17. 反省

どうも、江原茗一です。
ご無沙汰しております。くだらない記事を書いて以降、かなり時間が経ってしまいました。
まずは、元旦に起きた地震の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げます。本来であればのんびりと過ごせたはずのお正月にあんな事が起きて、私も友達の事が心配でたまりませんでした。一日でも早く、安心できる状態になる事を願っています。

2023年もお世話になりました。私は本厄でしたが、それなりに立ち向かって色々とこなせたと思います。すごくくたびれました。本年もどうぞ宜しくお願いいたします。

ブログを更新する気力が全く無くて、今もあるか無いかと言えば無いのですが、書く必要性を感じたのでパソコンに向かいました。
Instagramでお知らせしていましたが、現在パレスチナで起きているイスラエルによるジェノサイドへの抗議、パレスチナへの連帯の意思として布パッチを作り配布しています。1月17日(水)までに約900枚の布パッチを作り、そのほとんどを国内各地の店舗、企画者の方々に限定してお分けしました。
布パッチの事以外にも、ストーリーでパレスチナに関する情報や署名のリンク等をシェアしていたので、目にした方もいると思います。

今回、布パッチを作った経緯、そして反省や感じたことについて話したいと思いました。
いつもはブログなんてろくにチェックもせずよくも考えず勢いだけで書いていますが、今回に限っては正直上手く書ける自信がありません。もう書き始めて一週間以上経っていて、詳細を書けば書くほど分かりにくいし、削れば削るほど薄っぺらく感じてしまい、もう書くのを断念するかと散々よぎっているのですが、ここは誤解を恐れず書いていこうと思います。

作製した布パッチ

昨年10月15日はワンマンライブでした。来てくださった皆様、検討してくださった皆様も、本当にありがとうございました。このバンドメンバーになってからかなり時間が経ちましたし、Ampersandsのレコ発もツアーもコロナでやれなかったので、今回開催出来て良かったと思っています。またこの話は別の機会に書きます。
そんな日を目前に、SNSを通して入ってくるパレスチナの悲惨な状況に胸が苦しく、鬱々とした気分でした。ワンマンの直後はレコーディングも決まっていてプレッシャーがあったし、昨年は持病のせいで毎月の半分以上体調が悪い一年だったので、正面から受け止めるには精神的にも体力的にもしんどいなと思っていました。
しかし出来る事はやりたいと思っていたので、まずはこの問題について友人と話をしたり、情報・知識を得ると言う事に取り組みました。
現地のジャーナリストやこれまで問題を研究し世界に訴え続けてきた人々が、Instagram等のSNSやデモ、勉強会を通し、迅速に分かり易く様々な形で発信しているおかげですぐに正しく理解する事ができました。

日を追うごとに激化していくパレスチナ・ガザでの出来事を、より多くの人に知ってもらい阻止しよう、終わらせようと、日本でも活動する人が増えていき、私も署名に参加したり街中でのデモやイベントに顔を出したり、引き続き友人とこの問題について話し合いました。そして私も、SNSで情報のシェアをする事にしました。

もっと出来る事が無いかと思いつつも、考えがループしてしまい時間が経過していました。最適な方法が見つからなかった。
けれど私は一つのきっかけから、パレスチナの人々への連帯の意思表示、何か役立つ(かもしれない)事を、もう少し具体的な形でやらないと、このままでは2024年を始められないと思いました。

そのきっかけが上の画像です。
以前このブログでも、『Spotify for Artists』というSpotifyで楽曲を配信しているアーティストがその楽曲毎の再生回数、リアルタイムでどの曲が聴かれているか等、様々な詳細状況をチェックできるサービスがあるという事を書いたと思います。これはそのスクリーンショットです。
12月台湾から帰国した直後、急に気になり久しぶりに開いてみたところ、過去28日間の「リスナーが最も多い国」という項目の下部に「パレスチナ自治区」がありました。リスナー数は「1」、一人です。

