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「気持ちが悪い」は褒め言葉

突然だが私には明確に、好きな文体というものがある。

文体とは文と文の繋げ方や展開のことをいうらしい。最近読んだ本に書いてあった。私としてはつまり書き手の個性みたいなことでもあるよな、と解釈している。

好きな文体があるとは言っても、普段からよく読書をしていて好きな作家がいるとかそういうことではない。知っての通り当方年季の入ったオタクであり、文章を読むのは専らネットやSNSだ。

「それは推しですよね?」と言われても否定はできないのだが、″ルームシェアアラサー男3人動画″ 内の一人が凄まじい文章力を持つ男であり、私が世の中で一番好きな字書き(多分違う)なのだ。

不本意ながら(失礼)少しだけ、今日は彼の紹介をしながら私の目指す文章について提示していきたい。



・吉野おいなり君という男

TikTokやYouTubeで大人気の「板橋ハウス」という、アラサー男3人衆の内の一人。そして吉本興業所属の芸人、「めぞん」というコンビの半分だ。

彼は母子家庭で育った一人っ子である。家では一人の時間が多かったことから、気付いた時には2chの民だったと話す。その言葉通り、彼の言動からは古参インターネットオタクとしての風格をひしひしと感じることができる。

そして彼は昔から妹が欲しかった。いや、来年の2月で30歳を迎える今でも強く、強くそう願って生きている。それは彼の、「イマジナリー妹」という存在からも容易に想像できるだろう。

「イマジナリー妹」とは、妹が欲しい一心で彼が自身で作り出した空想の妹である。


ゆうか、ゆめ、うたという三姉妹で、下の二人は双子らしい。恐ろしい。もちろん外見や性格、得意不得意から兄である吉野おいなり君のことを何と呼んでいるかまで、事細かに設定がある。本当に恐ろしい。



詳細はこちらを読んで頂きたい。彼が自ら執筆した文章だ。

第一項の「14歳で妹を作った話」は、序盤から彼の秀逸さを体感することが出来て非常に読み応えがあるし、後半では彼の妹たちについても丁寧に紹介してくれている為、「イマジナリー妹」への理解を更に深めることができておすすめだ。なんて恐ろしいんだろう。

・異常なネット弁慶

彼はそう自称している。確かに、彼のSNSやネットへの執着、憧れは奇特だ。

Twitterアカウントは本アカ以外にも複数存在し、サブアカはもちろん様々なbotの運営も行なっている。

何故か本アカでは主に、ツイート一本で勝負をしている。ライブ告知などない。彼の持つ複数のアカウントにはそれぞれ、2000〜40000程度のフォロワーが存在する。


ツイートも度々バズっており、私自身も全くフォローしていないサブアカのタイムラインで見かけることが多々あるのは、流石のネット弁慶様だと言わざるを得ない。

Twitterに関しては140文字以内でよくもまぁこんなに特質した表現ができるものだと心底感心してしまう。

皆は板橋ハウスのYouTubeを見たことがあるだろうか。見たことがあったとして、その概要欄まで目を通しているだろうか。


一度でもいい、概要欄を開いてみて欲しい。ここまで見る視聴者がどれだけいるかもわからないのに、律儀に毎投稿謎の文章を記しているのだ。

短編小説のような詩のような、そんな文章を、腹を抱えて笑ってしまう動画の下にぶら下げているのだ。流石に異質すぎる。


YouTubeだけでなく、TikTokやTwitterアカウントの管理も吉野おいなり君が行っており、様々なコンテンツでその能力を堪能することが出来る。


noteも存在したのでリンクを貼っておく。忙しい中でも彼らしい上質な文章を定期的に執筆し続けられるところも尊敬に値するというもの。本当に凄い。

・独自性と比喩表現

最後に、私が彼の書く文章で特に好きな要素というのを紹介したい。

本当は引用してこの文のここが〜などと、赤ペン先生のように花丸を書きながら語りたいのだが自重する。ニュアンスで伝わってくれたら嬉しい。

タイトルにもある通り、まず第一に強い独自性を感じられるところが好きだ。この言い切り方、この言い回しは吉野おいなり君独特のものだな、唯一無二だなと感じられるところが魅力なのだ。

世の中には数多くの書き手が存在し、それ以上の文章がゴロゴロ転がっているが、そんな中でも彼の文章からは彼らしさをしっかりと見つけることが出来る。


そしてその感想として、書き手に対して「気持ちが悪い」という言葉を褒め言葉として送りたいと感じたのは、生まれて初めてだった。

長い間ネットと密に絡んできた人間だからこそできる表現というものがあるのだ。それは、対人関係で得られるものではない。一人黙々とパソコンと向き合い、声や表情のない世界でどのように生きていくかを考え続けなければ、簡単には身に付かない思考や表現なのである。

私自身も小学生の頃から、夜遅くまでパソコンに張り付いてきた人生だった。掲示板やチャット、ブログやHPなどを通していかに自我を表すか、ユーザーとやりとりをするか、というのをずっと考えて生きてきたし、他ユーザーの主張や表現をずっと見てきたからわかるのだ。そして気付いた。

私の目指す文章はこれだ と。

勿論具体的な文法や単語をマネしたい訳ではない。同じようにネットで育ってきた者として、同じ方向性の文章が書けるようになりたいと思ったのだ。

彼の比喩表現や語彙力の振り幅は広い。
「メガネをかけている女子高生の良さ」を、「アスファルトに咲く花のよう」だと比喩しているツイートがある。彼のTwitterアカウントの固定ツイートになっているので読んでみてほしい。相変わらず恐怖を感じる。

他にも多くの作品を生み出している。恐らくアクティブに活動し多くの経験を積んできた人ではないが、ネットと共に生きていたからこそ得た知識やボキャブラリーなのだろうと考察する。

2年程前から彼のことは知っていたが、実際に私自身が文章を書くということを始めてみて、やっと気付くことが出来た。彼はなんて優れた人間だったのだろうかと。




長くなってしまったが、以上が私の尊敬する書き手とその文体、特徴である。

「気持ちが悪い」というのは一般的に悪口と捉えられてしまうことばかりだろう。しかし私は、私の文章を読んだ人から「気持ち悪い文章だった!」と言われたら嬉しい。なんならそう感じて欲しいと願って書いている。

この場合の「気持ちが悪い」は、「気味が悪い」に近い。というかほぼイコールだ。不安や恐怖を含んだ、不気味で慣れない正体不明なモノに対する気持ちと同じなのだ。

つまり唯一無二、初めての経験、他にない出会い、プライスレス、、、ということになる。実にポジティブ。マネしていいよ。

他にない物を生み出したいし、誰と同じにもなりたくない、″私″ を見てほしいという全ての感情を承認する言葉として、私には「気持ちが悪い」というのが一番しっくりくるのだ。

これを他人も喜ぶとは到底思わないが、僭越ながら吉野さんに関しては以上の意味から「気持ちが悪い」という言葉を送りたい。そして私はこれからも彼の生み出す表現を見聞きして生きていきたいと思う。

ここまで読んでくれた人間がいるとするならばありがとう!是非皆さんも吉野さんの虜になればいいなと思う!!

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