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【フェムテック通信#23】「令和5年版 男女共同参画白書」に提示された、生涯を通じた健康支援

2023年6月16日(金)に、「令和5年版 男女共同参画白書」が発表されました。「男女共同参画白書」の中で、フェムテックと関連の深い、妊娠・出産・更年期障害・女性の健康格差などについて記載があるため、その内容をお伝えします。

1.男女共同参画白書とは?

男女共同参画白書は、内閣府男女共同参画局によって作成された年次報告書です。この白書は、男女共同参画社会基本法に基づいて、男女共同参画社会の形成の状況について国会に報告するものです。

今年のテーマは、「新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために~職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて~」となっています。

男女共同参画社会の形成の促進に対する施策がまとめられており、白書では、男女共同参画社会の実現に向けて、政府が取り組んでいる施策や課題を、わかりやすく解説しています。

・令和5年版 男女共同参画白書(全体版)https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/zentai/pdf/r05_print.pdf

・令和5年版 男女共同参画白書(概要版)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

2.男女共同参画白書の概要

今年度の男女共同参画白書の概要は以下のとおりです。

【白書構成 】
1.令和4年度男女共同参画社会の形成の状況
特集 新たな生活様式・働き方を全ての人の活躍につなげるために
~職業観・家庭観が大きく変化する中、「令和モデル」の実現に向けて~
各分野 政策・方針決定過程への女性の参画拡大 等

2.男女共同参画社会の形成の促進に関する施策
第1部 令和4年度に講じた男女共同参画社会の形成の促進に関する施策
第2部 令和5年度に講じようとする男女共同参画社会の形成の促進に関する施策

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

3.「仕事を長く続けたい」割合が、若い男女で逆転

308ページの白書の中で、筆者が注目したポイントは「女性の働き方を取り巻く状況」についての世代別ポイントの差です。

【女性の働き方を取り巻く状況についての注目ポイント①】
・女性では、若い年代ほど「長く続けたい」「昇進できる」「管理職につきたい」と考える割合が大きい。特に 「昇進できる」「管理職につきたい」は、20代と40~60代で10%ポイント以上の差がある。
・男性では、「長く続けたい」とする割合は、若い人ほど小さくなっている。

https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r05/gaiyou/pdf/r05_gaiyou.pdf

つまり、若い女性ほど仕事を長く続けて管理職につきたいという割合が高い一方で、若い男性ほど仕事を長く続けたいという割合が低くなっており、いくつかの理由が考えられます。

・女性の社会進出が進んでいること
・女性の経済的自立意識が高まっていること
・子育て支援の充実
・男性のワークライフバランスへの意識の高まり

戦後の日本は、女性は男性に比べて社会進出が遅れていました。
筆者の母親(70歳)も結婚後は仕事をやめて専業主婦をしており、「寿退社」が当たり前の時代でした。

しかし、女性の社会進出が急速に進み、現在では管理職に就く女性も増えていると同時に、政府・企業も女性活躍推進を応援しています。
また、女性の経済的自立意識も高まっており、女性が仕事を長く続けることで、経済的に自立したいと考える人も増え、さらに子育て支援の充実も、女性が仕事を長く続けることにつながっています。

一方で、男性のワークライフバランスへの意識も高まっており、仕事に人生のすべてを捧げることには抵抗を感じる男性も増えています。そのため、若い男性の中には、仕事を長く続けたくないと考える人も出てきています。

