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【声劇】会場は珈琲と硝煙の香り



登場人物
中津(なかつ)まさや(前半宮崎弁)
長居(ながい)ゆきひろ(前半ど陰キャどもりがち)
江坂(えさか)さや
淀屋橋(よどやばし)みつき
天王寺(てんのうじ)なお
我孫子(あびこ)京介
難波(なんば)あさひ



──婚活会場

あさひ  「はい、それでは向かい合ったペアでお話を始めてくださいね。」

さや  「初めまして、江坂さやです」

ゆきひろ  「初めまして、長居ゆきひろです」

2人  「…………」

あさひ  「2人とも!(2人えっ、とかはい?とか)
時間は限られてるんですよ、今のうちにしっかりお話してお互いを知ってくださいよ?」

ゆきひろ  「は、はぁ」

あさひ  「ほらほら、えっと長居さん、お仕事は?」

ゆきひろ  「こっ、公務員です」

あさひ  「江坂さんは?」

さや  「かっ、カフェの店長やってます」

ゆきひろ  「かっカフェですか、お店はどちらに?」

さや  「道玄坂です。」

ゆきひろ  「私職場が近いかもしれません。なんてお店ですか?

さや  カフェbeeっていう小さなカフェです、お近くにこられたらどうぞ」

あさひ  「いい感じですね、この調子で話しましょ」



まさや  「中津まさやです」

みつき  「淀屋橋みつきです。あの……ご出身はどちらですか?」

まさや  「宮崎です、すみません、訛り気になりますか?」

みつき  「いえ、あまり馴染みがなくて新鮮です」

まさや  「すみません、意識すると余計に抜けなくて」

みつき  「いえいえ、お気にならさず、宮崎弁、温かみがあって新鮮です」

まさや  「よかった。淀屋橋さんは訛りがないですね、ずっと東京ですか?」

みつき  「そうです、東京生まれ東京育ちのいわゆる江戸っ子です」

あさひ  「こちらはお話進んでますね、そろそろ席替えですよ、沢山お話して仲良くなってくださいね」


京介  「なんでなおが来てるんだよ?(小声)」

なお  「別にいいでしょ、京介こそなんでいるの?」

京介   「俺は…(小声で)誘われたんだよ」

なお  「え?私もよ(びっくりして大声)」

あさひ  「ちょっと2人!声が大きすぎですよ。しーっ」


──会場のざわめき

あさひ  「それではこれからティータイムです。ビュッフェ形式なので、皆さんご自由にご歓談ください。」

さや   「わぁ、チョコフォンデュ!」

まさや  「美味しそうですね」

さや  「チョコ好きなんですか?」

まさや  ええ、仕事の合間によく食べています」

さや  「ふふ、私もです。あ、お先にどうぞ。私はこれからフルーツ取ってきますから」

ゆきひろ  「チーズケーキ…うーん、こっちのシフォンケーキも捨て難い……」

なお  「迷ってるんですか?」

ゆきひろ  「ええ、1度迷うの決められなくて」

なお  「そんな時は、2~3個取っちゃいましょ、小さめなんで意外とペロッといけちゃいますよ」

ゆきひろ  「そ、そうですよね、何からいこう……」


京介  「うわ〜、ほんとスイーツばっかりじゃねーか……」

みつき  「あら、甘いもの苦手ですか?」

京介  「え、あぁ実は……ちょっと苦手で」

みつき  「それなら、あっちにコーヒー置いてあったから取りに行きます?私コーヒー少し詳しいんですよ」

京介  「そうなんですね、じゃ美味しいの教えてください」

みつき  「はい、私でよければ」



──喫煙所

京介  「…喫煙所思ったより遠かったな。えっとタバコタバコ(ポケットを探す)」


さや  「(タバコを吸う)ふぅ、甘いも食べるのも休憩しないとね、この後何食べようかなー。姉さんの仕込みが終わるまでだから早く食べないと……あ、ジェラートあったなぁ……  」


京介  「甘いものお好きなんですね(タバコに火をつける)」

さや  「(過剰に驚く)あっ、すみません、聞こえちゃいました?」

京介  「ええ(苦笑い)今はブレイクタイムですか?」

さや  「そうですね、せっかく来たんでたくさん食べておこうかなって職業病ですね。我孫子さんは甘いものはお好きですか?」

京介  「それが、全くダメで(苦笑い)」

さや  「あら、それじゃもうコーヒーしか飲めないみたいですね」

京介  「だからここで少し休憩です」

さや  「ふふ、じゃ私はお先に」

京介  「(大きく息を吐く)ふぅ、そういうとこか…もう一杯コーヒー飲むか」

喫煙所を出る


──婚活会場、あさひがお土産の段取り中
電話が鳴る

あさひ  「はい…はい、準備できてます。持ち帰ってもらうお土産の中にGPSを付けたプラスチック爆弾をセットしてます。…ええ、ここから半径20km離れたら自動的に爆発する仕組みです。これで夕方都内は恐怖に包まれます」

