輝きの正体

遠くの空にとても美しい輝く光があった。
彼はいつも、部屋のベランダに立ち夜空のその輝きを無心で見つめていた。雨や曇りでその輝きが見えない日を除いて、必ず輝きを見つめた。

ある夜はビールを片手に、またある夜は手すりに組んだ腕を置き、そこに頭を置いて。
空気が冷たくても、蚊に刺されても、膝が伸び切ってうまく曲げられなくなるまで見つめた。

その輝きは次々と色を変えた。
ガスコンロの火のような青、パプリカのような黄、オーロラのような緑、ポストのような赤、夕焼けのようなオレンジ、そして白。

彼はその輝きを美しいと思い、無心の時間を終えるといつも穏やかに心に力が湧いてくるのを感じていた。
今日も奴はあそこであんなにも堂々と輝いているのだから、自分も明日も生きようと、そんな気持ちを、彼はその輝きから毎日もらっていた。

彼がその輝きを見つけてから3年ほど経ったある日、彼はふと、その輝きの正体を知りたくなった。
ひと月ほどを費やして天体について調べたが、彼が見ている輝きの正体と思われる星は存在していなかった。

貯金を崩して立派な望遠鏡を買った夜、ベランダへ出て輝きを探した。
苦心して望遠鏡の円の中にその輝きを入れ、ピントを合わせた。

円の中にはこちらに背を向けて立つ女がいた。
女が焚き火をしていた。

女は炎の中に洋服や靴を投げ込んだ。投げるたび、オレンジの炎が大きく膨らんだ。
女がペットボトルのようなものを投げ込むと、炎が青く変わった。

青い炎に、女は人間の切断された腕や頭部を投げ込んでいった。


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