筆者の弟も、子供が生まれたことでワークライフバランスを考えるようになり、より子育てがしやすい会社へ転職しました。そのような男性が増えてきている印象があります。

これらの理由により、若い女性ほど仕事を長く続けて管理職につきたいという割合が高い一方で、若い男性ほど仕事を長く続けたいという割合が低くなっていると考えられます。

4.若い男性ほど家事・育児スキルが高い

【女性の働き方を取り巻く状況についての注目ポイント②】
・男女の家事・育児スキルの自己評価及び配偶者の実施する家事・育児への満足度を見ると、特に若い男性ほど自分の家事・育児スキルへの評価が高く、配偶者から見た満足度も高い。
・家事・育児等について、女性では年代が高い方が、男性では年代が低い方が、「自分が率先してするべきことである」と回答する割合が大きい傾向にある。
・男性は年齢が低いほど、家事・育児参加に関しては抵抗を感じておらず、職場等、周囲の環境を改めることがより必要と考えている

日本のジェンダーギャップに関するひとつの要因として「夫は仕事、女性は家事」に代表されるような「昭和のジェンダー観」があると言われています。
しかし、女性の社会進出が急速に進み、現在では男性と女性の間で、家事や育児の分担が徐々に縮まりつつあります。

この背景には、女性の経済的自立意識の高まりや、男性のワークライフバランスへの意識も高まり、家事や育児に参加したいと考える男性も増えています。

その結果、若い男性ほど、自分の家事や育児スキルへの評価が高く、配偶者から見た満足度も高いという傾向が見られます。また、家事や育児について、女性では年代が高い方が、男性では年代が低い方が「自分が率先して家事はするべきことである」と回答する割合が高い傾向にあります。

さらに、男性は年齢が低いほど、家事や育児参加に関しては抵抗を感じておらず、職場など周囲の環境を改めることがより必要と考えています。

5.生涯を通じた健康支援〜フェムテックとの関わり〜

フェムテックに関わる部分だと、「生涯を通じた健康支援」で以下のような記載があります。

第7分野 生涯を通じた健康支援(218ページ)
 第1節 生涯にわたる男女の健康の包括的な支援
  ア.包括的な健康支援のための体制の構築
  イ.妊娠・出産に対する支援
  ウ.年代ごとにおける取組の推進
    (学童期・思春期、成人期、更年期、老年期)
 第2節 医療分野における女性の参画拡大
 第3節 スポーツ分野における男女共同参画の推進

筆者がフェムテック分野で注目している更年期については、以下の内容が記載されています。

  • 骨粗しょう症検診、子宮頸がん検診、乳がん検診の受診率向上

  • 更年期障害及び更年期を境に発生する健康問題への理解と治療の普及

  • 職場における更年期の健康に関する研修や啓発活動の取組及び相談体制の構築

  • 運動、栄養、睡眠などの生活習慣が老年期の健康に及ぼす影響についての総合的な意識啓発

  • 特定健康診査・特定保健指導の受診率向上

上記の取り組みを進めるために、企業は「女性の健康に関する研修や啓発活動」を行い、女性の健康を支援する体制や制度を整備することで、女性の健康推進に向けた取組を進めることができます。

個人は、女性の健康に関する知識や理解を深め、女性の健康を守るための意識を高めることが重要です。

企業や個人が協力して、女性の健康推進に向けた取組を進めることで、女性の健康を守り、生活の質の向上につなげていくことが求められていると感じています。

6.まとめ:国の文化や政治の動きを理解することで、ビジネスのヒントが生まれる

筆者は、フェムテックの新規事業の相談などを受けることが多く、noteでも海外フェムテックのビジネスモデルなどを多く紹介しています。

海外ビジネスモデルのトレース(タイムマシン経営)において、重要なことは「国の文化や政治の動きを理解した上での、ビジネスモデルのトレースが求められる」ことです。

例えば日本では、2023年4月から育児・介護休業法の改正により、従業員が1,000人を超える企業の事業主は、男性労働者の育児休業等の取得状況を、年1回公表することが義務付けられています。
企業としても、この動きに対応する必要があるため、大きなビジネスチャンスと捉えており、「育児・介護休業法の改正」に関するセミナーなどを企業等で実施している事例も多く出ています。

国の文化や政治の動きをいち早く掴み、ビジネスのヒントにつなげてみてはいかがでしょうか?