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みんなのための公園と、ドリルの穴理論。

きのう仕事で悔しいことがありました。
珍しいことではないのですが、それがまた悔しい!!

私はドイツで公園と遊具のデザイナーとして働いています。
先日の記事でも、この仕事を通して学んでいることや考えていることを書いたのですが、遊び場におけるインクルージョンは、ドイツでも大きな課題です。


嬉しいことに日本でもどんどんと増えてきている、「みんなのための公園」。
そう、「みんなのため」の、公園。

これが、売り文句として、マーケティングの手段として使われていることが少なくないのです。
公園のデザインや遊具の設計は、コンペ形式のことが多く、そういう場合は、他のいくつかの遊具メーカーや販売会社と天秤に書けられます。また、公園以外の他のプロジェクトとの予算争いも。

そんなときに、「インクルーシブ遊具」「インクルーシブ公園」という宣伝文句を使ってアピールするケースをよく耳にします。

公園の隅っこに車椅子でもアクセスできる泥んこ遊びのテーブルを設置する(他の遊びとのつながりがほぼない)だとか、大型遊具に車椅子でものぼれるスロープをくっつける(そしてスロープの先には車椅子では進めない)だとか、視覚障害がある子どもたちのために音を楽しめる遊びを公園の奥の方に設置する(視覚障害があるとそこまでのアクセスが難しい)だとか、公園全体の構造や動線もその遊具までのアクセスに関しても遊びの流れも考えずに、適当にちょっとインクルージョン加えておいて、というようなリクエストが多々あります。
「インクルーシブでお願い」なんてざっくりしすぎているものも。また、それが予算獲得のためであることも。

時間がないのも分かります。
予算が限られているのも分かります。
それにもちろん、「インクルージョン」について全く考えられていないよりは、いい。

でも、インクルーシブな公園は、みんなが遊んだり集ったりできる場所であるべきで、そしてなぜインクルーシブな公園が必要かというと、みんなが一緒に楽しめる社会に近づくためで、そんな、売り文句にするためのものじゃなーい!!


そう思っていたときに、この記事を読みました。

悔しさが少し落ち着いて、励まされました。

そう、本当に、そうなんです!

「レビットのドリルの穴理論」(ドリルを買おうとしている人は、本当に欲しいのはドリルではなくて、穴をあけるためにドリルを必要としている)のように、ドリルが必要なんじゃなくて、穴をあけたいんです。
私も、ドリルを売りたいんじゃなくて、穴をあけたいんです。

と言ってもここでマーケティングの話がしたいのでは全くなくて。
インクルーシブな公園や遊具を売りたいのではなくて、「みんなで一緒に楽しめる社会をつくる」ことをまず一番に頭において、「みんなのための公園」を作っていきたいのです。

「みんなのための公園」「みんなが一緒に楽しめる社会」にひとつの正解なんてないし、私も毎日試行錯誤です。でも、だからこそ、みんなで一緒に考えて少しずつでも近づいていきたい。

インクルージョンは頭の中から始まると思っています。
時間が限られていても、予算が限られていても、そのプロジェクトごとに、できることはきっとある。

よし、気持ちを持ち直して、がんばろう!!


ドイツの遊具メーカー「キンダーランド」がみんなのための公園への小さなヒントを提案する動画を出しているので、興味がある方はこちらもぜひご覧ください。


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