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【米国情勢】大統領選、最大の焦点はバイデン健康問題?

※見出し画像のクレジットはofficial White House Photo by Adam Schultz

映像を見て寒いものが走った、というのはちょっと大袈裟かもしれないが、認知症の肉親を持つ身として「あれれ、ひょっとして?」と思ったのは事実である。

演説の終わりに「God save the Queen, man」(女王陛下万歳)とやってしまったバイデン米大統領のことですね。共和制国家アメリカにおいて英国の国体を言祝ぐかのごとき発言、しかもエリザベス女王は昨年9月に既にお亡くなりになっているという…。バイデン氏は御年80歳。来年に大統領選を控え、主に共和党の保守強硬派界隈が「やっぱりバイデンはもうろくしておかしくなっている。大統領職が務まるわけない!」と小躍りしながら攻撃している。

例えば、「下院自由議員連盟」(ハウス・フリーダム・コーカス)の州政治レベルの連携組織「各州自由議員連盟ネットワーク」(ステート・フリーダム・コーカス・ネットワーク)広報部長グレッグ・プライス氏は、「認知症がひどく進んでいて自分が英国にいるもんだと思ってるんだろう」とコメント あるMAGA共和党員(Make America Great Again=米国を再び偉大にしよう=の略。トランプ前大統領のスローガンで、当然トランプ信者である)は「バイデンは死者の世界とつながっているのか?」と嘲笑した。

バイデン氏の健康を巡っては、これ以外にも▽広島サミットで厳島神社の階段でふらつく(5月19日、5:05あたり)▽空運士官学校の卒業式の壇上で転倒(6月1日)―と最近不安な場面が増えていた。今回の映像を見ると、ものすごい自然に「女王陛下万歳」とやっておられる。まったく人によるとは思うが、私の70代後半の肉親の場合、当初はこれに似た「おや?」というちょっとした兆候があって、その後一気に症状が進んだので、不安なわけ。

まずは、突然電話をかけてきて「今電話もらった?」と尋ねてきたり(当然こちらから電話してません)、最近済ませたばかりなのにすぐまた墓参り行こうと言い出したり、頻繁によろけたり、転ぶようになったり。

そこまではちょっとした違和感で済ませていたのだが、誰かと話しているかのように独り言を言っているのを聞いた時、「おや?」は「えええ?」に変わり、「明日から海外旅行のはずだけど、チケットがどうなってるか分からない」という電話を受けて「これは…」と確信に変わった。そんな予定などないのに、本人は大真面目に心配していたのである。

この後念入りに検査した結果「初期のアルツハイマー型認知症」と診断されたわけだが、最初の違和感から決定的な海外旅行の電話までおおよそ1年。バイデン氏の場合、まだ「ちょっとした違和感」の段階ではあるものの、進む時は一気にくる。

来年11月の大統領選まであと1年以上。ハイデン陣営によると、今年一杯は集会をやっても資金集めを目的としたもので、本格的な選挙活動は来年からとのことだが、果たして選挙戦を切り抜けられるのか、という疑念が頭をかすめる。

では、バイデン氏にバツ印が付いた場合、どうなるのか。民主党が抱えている最大の問題は、バイデン氏に代わる候補者がいないことだ。大統領選までに同氏に何かあった場合、「ランニングメート」であるハリス副大統領が候補者に「昇格」するんでしょうが、魅力なし、能力なし、と大変評判がよろしくない。

ブティジェッジ運輸長官、ミシガン州のウィットマー知事、カリフォルニア州のニューサム知事、クロブシャー上院議員らの名前もこれまで挙がってきたが、今さらハリス氏を押しのけるわけにもいかんでしょうし、出馬の動きも見られない。民主党の候補指名獲得レースで、故ケネディ大統領のおいでワクチン陰謀論者で知られるロバート・ケネディ・ジュニア氏がバイデン氏の62.0%に次ぐ15.6%と意外に高い支持を得ているのは(6月18日現在のreal clear politicsの全国世論調査平均)、高齢不安を抱えるバイデン氏以外の候補がいない現状に対する不満の現れかもしれない。

はたまたバイデン氏が大統領選までもって勝利したとしても、さらに4年間となると大変不安である。バイデン氏が2期目にいよいよあかん、ということになったら、憲法修正25条第4項の規定にのっとった手続きが取られ、ハリス氏が大統領代行に就任するんでしょう。すなわち、「副大統領および行政各部の長官の過半数が上院の臨時議長および下院議長に対し、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができないという文書による申し立てを送付する時には、副大統領は直ちに大統領代行として大統領職の権限と義務を遂行する」という規定である。

トランプ氏の連邦法違反の起訴でだいぶざわめいている米政治だが、バイデン氏の健康問題もこれに劣らない大きな焦点になってくる気がするなあ。

※随分更新しておりませんでした。3月半ば以降今に至るまで仕事が忙しく…。

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