幼い頃の私

私は小学校の帰り道でよく石ころを拾って帰っていた。つまりいつも下を向いて石ころを見ていた。
石にも目があるようだ。何の変哲もない石ころなのだが、拾う。目があったのだ。立ち止まって眺める。いろんな角度で。美女コンテストが始まる。角度によって私の中の条件が満たされないと「ポイッ!」と捨てられる。かわいそうに。

しかし、条件を満たした後は捕獲して帰る。家に着くまでその後いろんな角度で見る。家に着くとおばあちゃんがくれた漆塗りの裁縫箱の引き出しにしまう。小引き出しがたくさん付いているので、ちょうどいいのだ。普通の石がガラガラゴロゴロと音を立てて出てくる。そして持ち帰られた石はいつまでも一緒にいることになる。振り返ると良い子供時代だったと思う。
しかし隣の家が火事になって、私の家水浸しになりその裁縫箱も石もどこに行ったのか分からなくなってしまった。

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