別に、私の音楽を聴いてくれている人がいようがいまいがパレスチナの人達に対する想いは変わらないのですが、この事実を知った時とてもショックでした。

なぜなら私は私の音楽で、誰かに何かを伝えたり何かを訴えたいわけでもなく、私の音楽はただただ私の娯楽であって、快楽、向上心のために利己的に作り出されたものだからです。そんな音楽を、一体どんな気持ちで聴いてくれているのだろうと、もうぴったりはまる言葉が見つからない、表せないような苦しい気持ちになりました。
世界規模で見たらしょうもない、身勝手で稚拙な音楽を、私が私の好きな音楽を、苦しみつつも楽しみながら作り出した音楽を、私と一緒に喜んでくれる人達が、東京、日本、その他様々な国に大勢いる。
利己的なはずの音楽を聴いて、何かを自己解釈して感じ取って見出して日々の楽しみにしてくれている事に、とても感謝しています。
パレスチナにもいる。この気持ちを上手く説明出来ませんが、はっきり言って訳が違うでしょう。この状況下で、一体どんな気持ちで聴いてくれているんだろう。もうそれだけです。涙が出てしまう。
この事を知ってから、何を行動するかもう一度考え直しました。


今から二ヶ月ほど前の昨年11月中旬頃、友人S君から長文のメッセージを貰いました。メッセージをくれた事を勝手に書いてしまって良いか分からないけれど、私が馬鹿だという話をしたいだけなので、もしこのブログを見ていたら書く事を許して欲しい。

S君はパートナーのAちゃんと一緒に早くからパレスチナへの連帯を表明し、必死に活動してくれていました。私はその事を立派だとか頼もしいとか思いながらも、日々自分が出来る範囲と思う行動を取っていた。
彼らが投稿するストーリー等にリアクションを残していたので、私にこの問題への関心があると気付いてメッセージをくれたのだった。
メッセージの要点は「自分たちアーティストや表現者は声をあげませんか?」「一緒にSNSを使って停戦を訴えかけませんか?」というものだった。
前にも書いた様に、この時点で私は自分が出来ると思う事を少なからず行っていて、SNSでも時々情報をシェアする等していました。
メッセージの内容には賛同したし、自分はこんな事に取り組んでいますと説明すると共に、彼らに対する感謝と尊敬の気持ちを返事した。

でもその時私は、彼の言う「アーティストや表現者」という一括りの中に入れてもらうには、自分はあまりにも雑魚で、無力だと思った。役に立つかと言ったら、それは期待に応えられないかもしれない。
ここまで来ても自分に自信が無いし、音楽を仕事にする者としての自分の存在意義を常々疑問に感じているので、「アーティストや表現者」という肩書きが重たく感じることがある。

そして、ずっと自分が情けなかった。S君からメッセージをもらう前から、パレスチナの為に、仕事である音楽で、私に出来る事が無いかずっと考えていたし、実際取り掛かってもみたけれど、どうしてもできなかった。
絶対に出来無いわけでは無いんだろうと思う。でも簡単には出来なかった。
出来ない自分に散々腹が立った。パレスチナの為に曲を作って、その売り上げを寄付しようとか、出来る事ならやりたい。でも出来ない。それはもうしょうがないんだろうが、腹が立つ。だから余計に「アーティストや表現者」というワードが重くなる。そう呼ばれる資格が無い。

「アーティストや表現者」として扱われた時、私は私よりも、より認知度のある人に呼びかける方がうんと求めている成果が得られるはずだと思いました。
そして同時に期待していました。私よりも知名度のある著名な人達、アーティスト、ミュージシャンがどんどん表立って声を上げていくだろうと、勝手に期待をしていました。
Black Lives Matter、ウクライナ侵攻、ウィシュマさんの事、あの時みたいにきっと、皆が声を上げていくのだろうと思っていました。皆を待っていました。ここに来ても尚、待っている自分がいる。誰かを待っているなんて大人として不甲斐なく思う。結局勇気が無いんだ。

S君からメッセージをもらって以降、私の行動はすぐに変わりませんでした。情報を得て学び、友達と語り合い、行ける時はデモや集会に顔を出していた。けれどずっと心につっかえがあって、足取りが重かった。
本当にこれだけで良いのか、本当にこれだけしかできないのかと延々と考えていました。そうして方法を考えれば考える程、同時にこのままでは音楽、文化を楽しめなくなってしまうかもしれないと思った。
そうやってジトジトと考えていた時、Spotifyのあの情報を知りました。