あさひ  「はい、参加者には何も明かしてないので大丈夫です、マスターまで辿り着かないですよ、御安心ください。」

「……全てはマスターのために」


なお  「お姉ちゃん、準備どう?」

あさひ  「準備出来てるよ、あとはこれを最後に持って帰ってもらうだけ(紙袋を見せる)」

なお  「それ爆弾入ってるんでしょ?バレない?」

あさひ  「(紙袋を開ける)ほら、スイーツ詰め合わせ以外のものが入ってるように見える?」

なお  「美味しそう、確かにバレそうにないね」


京介  「何がバレそうにないって?」

なお  「京介?」

あさひ  「我孫子さん?(少し動揺)いえ、なにかありました?」

京介  「それ配って帰宅中に爆発って、テロじゃねぇか」

なお  「京介には関係ないでしょ」

京介  「俺たちが持って帰るんだろ?関係大ありだよ。あんたら何者なんだ?」


さや  「(銃を構える)我孫子さん…動かないで、どこから話を聞いてたの?」

京介  「それあんたらに言う必要あるか?」

さや  「仕方ないわね、少し死ぬ時間が早まったわね(発砲音)」

京介  「(避ける)爆弾のあるとこで発砲って正気か?今参加者が戻ってきたらどうするんだよ」

さや  「その時はその時かしら?」


ゆきひろ  「そこまでだ、その銃下ろしてもらおうか?」

さや  「な…長居さん?あなた何者?」
ゆきひろ  「言ったろ?公務員だよ」

さや  「へぇ?公務員って人の頭に銃を押し付けるのがお仕事なんですか?」

ゆきひろ  「そういう江坂さんこそ、カフェの店長って銃をぶっぱなすのがお仕事なのかい?」

さや  「お互い仕事熱心なんですね」

京介  「ゆきさん、後ろ!避けて」

まさや  「ゆきっ」

ゆきひろ 「 …っ」
(まさや、なおの腕を後ろ手にひねる)

なお  「痛いっ、何すんのよ」

まさや  「ゆき、後ろガラ空きなんだよ」

ゆきひろ  「まさやが遅いんだよ、何やってたんだ?」

まさや  「ん?ちょっとね、爆弾のGPSプログラム切断してた」

ゆきひろ  「おせぇんだよ」


みつき  「はーい、おまたせ。応援呼んどいた…あら?皆さんお揃いね」

まさや  「みつきが1番遅いんだよ(不敵な笑み)」

みつき  「京ちゃんがタバコ吸ってる間に各方面連絡済みよ」

京介  「さすがみつき姉、できる女は違うねぇ」

みつき  「(パンパンと手を叩く)お喋りはここまで
難波あさひ、江坂さや、天王寺なお。テロ計画及び拳銃所持で現行犯逮捕します」

まさや、ゆきひろ、京介  「了解」


なお  「ちょ、離しなさいよ(手錠ガチャガチャする)」

京介  「お前がまさか組織の一員だったとはな」

なお  「知ってたの?」

京介  「まぁな、だから今日俺が来たんだ」

なお  「え?」

京介  「お前に手錠をかけるのは俺しかいねーだろ」

なお  「…ばか京介」


まさや  「あれ?手錠かけると大人しくなるんだな」

さや  「こうなって暴れても仕方ないでしょ?
あなた達このまま終わると思わないでよね」

まさや  「まぁ、そこはどうかな?」


あさひ  「ねぇ、1件だけ電話させてよ」

ゆきひろ  「だーめ、スマホも預からせてもらうよ」

あさひ  「くっ」

ゆきひろ  「君のマスターの話もあとでたっぷり聞こうか」


パトカーの音

まさや  「ふぅ、まさか潜入捜査で婚活とはなー」

ゆきひろ  「なかなかできない経験だったな」

まさや  「俺たちには縁遠い世界だしな」

京介  「2人とも相手には困ってないですからね」

まさや  「まぁな」

ゆきひろ  「そういえば京介の幼なじみは?」

京介  「…そうっすね、何でこんなことに…」

ゆきひろ  「お前には後味の悪い1日だったな」

京介  「そうですね、コーヒーも濃かったですし」

みつき  「はぁ?普段うっすいの飲んでるからでしょ?最高に美味しいの渡したのに」

京介  「コーヒーみたいにうっすい関係だったってことですね、あいつとは」

まさや  「さ、事情聴取済ませて俺達も署に戻るか」

ゆきひろ  「よし、いくか、相棒」

京介  「俺も行きます」

みつき  「京ちゃんは、私と爆弾処理班の手伝いよ。もう、何個準備してたのよあの人達は!」


それぞれの足音とパトカーの音
                                                               END






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