃すまいとチャンスをつかみに行きたいと思った。いつか憧れのジャパンプレミアやレッドカーペットにも行ってみたいと思う。

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