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『イカゲーム』とマンガから読み解く、デスゲームにありがちなやつと奴

『イカゲーム』という作品をご存知だろうか?Netflixで配信されている韓国ドラマで、9月中旬に全世界で配信されるやいなや視聴回数1位を記録し話題を呼んでいる。

多額の借金や貧困などで金に困った人たちが、456億ウォン(約45億円)の賞金がかかった謎のサバイバルゲームに参加し、勝者になるために命がけでゲームに挑戦していくという内容だ。本作を「日本のマンガによくあるデスゲーム系作品」と評価する人も多く、正直期待半分で視聴したのだが、結論『イカゲーム』はめちゃくちゃ面白い。

確かに本作をジャンル分けすると「デスゲーム」または「サバイバルゲーム」に括るのが適切だろう。だが、デスゲームはあくまでもテーマ的なものであって、物語の核となる部分ではない。物語の格は社会格差の風刺であり、例えるなら映画『パラサイト』のような社会派ドラマの一面を持つ。

さらに注目してほしいのは作中に登場する「ゲーム」の内容だ。『イカゲーム』に登場するゲームの大半は、子どもの頃に遊んだことがあるゲームなのだ。だるまさんが転んだや型抜き、綱引き、ビー玉遊びなど。子どもの頃に慣れ親しんだ遊びだからこそ、戦い方や駆け引きがとてもシンプルなのだ。デスゲーム作品にたまによくある、天才じゃないとクリアできないトリッキーなゲームなどが一切登場しないため、視聴者も一ゲーム参加者のような気持ちで見入ってしまう。

その他にも、作中に散りばめられた伏線が秀逸だし、日本にはないような色彩感覚のゲームセットは圧巻で、この週末に一気に視聴してしまったほど『イカゲーム』にどハマりしてしまった。

そんな個人的に大絶賛の『イカゲーム』だが、一方で視聴中に「ああ〜、これデスゲームあるあるだなぁ」と思わず突っ込んでしまった箇所がいくつかある。だが、それは決して悪いことではなく、制作している国が違えど「デスゲーム」という作品を通して「あるある」の要素がある現象がとても面白いと思ったのだ。もしかしたら、この要素は「デスゲーム」という作品を制作する上で欠かせない要素なのかもしれない。

というわけで、今回は『イカゲーム』を視聴して感じた「デスゲーム」あるあるを、デスゲーム系マンガを挙げながら備忘録的に書いていきたい。

救いようのないくらい悪い奴

これはデスゲーム作品あるある、いやむしろこれがないな始まらないと言っても過言ではないと思う要素だ。『イカゲーム』では、ホ・ソンテ演じるチャン・ドクスがこれに値する。マンガだと『賭博黙示録 カイジ』でクズキャラと名高い安藤守だろうか。

チャン・ドクスと安藤守は見た目も性格も異なるが、共通点としては絶望的なまでに自己中心的だというところだろうか。デスゲームに参加することで参加者の本性が垣間見えていき「え!あの人が裏切るなんて...!」という意外性を楽しむ点がデスゲーム作品の魅力だと思っているが、この2人の場合はデスゲームに参加しようがしまいが、おそらくこういう性格なんだろうなと視聴者に呆れさせるほどの「悪い奴」感が漂っている。

絶対に顔を見せない主催者

これは当たり前なのかもしれないが、デスゲームの主催者側は顔を絶対に見せない。『イカゲーム』だとみんな謎の仮面を被っていたが、マンガだと『LIAR GAME』も同じように仮面を被っている。

また、学園系デスゲームだと主催者側からのコミュニケーションはスマホや掲示板などwebを利用して行われることが多い。そのため、仮面はおろか存在自体が作中に登場しないのだ。

主催者の正体こそがデスゲーム作品のオチというか醍醐味になるので、顔を見せないのはデスゲーム作品にとって欠かせない要素なのかもしれないが、たまには主催者が自分の顔をオープンにするデスゲームというのも見てみたい気がする。

信じていた人からの裏切り

主人公の昔、または現在進行形で親友的存在の人物がでデスゲームに参加していて、中盤までは良い信頼関係を保ちながらも、終盤で親友の本性が出て最終的に戦うことになる...という展開。これもデスゲーム作品のあるあるだと思う。『イカゲーム』では、主人公のソン・ギフンとチョ・サンウの関係性がこれに当たると思っているが、親友ではないにしろ恋人や家族など信じていた人から裏切りというのは、デスゲーム作品ではある種のスパイス的な要素なのかもしれない。

ネタバレになってしまうので、具体的なキャラクター名は避けるが信じていた人がまさか...!という展開でお馴染みのマンガ作品を挙げるとしたら以下の2作品だ。

最終決戦に向けてのコスチューム変更

最終決戦。物語のフィナーレを飾るシーンであり、山場なので派手に見せたいというのはドラマもマンガも同じなのだろうか。『イカゲーム』では、最終ゲーム直前に突然新しいコスチュームを配られ着替えるというシーンがあり、割とおしゃれなコスチュームだったため、個人的には「イカゲームの主催者っておしゃれさんなんだなぁ〜」と割とどうでも良い感想を抱いてしまった。ちなみに、マンガだと『神さまの言うとおり弐』でも同様のシーンが見受けられる。

教室にある日だるまが現れ、突如デスゲームに参加させられる高校生たちの物語なのだが『神さまの言うとおり弐』ゲームが進むにつれて、最初に着ていた制服から徐々にアップデートされていく。

他にも何故か記憶喪失の主人公や、めちゃくちゃ頭がキレる老人が参加しているなどデスゲーム作品あるあるはキリがないが『イカゲーム』と絡めて挙げてみるとこんなところだろうか。

デスゲーム作品は日本だと1999年に発売された小説「バトル・ロワイアル」が先駆けで、その後『王様ゲーム』や『神さまの言うとおり』の登場、ヒットにより「デスゲーム」という一つのジャンルとして定着したそうだ。

惨殺シーンが多いため、人によっては苦手な方も多いであろうデスゲーム作品。だが、登場人物たちが命がけでゲームに取り組むからこそ生まれる緊張感、そして極限状態で育まれる人間ドラマは唯一無二。『イカゲーム』はもちろん、ぜひ日本のデスゲームマンガも一度手に取ってみてほしい。

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