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サラダボウルのゲストになって

 ブエノスアイレスに来てから3カ月。現在のアパートに腰を落ち着けて2カ月になり、やっと気軽に入れてリラックスできるカフェを近所に見つけました。予定がない週末はゆっくりそこで過ごそうと思います。
 さて、今日はそんな私を取り巻く人々について書いてみます。初めはこのnoteのタイトルを「メルティングポット」にするつもりでしたが、よく考えて見ると、ここの住民たちは「溶け合って」はいません。皆、それぞれ自分のルーツに誇りを持ち、文化を維持しながらここで暮らしているように見えます。なので「サラダボウル」という表現を使うことにしました。サラダの中身は珍しい材料がいっぱいです。

1同じフロアの隣人 ブラジル人カップル
エレベーターで乗り合わせると、にっこり挨拶してくれる二人。彼がこちらで職を得ているようで、出勤の際は二人で下まで降り、熱い抱擁を交わして「行ってらっしゃい」をする。

2管理人 パラグアイ人
このアパートを建てる時にパラグアイから建設要員として出稼ぎにやってきた。人がやらない仕事も黙々とこなし、それが誰かの目に留まって完成したアパートの管理人として就職。いつもニコニコ、みんなと挨拶を交わしつつ、自分が建てたビルに誇りを持って、隅から隅まできれいにしてくれる。

3スペイン語の先生 コロンビア人
「あ、この先生のスペイン語、聞きやすいな」と思ったら、ブエノスアイレス大学院に在学中のコロンビア人だった(アルゼンチンのスペイン語は独特な発音と文法や語彙がある)。昨年は中国で1年間、英語を教えてきたというだけあって、アジアにも興味津々。とてもフレンドリーにしてくれる。

4スペイン語の先生の彼 日系アメリカ人
もう一人の先生の彼は日系アメリカ人。彼は何度も日本に行ったことがあるそうで、同居している家の中には日本のものがあふれている。先生のお気に入りは「かわいいベイビーのマヨネーズ。あんなおいしいの、初めて食べた」。

5近くのスーパーの主人 中国人
店の名前を「supermercado argenchino」(アルヘンティーノではなく、チーノ)と名付けている。ほぼ毎日行くので仲良くなったが、実はスペイン語があまり通じない。お互い阿吽の呼吸で話している。周りは私が中国語を話していると思っているらしい(私は話せない)。

6行きつけのエンパナーダ屋の店長 セネガル人
エンパナーダは日本で言うとおにぎりにあたる惣菜揚げパン。小腹が空いたら一つ、二つと買い求めてパクリ。中身が色々あるのもおにぎりと一緒。私がいつも行く店の店長はあまり笑わない生真面目な金縁メガネのお兄さん。アジア人が珍しかったのか、何度か行くと「どっから来た?」と聞かれたので、こちらも尋ねてみた。遠くセネガルからやってきたそうだ。

7近所の八百屋の夫婦 インディヘナ(先住民族)
八百屋の夫婦は働き者。何人いるかわからない幼い子どもを店の中で遊ばせながら、交代で店番をする。もしかすると、どこか他の中南米の国からやってきたのかもしれないが、元々南米大陸に住む人たちであることは間違いない。

8仕事の同僚 日系アルゼンチン人かつ日本人
アルゼンチンで生まれ、幼少期に家族で日本に渡り、その後40年近い人生を日本で送り、訳あってまたアルゼンチンで暮らし始めている。「自分の感覚としてはどちらが祖国?」と聞くと、「それは日本かな。赤ちやんの時にここにいたことは何も覚えていないから。でも、ナニジンですか、と質問されると、そのときどきで都合のいい方を答えてる。今の自分にとっては、両方が「帰る場所」っていう感覚になっていて、自分でも面白いと思う」。

いかがでしょうか。私の狭い行動範囲の中でさえ、こんなに多様な人々が生活しています。そんな私もサラダボウルの中で、期間限定のゲストとして迎えてもらうことになりました。
すばらしい彩りにはなれなくとも、ちょっとしたアクセントになれたらいいなと思う毎日です。


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