Megumi IKEDA | 池田めぐみ

働くに関わるレジリエンスと、20代の社会人の職場での学びについて研究しています。🕊

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マガジン

  • 5分で分かるキャリア研究

    キャリアに関する概念や論文についてまとめていきます。

最近の記事

「石の上にも三年仮説」を乗り越える【若手育成の科学】

「石の上にも3年仮説」の崩壊仕事がしんどい時、このままこの会社に勤めていて良いのか漠然と悩んだ時、「とりあえず3年は我慢しよう」「辛くても我慢と努力が大切だ」などのアドバイスを受けた人も少なくないでしょう。 終身雇用がデフォルトであった時代においては、嫌な仕事や苦手な仕事を、我慢してやり続けることが美徳であり、それが成長の鍵でもありました。 しかしながら、6割以上の人が転職活動を経験し、実際に2人に1人が転職を経験する昨今*、「石の上にも3年仮説」は若者の共感を生んでい

    • 若手のジョブ・クラフティングを促すには?

      ジョブ・クラフティングとは何か?「ジョブ・クラフティング(JC)」とは、Amy Wrzesniewski博士とJane E. Dutton博士が2001年に提唱した概念であり、平たく言うと、仕事を自分好みにアレンジしたり、仕事の捉え方を変えたりすることです。 例えば、趣味で絵を描く人が、会議の議事録にイラストを追加して分かりやすくまとめることや、自分の担う仕事がどのような人々にとって役立っているのか想像することで、仕事の意義を再認識することはJCに含まれます。 また、ジョ

      • お守り物語と職場のレジリエンス

        しんどい時ほど、マンガやアニメ、ドラマや映画などの作品に没頭する人もいるのではないでしょうか? 私も体調不良な時、嫌なことがあった時は、他にやることがたくさんあっても、ついついNetflixを開いてしまったり、今までに買ったマンガを読み返してしまったりします。 辛い時こそ、このような行動を取ってしまうのは、誰かが困難を乗り越えた物語は、自分を勇気づけ、回復へのヒントをくれるからかもしれません。 下記の研究では、マンガ・アニメを通じてレジリエンスを学ぶ事例が紹介されています

        • ジョブ・クラフティングの具体例:職場におけるJCとは一体どんな行動?

           最近、何人かの方から「ジョブ・クラフティング(JC)」がどうやら重要だということはわかったんだけど、具体的には、職場でどのような行動をすることなの?という質問を頂きました。今回の記事では、ジョブ・クラフティングの具体的な事例について、私が見聞きしたことを中心にまとめていきたいと思います(論文ベースの具体例の紹介は塩川さんのnoteにもまとめられているので、ご関心のある方はこちらもどうぞ)。 事例に入る前に、そもそもジョブ・クラフティングとは? ジョブ・クラフティングとは、

        「石の上にも三年仮説」を乗り越える【若手育成の科学】

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        • 5分で分かるキャリア研究
          2本

        記事

          研究の新規性についての備忘録

          最近は、①自身の研究のプランを考えるフェーズにある、②ゼミでM2がリサーチクエスチョンをFIXさせる時期である、といった理由から、研究の新規性について考える機会が多いです。  研究計画を評価する軸は色々あるかと思いますが、その研究の新規性と有用性は、様々な分野で共通する、重要な評価軸かと思います。平たくいうと、その研究は、今までやられていないか?その学問領域にとってあるいは社会にとって有用か?ということが重要視されています。  研究における新規性は、まず、先行研究において

          研究の新規性についての備忘録

          心理的資本とは何か?:構成要素と保有することの価値

           何が起こるのか予測が難しく、大変なことも多い世の中で働いていく上では、心理的資本(希望、自己効力感、レジリエンス、楽観性)が大切だと言われています(ルーサンスほか 2020)。心理的資本は、それぞれの頭文字をとってHERO(HOPE、EFFICACY、RESILIENCE、OPTIMISM)とも呼ばれています。 心理的資本の4つの要素 心理的資本の、①自己効力感とは平たく言うと「自分は〇〇をすることが出来る」といった自信のことです。自己効力感の高い人は、高い目標を設定し、

          心理的資本とは何か?:構成要素と保有することの価値

          苦労は買ってでもすべきものなのか?:目標志向性とパーソナリティによる効果の違い

           「若い時の苦労は買ってでもせよ」という言葉があります。苦労の中には、成長に効くものもあり、これは以前の記事で、チャレンジストレッサーと似ています。  詳しいことは、以前の記事にまとめていますが、チャレンジストレッサーとは、時間のプレッシャー、重い責任などの仕事に関連するストレス要因のことを指します。これらのストレス要因は、成長に寄与するかもしれないものとして、チャレンジストレッサーと呼ばれています(Cavanaugh et al. 2000)。一方で、チャレンジストレッサー

          苦労は買ってでもすべきものなのか?:目標志向性とパーソナリティによる効果の違い

          読書メモ:中原ほか(2018)研修開発入門 「研修転移」の理論と実践

          中原先生たちが書かれた、以下の本の読書メモです。  研修と現場の隔たり 「研修は現場に生きない」「研修している時間があったら、業務をしたい」などという声をよく耳にします。研修は、新しい知識や考え方を得る場であり、決して無駄なものではなく、有益なものだと筆者は考えていますが、冒頭のような声を鑑みると、研修を実際に日々の業務に活かすのは中々難しいことなのかもしれません。  実際に、中原(2018)では、研修後の受講者の反応(満足度など)や学習と、行動変容や実際の職場での成果は

          読書メモ:中原ほか(2018)研修開発入門 「研修転移」の理論と実践

          回復力のあるチームの3つの行動戦略

           新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、テレワークなどいつもとは違う仕事の仕方を導入したり、売り上げに打撃を受けている企業も少なくないかと思います。また、変化の激しい時代においてはコロナに限らず、様々な要因により、大きなダメージを受けることも少なくないかもしれません。  このような、不確実で変化の激しい世の中においては、「チームレジリエンス」が重要になると言われています。 チームレジリエンスとは? チームレジリエンスの定義は諸説ありますが、ざっくり言うと、チームで逆境や困

          回復力のあるチームの3つの行動戦略

          成長に効きうる職場のストレス経験?

