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春風のある一年前のこと

ちょうど一年前に見た夢のことを、珍しくはっきりと覚えている。

大抵夢というものは、目覚めてほにゃほにゃしてるうちに忘れてしまう。それなのに記憶の片隅に在り続けた夢。
当時転職したてで仕事に慣れない上に、事業的にも繁忙期だったので、何もかもこんがらがっていた。そんな夜明けに見た懐かしい夢。

それは、お母さんが小さい私を抱き寄せ、明るく包むようにして「あなたのことをすぐ分かってあげられなくてごめんねえ」と呟く夢だった。

薄明かりのしんとした部屋で目覚めたとき、私はすでに泣いていた。それは懐かしく守られているようなちょっぴり切ない映像だった。

そのあとの私は仕事に関して、職場の信頼できる人や昔からの友達に頼ることで、何とか乗り越えたのだった。

こんな風にして、ちょっとずつ自分の力で生きていくのだと実感した出来事は、まるで私を鼓舞する春霞のようだった。

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