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『RRR』感想 〜こんなんインドの全部を好きになっちゃうよ〜

はじめに

3月末ごろ、仕事終わりに『RRR』を観に行った。同時期に友人2人からお薦めされ、こんなことも珍しいと思い、急いでチケットを予約した。初めてのソロ映画鑑賞だった。
案の定、曲にも、ストーリーにも、登場人物にもメリメリにめりこんでしまった。どうしようもなくて、とりあえずその日はインドのビールを飲んでから帰った。そして鑑賞から数日経った今日も、Naatu Naatuを聴いては、ビームとラーマに想いを馳せている。

以下、ネタバレなしで『RRR』の感想を書く。

背脂マシマシ、でも爽快

友人が私におすすめしてくれたときに言っていた、「ずっと見開き」という表現がある。大変分かりやすいので、私も人におすすめするときに使わせてもらっている。嬉しいシーンも、悲しいシーンも、全力の画で見せてくる映画だった。背脂マシマシの濃厚豚骨ラーメンの濃さで3時間あるので、見終わったあと確かに疲労はあるけれど、それを圧倒的に上回る満足感があり、疲労を乗り越えるとたちまち活力が湧いてくる。友人は「鑑賞後めちゃくちゃお腹がすいた」と言っていた。私もそうだった。
とにかく主人公2人がかっこよく、でもかっこいいせいで胸が引き裂かれるような展開になって泣いちゃうし、かと思ったらこんなのアリ〜〜〜!?!?!?と笑っちゃったりする、感情がジェットコースターに乗せられてしまう映画だった。私は暴力表現があまり得意じゃないので、目を背けてしまったシーンもあるけれど、最後の方はそんなのもうどうでもよくなって、両手を突き上げそうになるほどだった。
伏線は分かりやすく張られて、分かりやすく回収されるので非常に気持ちがよい。分かりやすいと言っても、展開が読めるとかそういうことではなく、きちんと意外性もある。それに雑に回収するわけでもなく、丁寧で美しいので、雑味のない爽快感がある。

コレ観たインド人、どうなっちゃうの?

私はインド史に疎いけれど、十分に楽しめた。これ以上に楽しめることなんてあるか?と怪しむくらいには楽しかった。鑑賞後に気になって、主人公2人のモデルになった人物のwikipediaを読んでみたり、RRRとインド叙事詩の繋がりを解説する動画を見たりしてみると、インド史に詳しい人はこの映画を何倍も楽しめるんだろう、無知な日本人でもあんなに楽しんだのに、インドのことが好きなインド人はこれ観てどうなっちゃうの????と思った。やっぱりもう踊っちゃうんだろうか。

扱ってる時代やテーマはとても重たくて、結末含めて日本人の思想や感覚とはだいぶ異なる作りの映画だ。だからNaatu Naatuばかり言ってウカウカしちゃうのも考えものかも、と思うときもある。でもラージャマウリ監督は明らかに、でっかいエンターテイメントとして出力しているし、作品全体から「全力で楽しめよお前ら!!!!!」という声が聞こえてくるので、私は素直に楽しむことにした。楽しむために歴史や文化を勉強するだけだ。

偏見を懐柔する音楽とダンス

インド映画を観たことがない、かつインド音楽にも馴染みのない私が、インド映画と言われて想像するものは、かなりの大人数がめちゃくちゃ彩度の高い民族衣装をまとって、金ピカの装飾のセットをバックに踊っているような映像+独特のクセがあって、全部同じに聴こえる気がしてくる曲だった。それが劇中に何度も出てくるのだと思っていた。それが3時間続くのかと思って、『RRR』を観る前は重たく感じていた。
しかし、『RRR』は実は劇中でほとんど踊らない。唯一の劇中ダンスシーン(巷で大流行のNaatu Naatu)も、上記のイメージとは異なる映像だし、曲調もかなり受け入れやすいものだった。乗りやすいビートだし、男性ボーカルなこともあってか非常に聴きやすい。それに、そのダンスと曲がはじまるシーンは、どう足掻いてもニッコリしてしまう、万国共通でスカッとする展開であるため、インドの音楽に一切馴染みがなくても、ノリノリになってしまうのである。観客も、劇中のイギリス人たちと同じように、ナートゥに連れていかれてしまうのだ。

ダンスシーン以外も、本当に胸が激烈に熱くなるシーンで音楽が流れたり、歌ったりするので、3時間で完全にインドの音楽に完全に慣らされてしまう。というか、好きになっている。
そして物語が終わり、エンディング、さきほど書いたド偏見イメージママの、クセがゴリゴリの音楽が流れだし、ド派手なセット・衣装でのダンスがはじまる。もうこのときには、異文化を頑張って観る自分ではなく、思わずハッピーに、笑顔になってしまうような、受け入れ態勢100点満点の自分が出来上がっているのである。なんなら「コレだよコレ!!!!!待ってたよ!!!!」とさえ思っている。

おわりに

他のインド映画を観てない人間が言うことではないが、日本人が一本目に観るインド映画として、『RRR』はベストなのではないかと思う。それくらい、普遍的な良さと、いままでにない映画体験がいい塩梅にブレンドされた作品だった。映画を観てから、会う友人全員におすすめしている。

今週末あたり、もう一度映画館で観ようと思っている。

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