           「ストレス要因」と聞くと「悪いもの」であるというイメージがありますが、Cavanaugh et al(2000)は、職場でのストレス経験の中には、成長の糧になるものもあるという考えのもと、職場のストレス要因をチャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサーに分類しています。 チャレンジストレッサーとヒンドランスストレッサー Cavanaugh et al(2000)は、時間のプレッシャー、重い責任などの仕事に関連するストレス要因は、成長に寄与するかもしれないものとして、チ

          成長に効きうる職場のストレス経験?

          創造的な人をダークサイドに落とさないために

           科学技術を発展させる上でも、暮らしや経済を豊かにする上でも、創造性は重要なものだと言われています。仕事においても、競合他社に勝てるような新しくてインパクトのあるものを生み出すことが求められているかと思います。このように、「創造的な人材は、社会にとっても会社にとっても重要である」という意見に異論がある人はあまりいないのではないでしょうか。けれども、最近チームの創造性に関するレビューをしていて、わかったのは、創造性には負の側面もあるということでした。 創造性のダークサイド 例

          創造的な人をダークサイドに落とさないために

          働くに関わるレジリエンスの伸ばし方:困難への対処法を学んで危機に備える

          職場におけるレジリエンスの働き  近年は、VUCA時代とも呼ばれています。VUCAとは以下の言葉の頭文字をとった言葉で、技術革新の影響を受け、変化が早く、かつ、その変化が読みにくく、複雑で、行き先が不透明な状況を指すのに用いられています。 Volatility:変動性 Uncertainty:不確定性 Complexity:複雑性 Ambiguity:曖昧性  このような中で、「環境の変化に適応し,ネガティブな仕事状況に対処する個人の能力(NOE et al. 1990)

          働くに関わるレジリエンスの伸ばし方:困難への対処法を学んで危機に備える

          何が経験学習を促すのか?:仕事を楽しむことの効用

           職場での学びの70%は経験によるもの、20%はフィードバックなど他者とのやりとりによるもの、10%は研修によるものと言われています。経験からの学びをさらに深めるには、単に経験するだけではなく、経験をしたあとに振り返り、その経験から教訓や他のケースに応用できるような仮説を抽出し、次の経験で試す、「経験学習」を行うことが重要だと言われています。では、このような経験学習は何によって促されるのでしょうか? 仕事を楽しむことが経験学習を促す 経験学習を促す要素の1つに、「仕事を楽し

          何が経験学習を促すのか?:仕事を楽しむことの効用

          活躍する若手社員の2つの習慣:ジョブ・クラフティングを促し部下を育てる

           先日、管理職の悩み1位は「部下の育成」であるというネットニュースを読みました。「長期雇用」「年功序列」「タイトな職場関係」という人材育成の3条件が崩れつつある(中原 2017)中で、若手社員の育成がアカデミックの世界でも重要な関心事項になっています。では、成長する若手は日々どのようなことをしているのでしょうか? 「意識を高める」だけでは成長しない 例えば、仕事をする際の手順を変える、一緒に仕事をする人を変える、といったような仕事の主体的な変更は、ジョブ・クラフティングと呼

          活躍する若手社員の2つの習慣:ジョブ・クラフティングを促し部下を育てる

          部下が「打たれ弱い」のは誰のせい?:折れない部下を育てる2つの方法

           「最近の若者は打たれ弱い」といった言葉をよく耳にします。「部下を叱ったら、凹んでしまって中々立ち直らない」「あの子はプレッシャーに弱くて困る」と言った上司の声から、打たれ強い人を採用する動きや、研修で彼らのメンタルを鍛えると言った動きも見られます。しかしながら、ビジネスパーソンの打たれ強さは、必ずしも「本人の能力やメンタルだけの問題」ではなく、職場環境や周囲からのサポートにも大きく影響を受けることが、明らかになっています。 つまり、職場環境をデザインしていくことにより、

          部下が「打たれ弱い」のは誰のせい?:折れない部下を育てる2つの方法

          5分でわかるキャリア研究:キャリアレジリエンスを高めるには?

          前回の記事では、キャリアに関わる困難に対処する力であるキャリアレジリエンスという概念について紹介しました。今回は、就職後のギャップや昇進・異動によるショックにも効果のあるキャリアレジリエンスを高める方法について紹介します。 キャリアレジリエンスの定義等については、前回の記事をご確認ください。 伸ばしやすい要素と伸ばしにくい要素前回の記事でも紹介しましたが、キャリアレジリエンスは、様々な個人特性や能力から成ります。そのため、キャリアレジリエンスの要素の中に、伸ばしやすい要素と

          5分でわかるキャリア研究:キャリアレジリエンスを高めるには?