一人一人がやれる範囲の事をやる。勿論それで良いと思います。私は人のアクションの程度を比べたり責めたくは無い。けれど自分自身に対しては、それでは足りないと思った。
雑魚かもしれないけれど好きな事を仕事に出来て、仕事にしてもらえて、私の音楽と将来に期待してくれる事務所がある。いつ差し押さえに合うかわからない程には貧乏だが、好きな事をやって生きている。
私も皆も、私の音楽なんて無くても生きていける。
私は自分が今音楽を生業にしていることの、社会での役立たずさを実感するし、私自身のミュージシャンとしての存在意義を疑問に思うからこそ、自分がとても幸せな状態にあると自覚しています。

私は本当に大きな思い違いをしていました。声を上げることに自分が何者であるかは関係が無かったし、決して多くの人に届かなくても、目に留めてくれる人が一人二人でもいれば十分だったのに、何故か無意識に自分は無力だから、表立って声をあげる価値が無いと思ってしまっていました。その事を心の底から反省しています。人に期待しすぎたことも。
私が声を上げるのに、私が何者であるかは関係が無い。けれど、世間には私を「ミュージシャン」或いは「シンガーソングライター」、「アーティストや表現者」と思って期待してくれる人が大勢いる。そして私がこうして公に何か行動を起こすことによって、安心してくれる人がいる。
布パッチという選択肢を取ったのは、音楽で何も出来ないからこその苦肉の策だったけれど、配布を通じて色々な方と交流してみて、本当にやって良かったと思っています。
「好きなミュージシャンが表明してくれて嬉しい」「知らなかったからシェアしてくれてありがとう」「心を痛めているけど何かを言う勇気が出なかった。だけど茗一さんが言ってくれて勇気が出た」、色々なメッセージを貰いました。こんな私の行いを心強く思ってくれてありがとう。私も皆さんを心強いと思った。誰かを待っているのは私だけではなかった。
私は、皆さんと一緒になって声を上げていきたいと思います。

けれど私は、各々の楽しい生活も大切にして欲しいと思っています。
これは意見が割れてしまうかもしれないけれど、私は皆、楽しんで良いと思っています。お正月も節分も、ひな祭りもクリスマスも全部。
だって私達の人生は一度きりだし、この後突然終わるかもしれない。素敵な事を沢山体験させてあげたい、大切な家族、子供がいるかもしれない。
でも自分自身の生活を尊いものと考えるのなら、同じ尊さがパレスチナの人々の生活にもあるのだから、日常を過ごす事と声を上げることを切り離すべきじゃない。生活しながらも、問題に立ち向かうことはできるはず。寧ろ、抗議を日常に取り入れるということに慣れるべきだと思っています。
言いたいことが伝わるでしょうか。
実際、布パッチの配布をお受けしていく中で、安全に楽しく生活している自分が、SNSで並列にパレスチナで起きている事への抗議をしていたら中途半端じゃないか?と悩んでいる方がちらほらいました。江原さんはどう考えますか?と。私もライブの告知やエピソードを語る事で呑気と捉えられたどうしよう、嫌だなあ、色々やれる事はやっているのに、と考えていた時がありました。ワンマンの前後は特に。自分の行いが中途半端だと自分が思うのならそれは中途半端なんでしょうが、結局中途半端なんじゃないか?と言うのは、他人のそう思われたら嫌という事もあるのだと思います。もうそれに関しては気合いで乗り切るしかないのではないでしょうか。
私は自分の行いを後悔したく無いですし、結果よりも自分が何を選択したのかを重要視したいと思っているので、自分が幸せに暮らしていることへ感謝しながら仕事をして、生活をして、何かに声を上げる事を同時にやっていきたいと思っています。
けれどそれでは不十分だと怒る人はいると思います。ただ声を上げている方の中には、自分の生活・仕事、趣味や財産を犠牲にしている人が大勢いるんです。その方々には怒る権利があると思います。語気を強めてしまうのはしょうがないと私は思います。
その事が声を上げると言う行為への参加し辛さ、ムードを生じさせている場合があるので、他人の行為の度合いを比べたり行動する事を強要してはいけないと基本的には思っているのですが、私達はその怒りを理解しなくちゃいけない。自分を犠牲に頑張っている人がいることを忘れないでください。
上手く説明できているかわからない。誤解を生みそうだな。
要するにあなたが十分かどうかは、あなたの心に聞いてみるのが良いのではと言いたい。ただ自分も大切にして欲しい。

無理はしないで欲しい。共感性の高い人は、パレスチナで起きている事を映像等で摂取しすぎると、心が病んでしまうこともあると思う。私もキツい時がある。
時には情報から離れて欲しい。そう言う場合にも、布パッチが役立つと思います。身につけているだけで良いのだから。

