窪塚洋介という男

しばらく鳴りをひそめていたタレントや俳優が一時急にバラエティやCMに出始まることがある。阿部寛とか米倉涼子とか。あと元ジャニーズの彼らも。

恐らく何かしらのタイアップだったり、マネージャーが休みの調整をしていたからなんだろうと思う。

さて窪塚洋介だ。今もInstagramで華やかに、映画出演で密やかに活躍している彼だけど、TVにはとんと出てこなくなって久しい。我々の世代で言えば永遠にキング、アイキャンフライ、そして卍LINE。そんな彼は今、Youtube無課金勢に競輪のCMでオダギリジョーと楽しそうにしている様子を見せてくれる。

金無いのよー、と負け犬ふうを装った彼がオジョギリダーに唆されて店内で「お姉さん!ノーリスク?(これにお姉さんはハイリターンと応えなくてはならない)」とかダル絡みをかます。焼肉屋ではオダジョリギーに教えてもらったうまい話に感情を抑えきれずに「すげぇえぇぇぇ」と叫んで諌められる。これだ。これでこそ俺たちの窪塚洋介である。

窪塚洋介しかりオダギリジョーしかり『我々のイメージしている彼/彼女であること』を求められる著名人は多い。キムタクや藤原竜也とか。その他のジャンルでは細野守もそれに近いかもしれない。彼ら自身の意図なのか制作側の意向なのかは一般人の我々には計り知れないが、とにかく彼らは『こうでなくっちゃ!』という期待に応えてくれる。

ところで私は明日から仕事である。実はここ2年近く無職だった。そのうち1年半は休職だったので実際無職だったのは半年弱だったのだけど、なんにせよ久しぶりに労働の義務を果たすことになる。

自慢じゃないが私は優秀な社会人だ。ただし最初だけ。理解は速いし真面目そうな外面をするのが得意。でもすぐ忘れるし(そもそも覚えていない)、適度なコミュニケーションの取り方がわからない。そのくせ細かい不具合によく気付くので上司からしてみれば厄介このうえない存在だと思う。

明日からの職場は人生初の零細企業なので、人間関係がキモだろう。仕事上のボロも目立つに違いない。それを回避するには始めからそこそこポンコツであることを匂わせていかなくてはならない。張り切りすぎてはいけない。とっつきやすくて明るい性格と程よいバカさ加減が大切だ。イメージが総てである。

……ここまで書いておいてなんだが、つい最近まで窪塚洋介はNHKのドラマに出演していたそうだ。ニュースとサッカー以外を見ていなかった私が悪かった。きっとどんな役であっても彼は彼のイメージをうまいこと体現していたに違いない。見ておけばよかった。

私は『そこそこまともな社会人』のイメージを纏って働く。窪塚洋介は『窪塚洋介』のイメージを纏って輝く。そこには天と地ほどの違いがある。それでも私は彼に倣って、期待を裏切らないひとでありたいと思う。初出勤がうまくいくように祈っていて欲しい。

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