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海外のバイトで求められた意外な条件【ワーホリ】

4年前にワーキングホリデーでカナダのトロントに滞在しておりました。よくあるパターンで、日本食レストランでアルバイトをしていましたが、面接の際に求められた「あること」を思い出しましたので内容と背景をまとめていきたいと思います。

面接での最後の質問

「接客経験はありますか?」「土日入れますか?」という典型的な質問に答える中で、予想だにしていなかった質問がありました。
「ホームレスが入ってきたら、追い払える?」

実際に言われた表現としては、「大通り沿いで治安もあんまりよくない地域だから、たまにホームレスが入店してくる時があるんですね。私たちの仕事(飲食店のサーバー)として、食事中のお客さまの安全を守ることも含まれているので、そういう人が入ってきたら『No』とはっきり伝えて退店してもらう必要があるんです。一人のシフトの時でも、男性スタッフが店にいないときでも、怖がらずに『No』と主張する強さが求められるんですが、そこは大丈夫そうですか?」という感じでした。頑張りますと答えた気がします。


バイト先選びには

個人的にホームレスときくと"不衛生"や"物乞いをする"というイメージでしたが、常識が通じない危険な人もたくさんいます。全てのお店がそうというわけではありませんが、とくに治安の悪いエリアでは少なからず招かれざるお客さまの対応を行うリスクがあります。なるべく危険の少ない環境で働くためにも、

  • お店の周辺の治安が悪いかどうか

  • 閉店時間が遅すぎないか※(安全に帰れる環境かどうか)

  • ワンオペにならないか(危険時にお客さま以外に助けを求められる状況かどうか)

の3点は最低限確認することをお勧めします。1点目は正直どうすることもできないので確認したうえで自分の判断になりますが、2~3点目は従業員を守ろうとする職場なのかどうかがあらわれると思っています。実際、友人が働いていたお店は深夜2時までの営業でしたが、終業後は必ずオーナーさんが車で家まで送ってくれる待遇でした。

※トロント市内では、ナイトバス(終バス後~始発までの間運行しているバス)が走っていますが、利用者が少なく、怖い人と車内で2人きりなんてこともあるので、安全な帰宅手段とはいえません。バスが来る保証もありません。

また(ロケーションによりますが)、ファストフード店などでは、そもそもホームレスが入ってこようが注意しないこともありますし、彼らが常時滞在しているようなお店もあります。その場合、"追い払う仕事"はないかもしれませんが、やはりお勧めしません。

【実践編】vsホームレス or 変な人

面接での質問は決して冗談や脅しではなく、実際に頑張る場面が何回もありました。同僚が体験したものも含めて書いてみます。長いです。

対応マニュアル

マニュアルというほどではありませんが、そういう場面ではこうしてねという先輩からの教えがありました。

  • はっきり「No」と言うこと

  • お客さまの安全が第一!そして自分の身にも危険があるときは逃げること

  • 退出後はしばらく鍵をかけておくこと(また戻ってくる場合があるため)

①Change, please系

街中でよく見かける物乞いをしているホームレスですが、お店の中で行う積極タイプもいます。入店してきて「1名様ですか?」と聞くも返事がなく、不思議に思って私がそのお客さまの近くまで行くまでの間に、入り口に近いテーブルのお客さまに『Change, Please?』と話しかけているではありませんか。絡まれて困っている食事中のお客さま。すかさず、「やめてください。出て行ってください。」の連呼で対処しました。お客さまに被害がなかったか確認をし、前述のマニュアル通りまた戻ってこないように一時的に鍵を閉めました。(はじめは抵抗がありましたが必要な対応です。もちろんすぐに次のお客さまが来たら開けます。)

②対価要求系

①も要求系の一種ですが、少し違うタイプです。笑顔でお店に入ってくるので一見普通のお客さまかと思ったのですが、「1名様ですか?」の質問には答えず一方的にしゃべりだしました。内容はというと、『この店をもっとよくするために僕がアドバイスをあげましょう。なのでお金を払ってください。』というものでした。よく、観光地で『写真撮ってあげるよ!』と勝手に写真を撮ったかと思えばその後お金を要求してくるような、そんなパターンですね。お店の中でもあるようです。同じ内容を3回ぐらいしゃべっていましたが、アドバイスは必要ない旨お伝えしてお帰りいただきました。

③異様系

もしかしたら現在もあの場所をウロウロしているかもしれないですが、変わった有名ホームレスがいました。顔や体に絵の具か何かでペイントしてピエロの格好をしている人で(クオリティは高いとは言えずギョッとする見た目)時々店に入ってくることで有名でした。私が対処したのは一度だけでしたが、即座に気付いたので二重扉のうち1つ目のドアを開けた時点で「No」と告げることができました。その時はすぐ引き返してくれたのでよかったものの、過去には色々問題を起こしてくれたそうです。
ここから伝聞エピソードです。気付いたときにはすでに席にドカッと腰掛けており、(席に着いた以上我々もお客さまとして扱わなければいけないので)メニューをお持ちすると、一通り眺めた後『Rice』と一言。通常は、2ドル程度で注文できる単品メニューでしたが、「最低10ドル以上注文していただくルールがあるんです。」と告げました。実際そんなルールはないのですが、周りのお客さまを怖がらせてしまうこと、飲食店にふさわしい身なりではないこと、そして2ドル払える(払わない)可能性も低いことから、嘘をついてでも退店を促すことは対応マニュアルのうちの一つでした。差別的かもしれませんが、おいしいご飯を食べていただく場所に衛生観念を持ち合わせていないお客さまがいらっしゃる状況は避けたい事態です。見た目も怖いですが正直においが一番深刻で、食事中のお客さまは間違いなく不快ですし、新しいお客さまも入りにくいので、優先順位は明白です。申し訳なさはありません。なぜなら怖いからです。次の瞬間何をするかわからない雰囲気がある感じです。

