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【備忘録】広島サミット雑感

もうはるか昔のことのようになってしまったが、5月19~21日に広島市で開かれた先進7カ国首脳会議(G7サミット)をのぞいてきたので、雑感をば。

広島に滞在したのは初めてだったんですが、いい街ですね。人口は120万人欠けるぐらい。繁華街といわれる流川町近くに宿泊したが、輩風の方々が酔っ払ってふらふら歩いている程度に活気がある。広島で働いたことのある同僚いわく、「プチ歌舞伎町」といった雰囲気。

最近のサミットでは、首脳が会合を開く会場とプレスセンターはかなり離れているのが常識。テロ・抗議デモ対策で、会場はそこに至るはるか手前から完全封鎖され、その外縁にプレスセンターが設けられるという次第。

日本の場合、岸田首相に密着して一挙手一投足を「監視」する総理番と言われる少数の記者が会場に入るが、大部分はプレセン詰めで、サミット会場を見ることはできない。外国プレスも、「首相番・大統領番」制度があるかどうかはともかく(少なくとも米国にはwhite house poolという日替り輪番制の「大統領番」制度があります)、似たようなもんでしょう。首脳にくっついて会場で取材する記者は1カ国当たり十人満たない程度、という感じか。

プレセンに押し込められた記者たちはどうするのかというと、朝早く行って共有スペースの作業場所を確保したり、PCとにらめっこでサミット事務局からメールで送られてくる声明を待っていたり、プレセン各所に設置されたモニターに流れるライブオフィシャル映像で数キロ先の各国首脳の姿を追ったり、プレセンで開かれる記者会見をカバーしたり、プレセン内外をうろうろしているピースボート共同代表兼核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)国際運営委員の川崎哲さんの怒りの声を聞いたりするわけですね。

共有スペースの机の上に常にあったのは、「じゃがりこ」とヨックモックのロール型クッキー「シガール」。広島はじゃがりこの販売元カルビーの創業地だそうで、その縁で「好きなだけどうぞ」という体でプレセン入り口脇にじゃがりごが山積みになっておりまして。恐らく企業側の宣伝を兼ねた無償提供で、皆さんの税金を食べたわけではなかったと思う。

シガールは、どういうわけか知らんけど無料軽食コーナーのスチール棚に箱単位で置かれていて、なくなるとすぐに補充されていた。ヨックモックの無限消費という子供の頃の夢がようやく実現しましたね(こちらの原資も税金だったのかどうかは不明)。

ちなみに川崎さん、本当に怒ってたなあ。内外問わずいろんなメディアのところを飛び回って、サミット首脳声明について「けしからん、欺瞞だ」的なことを言ってました。

さて、本業に関してですが、こぼれ話的なもので印象に残ったのは二点ほど。まず、欧州連合(EU)のミシェル大統領がプレセンで行った記者会見で、上海のテレビ局の記者が「日本の福島原発の汚染水放出計画についてどう思うか」と尋ねた場面。まさに唐突というやつで、ミシェルさんも面食らっただろうが、科学に基づいてやってくれりゃあそれで良い的なことをもごもごしゃべっておりました。

中国本土のメディアって、ほぼすべてが中国政府の非公式プロパガンダ機関だと捉えた方が良い。わざわざ広島まで出張ってきて、サミットに参加した日本以外の各首脳から中国政府が気に入るコメントを引き出そうとしているのがみえみえ。実はサミットに限らず、米欧ほか世界各国の首都で中国メディアは日常的に同じことをやってると考えるべきでしょう。

二つ目は、ゼレンスキーの広島入りの有無を巡る日本政府の報道対応。ゼレンスキー来日の可能性が最初に世間に知られたのは、共同通信が「形式はまだ分からないが(ゼレンスキーは)確実に参加する」とウクライナ大統領府副長官がインタビューで述べたと伝えた18日のことだったと思う。

翌19日昼ごろには、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)と米ブルームバーグ通信が「ゼレンスキーがサミットに対面で参加の予定」と報道。各社一斉にFTなどを引用する形で「ゼレンスキー来る」と伝えた。

ところが、19日夜にオンレコでブリーフした木原誠二官房副長官は事ここに至っても「ゼレンスキーは最終日21日にオンラインで参加し議論することになっている」と説明。みんな鼻白みましたとさ。

日本政府がここまで「堅かった」のはなぜか。安全上の理由とかまあいろいろあったんでしょうが、私個人は、ドタキャンされたらダメージが超でかいという計算があって最後まですっとぼけてたんじゃないかなあ、と疑ってます。一種の危機管理ですね。

結局、漢・ゼレンスキーは仏政府機に乗って広島に駆け付け、岸田首相もほくほくだったわけですが、その直後に長男翔太郎君の「公邸で一族忘年会、総理になったつもりで記念写真」事件が発覚し、サミットで上がった支持率が一瞬で溶けるというオチがついた。政界一寸先は闇ですな。

プレセンの食事事情とか、サミット自体の堅い話とか、まだもろもろありますが、時間もたってしまったことだし、この辺で簡単なご報告を終わります。

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