今はイスラエルに対するボイコットも行われていますが、例えばマクドとかスタバとかファミマとかバーガーキングとか、私はもう利用していないし、やめませんか?と思うけれど、そこにしか居場所が無いという方もいると思います。安心できる場所がそこしか無いという方がいると思います。それについても無理しないで欲しいと思います。

ここまで、布パッチの配布にご協力いただいた皆様ありがとうございます。
完全に一人でやっているのでとても大変ですが、配布を通じて考えを改める事もありましたし、自分の立ち位置、環境に今まで以上に感謝することができました。引き続き宜しくお願い致します。

本当はとある署名の締め切り前にこの記事を書き終えたかったのですが、無理でした。感情的だし三万字位になってしまい、しっかりと書き上げるには一ヶ月以上はかかるかもしれないと思いました。沢山端折った結果、言葉足らずの部分もあると思います。気分を悪くされた方、これを読んでがっかりする方もいるかもしれませんが、私の気持ちが伝わる事を祈ります。
「音楽をやってんのか」「早く音楽をやれよ」と思われているんだろうなあと毎日思っていますが、それもちゃんとやっていますので理解して下さい。

私にはイスラエルに知り合いがいます。イスラエルで私の音楽を聴いてくれている人もいます。だからこそ早く終わって欲しいと思っています。
75年の間に、パレスチナで人生を最期の時まで自由に生きられなかった人がどれだけいるか。今こうして私が言葉を選んでいる間にも、大勢の人が、子供達が死んでいます。最悪です。
どうか知ってもらいたいと思っています。楽しい話題だけ見たい、私の活動の情報を知りたいだけだと言う方もいるかもしれませんが、ごめんなさい。

自分にも何か出来そうだという方、例えばイラストレーターやグラフィックデザイナーの方、VOTEや戦争反対のようにポスターを作ったり(お店を経営されている方で、ポスターを必要としている方が多かったです)。どうでしょうか。
私も人に強要していると思われてしまうかな。そうしたく無いと思っているけれど。
ただ、今パレスチナで起きている事を一人でも多くの人に知ってもらう事が最も重要だと思っています。だからポスターなりシェアなり、なんでも良いからきっかけが必要なんです。社会は残念ながら、事実を知らなければ無自覚に加担させられてしまう仕組みになっていると思うので。

他にも書きたいことがあるのだけれど。もうやめにしよう。あとからあれも書きたいんだったこれも言いたいんだったと湧いてきそうだし何度読み返しても不足していると感じます。頭の悪い文章すぎて、もう投稿するのやめようかなとも思っています。恥を捨てるしか無い。
この記事の締めくくり方がわからない。唐突ですが終わります。
あの時メッセージをくれたS君に感謝しています。ありがとう。

<布パッチ配布受付>

引き続き、布パッチの配布していきます。
お店を経営されている方、企画をされている方で配布にご協力いただける場合は、下記を記載の上、メールにてご連絡ください。

・希望枚数(参考に聞かせて下さい)
・お送り先ご住所
・お名前(お店の名前でも可)
宛先:meeshiieee(at)gmail.com
件名:布パッチ希望【(ご自分の店名等を括弧に入れて下さい)】

また今日(1月18日)から個人の方へも配布を受け付けます。どのくらい希望される方がいるかわからないので、一旦1月24日(水)まで受付けたいと思います。なので実質先着順ですが下記フォームに記入して送信して下さい。
できるだけ希望された全員にお送りしたいと思いますが、希望人数によっては途中でストップするかもしれません。その場合はお知らせします。

入力フォーム ※1月22日(月)締め切りました!※
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdUw6Ud0AZlLNPUATMqplwaklzppMS0bRJijAlilY0qD52wkA/viewform?usp=sf_link

一刻も早く、布パッチやプラカードが不要になりますように。
今年はちゃんと、ブログ書きます。
最後にですが、本年もどうぞ宜しくお願い致します。

ではまた。

江原


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現在パレスチナで起きていること、これまでの経緯など大変分かり易いのでこちらの動画を是非見ていただきたいです。
D2021×CLP「ガザで一体何が起きているか -民族浄化とは何か-

こちらの本をずっと人に勧めています。
ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義 (単行本)https://www.daiwashobo.co.jp/book/b10040675.html


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