④不思議系

なんとカテゴライズしようか迷いましたが、お客さまの中にはホームレスっぽさはないけれども変な人がいます。(決してかわいらしさはありません。)一見普通の服装、でも行動が明らかにおかしい・・・。
例のごとく「1名様ですか?」は無視してレジまで歩いてきたので、ただのぶっきらぼうなテイクアウト客かと身構えながらメニューをお持ちすると、奪い取って一番大きなテーブルに勝手に座りました。ああ変な人だ、と確信したもののメインメニュー1品とサイドメニュー1品を注文するとのこと。普通のお客さまだったわすみません、と思って「店内でお召し上がりですか?テイクアウトですか?」と質問するもガン無視して店内を徘徊し始めたので、やっぱり変な人!と考えを改め、キッチンへのオーダーは保留してもらい、テイクアウト前提で「先払いなので伝票お持ちしました」と金額を見せるとポケットというポケットをまさぐってお金を探し始めました。おそらく英語を話しているようでしたが、呂律が回っておらず(?)一切理解できません。その後5ドルだけペラっと出されたのですが、到底足りず「あと●ドル必要です」と伝えると諦めたのか、5ドルをポケットに突っ込み店内徘徊を再開。→⑤に続きます。ほかにお客さまがいなかったのが幸いです。
後日談ですが、数日後同じお客さまが『この店にヘッドホンを忘れた』『この店でヘッドホンを盗まれた』と探しに来ましたが、監視カメラの映像を確認しヘッドホンを首にかけて退店した様子がばっちり映っていた旨お伝えし、お帰りいただきました。従業員同士でこんな人が来たよ、こんな対応をしたよという情報を共有するのも大切です。

⑤トイレ占拠系

かなりの強敵です。実は、③異様系お客さまと④不思議系お客さまが両方実行しました。海外ではトイレを利用するのに鍵が必要なケースがありますが、無断で使用されるのを防ぐためです。私の働いていたお店では、お客さまが自由にトイレを使えるようになっていました。
③異様系お客さまは無断でトイレに入り、そのまま中で大麻を吸って出てこなくなったとのこと。(私はその場に居合わせませんでしたが、消臭が大変だったそうです。)
④不思議系お客さまも無断でトイレに入り、出てこないところまでは同じでしたが、様子を見に行くと鍵どころかドアが少し開いていました。「大丈夫ですか?」と声をかけるとドアを開け、何か言いました。(呂律が回っていなかったので何一つわかりませんでしたが。)私に何かを見せようとしている気がしたので、その場から離れて男性スタッフを呼んで、お客さまに声をかけてもらうようお願いしました。するとすぐにトイレから出てきて無言で店を出ていきました。男性スタッフが店にいるときで助かりましたが、女性スタッフだけのシフトもありえる状態だったので、別の日だったら大苦戦していたかもしれません。不思議系はトイレ占拠系でもあり変態系でもありました。

⑥強盗系・窃盗系

普通に怖いです。出勤の際には、いつもたくさんのお店が並ぶ大通りを歩いていたのですが、朝から割られたガラスを掃除しているお店を何回か見ました。私の働いていたお店も夜中にガラスが割られ、レジが盗まれたことがありました。治安の悪いエリアだったので、そういった犯罪は珍しくはありません。(想定済みなので、普段からレジには少額しか入れないようにしています。)夜中に押し入るタイプの強盗であれば、店には誰もいないわけなので物損以外の被害は出ません。質が悪いのが昼間に堂々とやってくるタイプです。
同僚が体験した話ですが、入店するやいなや奥までズカズカ進み、厨房の中にまで勝手に入り、(その時点でオーナーの知り合いか、業者か何かと思ったそうです。)レジの内側に置いていたお店のタブレット端末を奪って出ていこうとしました。同僚が止めようとするも、殴りかかるそぶりを見せられ、やむなく追いかけるのをやめたそうです。前述した対応マニュアルでも自分の身にも危険があるときは逃げることと書きましたが、これが一番重要なんだなと実感しました。スタッフにも食事中のお客さまにも被害がなくてよかったです。タブレットは痛かったですが命には換えられません。

結論:ワンオペは、時に怖い

サーバーの仕事はホールに関する全てですので、ホームレスをはじめ、招かれざるお客さまの対応はサーバーの仕事の一つです。実は、前述の⑤トイレ占拠系お客さまの対応で「男性スタッフを呼んだ」と書きましたが、その男性スタッフとはキッチンスタッフでした。ホールのスタッフは女性(というか私)しかおらず、トイレ占拠系もとい変態系の対処でしたのでやむを得ず助けを求めたのですが、管轄的にはホールスタッフで対処するのが理想でした。
サーバーとしてホールを守る責任がありますので、怖いからと言って、いざとなれば男性スタッフに助けてもらえばいいや、その場に優しそうなお客さまがいたら助けてくれないかな、という考えは個人的にはNGです。
何が言いたいかというと、ワンオペでホールを担当させられるするようなケチな少人数のお店で働くということは、時には危険な対応も1人で請け負う可能性が出てきます。(人手不足なら仕方ないと思いますが、私の職場の場合は人件費節約目的でのワンオペでした。30人キャパでテイクアウト対応もあるのに。)いい経験にはなりましたが、次に海外でバイトする機会があるなら、ワンオペがない職場がいいなと思います。これから海外でアルバイトを探す方の参考になれば幸いです。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

アメリカのスポーツリーグが好きすぎてワーキングホリデーで留学。(2019年秋に帰国) 英語を学び、スポーツ観戦に明け暮れ、そんな経験をシェアしていきます。 英語学習についてと野球観戦記を中心に更新しています。