また歌を歌おう 2018/9/2

夫とカラオケに行った。歌を歌うのは好き。子どもの頃はマイク代わりにブラシを持って、よく歌ってた。キラキラしたライトとたくさんのファンに囲まれて歌っている想像をしながら。子どもの妄想力ってすごくて、はっきりと目の前には、ペンライトの光が見えていた。

あの頃好きで歌っていた歌を、カラオケで歌うと、子どもの頃のわたしが一緒に歌っている気がする。昔、カセットテープを擦り切れるくらい巻き戻して、歌った曲。歌詞がわからなくて必死で聞き取って歌っていたけど、正しくはこうだったのか!とか、歌番組ではフルコーラス歌うなんて滅多になかったから、今になって2コーラス目の歌詞を知って「こういう歌だったんだ!」って驚いたり。

ごめんね、あの頃なりたかった歌手にはなれなかった。同じ歌を歌っていても、ペンライトも観客もいない。それでも、本物のマイクで、カセットテープよりもずっと素晴らしい音響で、歌ってる。随分時間が経ったね。こんな風にこの曲を歌える環境ができるなんて想像もしてなかった。

いいよ、いいよ、こういう風に歌いたかったの。ちゃんと2番までね、マイクでエコーもあってね、音楽とわたしの声が溶けあう瞬間を味わいたかったの。覚えてるでしょ、音楽とわたししかいなくなる瞬間。あんなにまぶしい光もお客さんもいたのに、ぜんぶ遠くなる。あの感覚が好きで、ずっと歌ってた。

子どものわたしが、そう答えている気がして、いつも一人でじいんとする。音楽と自分の声が、自分自身が溶け合うあの一瞬は、毎回訪れるわけじゃなくて、当たり前だけど、歌う機会が減った今になってはなかなか出会えない。それでも、あの瞬間にまた出会いたいから、子どものころの小さいわたしに出会いたいから、また歌を歌おうと思う。

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