ノマド・リーディング (4) 歩きながら、私たちはどこにいくのか

私がずっと読み直している本に森有正のエッセーがあります。

「バビロンの流れのほとりにて」「アリアンヌへの手紙」「遥かなノートル・ダム」などといった著作は、一人の日本人が西洋の歴史や文化と対峙して、それを学者のように俯瞰するのではなく、いかにしてその衝撃を個人的に内部化してゆくかを執拗に描いた難解で、それでいて心が共鳴する作品群です。

エッセーは主に一人称で書かれていますが、それは森自身であるとは限りません。著者の意識を投影した他者とも受け取れる一人の人間が異国で見聞したものが精神に及ぼした影響を詳細に描いてゆき、そうして彼の心の洞窟に誘い込まれた読者が自分のおかれた現実を問い直すようになるという構造を持っています。

哲学が個人的な手紙のように書かれたならば、きっとこうした文章になるだろうというのが、森のエッセーなのです。

急に彼のことを思い出したのは、もちろんノートル・ダム大聖堂の火災があったからです。彼が愛したパリの象徴ともいうべき聖堂の尖塔が崩れ落ちる映像を見ながら、私はもう一度、このエッセーを読み直さなければと思ったのでした。

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ほりまさたけ

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