じょんきち

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黒光りする林檎を食べたい-タルトタタンレシピ-

プロローグ 2023年の暮れ、僕はタルトタタンの魔力に取りつかれていた。 タルトタタンというのはざっくり言うとトロっとしたリンゴがふんだんに載ったタルトだ。タルト部分にはパイ生地を使うことが多く、細かい違いはあるのだけど、ざっくりアップルパイみたいなものと思って貰って大丈夫だ。 僕が初めてタルトタタンの稲妻に打たれたのは、10年ほど前、京都・岡崎のラ ヴァチュールという店だ。 他の有名店と比べても苦みを前面に押し出していて、その奥で酸味と甘みが優しく広がる、そんなニュアンス

    • 男だけど育休を半年間取ることにしたのでレポするよ

      ◆書こうと思ったきっかけ 昨今、国が男性の育休取得率向上を目指しており制度の整備を進め、企業もそれに倣ってうんたらかんたら、、、 という背景があってとにかくどうやら今は昔より育休がとりやすくなったそうじゃない。 僕は幸か不幸か仲間内では結構早めに結婚し、そのまま周りより比較的早く第一子を授かりました。そんでもって現在育休をとってます。 唐突ですが僕は3人兄弟の長男、お兄ちゃんです。早い話が脹相です。 お兄ちゃんという生き物は生まれた時より先陣を切り、妹弟に背中を見られ続け

      • 細田は世界を描けないし、新海は他者を描けない

        僕は新海誠ラヴァーだ(ついでに細田守ラヴァーだ) 鬱屈とした中学生ライフを満喫していた冴えない伊藤少年は秒速5センチでガンハマりしたクチだ そういうわけですずめの戸締まりを観てきたのでよければ妄言にお付き合いください れっつごー ****************** 消化不良なところ①本作のテーマ 本作のテーマはなんだろうか 観る人によって解釈は様々あるだろうが妥当なところとして「喪失との対峙」ではないだろうか すずめは母の喪失を抱えており、因縁のある地震という災害の

        • 『美学への招待』への招待

          本投稿は佐々木健一著『美学への招待』の書評だったり解釈だったり備忘録だったり、とりあえず現状の頭の中の散らばった机をある程度片付け整理し、思い巡らす準備をはじめることを目的としている。むろん終わってから見返すと、むしろ書き出す前よりもより雑然と散らばっている可能性もあるが。 まずは美学とは何かというところから。 美学とはその名の通り美を考える学問なのだが、これだけだといまいちピンと来ない。僕の解釈では、「何に、どう美を見出すかという学問、」といえそうだ。 主要な観察対象は藝

        黒光りする林檎を食べたい-タルトタタンレシピ-

          桜の樹の下には情緒の屍が埋まってる

          ほら、見てみろよ 道路脇の桜の樹の下に、日本人の情緒が、大和の情感が、侘び寂びが、誰からも相手にされなくなってへそ曲げて、そのまま朽ちて腐って埋まってるぜ 今年もまたストーリーやTLが、たいして映えてない桜色に染まるんだろうぜ だがな桜よ、喜ぶんじゃねえぞ あれは大阪駅の飛び降り女子高生の画像がネットで拡散されてるのと同じなんだよ てめえの死を嘲笑ってネットの海に晒してるんだよ なあ、情緒ってやつよ てめえは死んだんだよ SNSがてめえのゴルゴダの丘だよ せいぜい樹に栄養をく

          桜の樹の下には情緒の屍が埋まってる

          「エモい」世代が羨ましい

          YouTubeで音楽を聴きながら、なんとなくコメント欄を見ていると、「エモい」という言葉まみれで辟易するけど、同時に少し羨ましいと思う 10年後の若者たちはエモいなんて古臭くて使わなくなるし、 Z世代はきっと歳を取っても、より若い世代にはダサいなんて思われながらも、「エモい」を使い続けてしまうんだろう でもそれは悪いことじゃない 「エモい」は今この時代に若者として過ごしたZ世代だけが共有できた固有の結びつきとなるだろう 「エモい」は今この時代に確かに存在してるし、それを一

          「エモい」世代が羨ましい

          竜とそばかすの姫はディズニーへのアンチテーゼである

          竜とそばかすの姫を映画館で観てきた 僕は結構細田守ラヴァーなのだが今作の総評としてはエンタメとしては満足、映画としては及第と思っている この中途半端なモヤモヤを除物させるべく、 映画のテーマ、構造、細田監督のウィークポイント等々観ていて感じたこと思ったことを乱れ書いていく ※ネタバレしまくります、1回しか観てないので理解の甘い部分、記憶違いたくさんしてそうです ①美女と野獣ー映画の主題ー あえて語るでもないことしれないがこの映画は美女と野獣をオマージュしている 主人公のアバ

          竜とそばかすの姫はディズニーへのアンチテーゼである

          2020年のベストミュージック10

          あけましておめでとうございます。 年は明けてしまったが、前のnoteに書いたように2020年は僕が今までで最も音楽を聴いた年になった。 その中で特に印象に残った10曲を選んだので紹介する。 魅力的な曲であることはもちろん、世相を反映した曲、またpopsは少ないが極力様々なジャンルから選ぶようにした。 なお、途中偉そうに講釈を垂れている箇所もあるが、音楽はずぶの素人なのでご容赦頂きたい。 選定基準は ・PVがYoutubeに2020年に公開されたこと ・オリジナル曲である

          2020年のベストミュージック10

          今年、僕の中で音楽が死んだ。-愛したものが色褪せるということ-

          年の瀬だ。 皆さんにとって今年はどんな1年だっただろうか。 世間的な話題はコロナ一色で、感染者がまた増えたという不幸なニュースの合間を埋めるように、著名人の死や台湾の安全維持法が施行されるなど痛ましいニュースが続いた。           ◇◇◇ 僕自身はといえば、逃げ続けてきた論文をどうにか書き上げ、就職し、東京に出てきた。 色々なことがあった。 しかし僕がこの先、2020年を思い返すとき、僕が愛した数々のアーティストのことも同時に思い出すだろう。 この2020という

          今年、僕の中で音楽が死んだ。-愛したものが色褪せるということ-