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『Music Revolution!』

大切な記憶を書き残しておきたくて、気の赴くままに書き留めていたバラバラのピースを編纂し、私の中に留めておいた綾凰華さんの「ある日の光景」をここにつづります。

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「壬生義士伝」「Music Revolution!」
2019年5月31日(金)~7月8日(月) 宝塚大劇場
2019年7月26日(金)~9月1日(日) 東京宝塚劇場

大劇場では宝塚歌劇105周年記念のスタンプラリー(大劇場館内あちこちにあるスタンプを集めるとひと場面が完成するというもの)を開催していて、雪組は前年のショー「GATO BONITO!!」プロローグ総踊りの場面(本記事カバー写真)でした。綾凰華さん(あやなちゃん)もスタンプにおさまっていて(一番左)記念となりました。

プログラムを追いながら書き溜めていた記憶をパズルのようにはめていきます――。


「Music Revolution!」
演出:中村一徳
雪組では登板の多い先生でしたが、2017年夏に星組から組替えした綾さんが中村先生の作品に出演したのは前作のファントムに続き2作目。
「一徳ショー = 銀橋大盤振る舞い+大階段の男役群舞も下級生まで乗せる」ということと、「Michael Jacksonの『BAD』のMVにも出演なさっていたBryant Baldwinさんに振付に入ってもらうことも定番となっている」という大雑把な印象を持っていました。
個人的には、下級生の男役にとって「憧れの大階段男役群舞を初めて勝ち取る」という醍醐味を味わえないのもどうなのだろうかと思っていましたが、やっぱり嬉しいことには変わりないでしょうし、きっと特に下級生ファンは当たると嬉しい先生なのだろうなというイメージでした。
そしてこの公演はあやなちゃんの同期生であるジジ(鳳華はるなさん)の退団公演でもあったので、きっと中村先生なら前作ファントムのフィナーレで退団する下級生の男役さんに組替え前最後となった組長のみとさん(梨花ますみさん)との銀橋渡りを用意していたので、ダンサーのジジにもはなむけを用意してくれているのだろうなということも想像しておりました。

第1場~第4場 プロローグ
音楽:竹内一宏
振付:西川卓
Revolutionの男A 綾凰華

大劇場初日、壬生義士伝で泣いたあとだったので頭が若干痛かったせいもあるかもしれませんが、一度観ただけではすぐに主題歌が覚えられなかったんです。
観劇後の帰り道、メロディーが頭の中で流れる…なんて事ができず、プロローグの曲はあんまりキャッチーじゃないかもなぁなんて思っていました。
それどころか、あやなちゃんの出番がぐんと増えたことで情報量が多くなり、急な事に処理能力が追いつかずどこがどう良かったかなど細かな事まで覚えきれず語れないもどかしさ……。
初日はとにかく、いつ、どこから出てきて、どのポジションに立つかが分からない状態で観るので、観るだけなのにペース配分が出来なくてぐったりしてしまうほどでした。初日観劇後の感想をひとことでまとめると「あやなちゃん、ずっと踊ってる…カノン→MiML→銀橋はとにかく早替え大変そう」というものでした。
とにもかくにも、曲は覚えにくいけどプロローグの衣装がとんでもなく脚が長く見える衣装だったことと、ダンスは腕の長いあやなちゃんはとても映えて好きだと思ったこと、クラシックはどれもよく知った曲ばかりで安心感があるなということ、出番が多くて嬉しいなと言うのが感想でした。
見れば見る程に、あの幕開きはだいもんの歌唱力と音域があってこそのものだなと思いました。あやなちゃんがパフォーマンスこそ向上していくものの、東京公演が始まった頃には目に見えて日に日に痩せていくので心配しながら見守っていました。
トークスペシャルに登壇した彩凪翔さんも仰っていましたが、猛暑の続いた夏だったこともあり、とにかく舞台上は暑くて、生徒さん達も体調管理が大変だったようです。

アドリブも大真面目に全力で取り組む望海さん。父の日にあった大劇場の貸切公演ではスキャットで唐突に「Daddy」と歌い、それを聞いた瞬間に客席は沸きました。綾さんも思わず銀橋で手を広げたままパッと破顔一笑していてとても可愛かったです。

第5場~第6場 革命と独立
真彩さんのドレスは「ジプシー男爵」で蒼乃夕妃さんが着ていたもの。
この場面の野々花ひまりちゃんの弓のようにしなる力強いダンスにくぎ付けだったのと、スペイン帽を被った凪様(彩凪翔さん)がたまらくかっこよかったです。斜め45度の顔の形が良すぎでしたし、衣装も凪様の良さが引き立っているなと思いました。
赤い軍服を着たひとさん(永久輝せあさん)がかっこよすぎて、横に一列に並んで片膝をついて伏せるポーズの時のひとさんのあらゆる角度が凄く好きなシルエットだったので、この場面は毎回あちこち観たくて忙しかったです。


第7場~第8場 Jazz Sensation!
音楽:甲斐正人
振付:Bryant Baldwin
踊る男 綾凰華

ブライアント先生振付の彩風咲奈さんを中心としたJAZZの場面。綾さんはサックス担当で対にはトランペット担当の縣千くん。
彩風さんの衣装は2016年星組公演「ロマンス!」の友情場面で紅ゆずるさんが着ていたものでした。元々エルトン・ジョンの「♪Your Song」の歌詞が書かれていた上に被せるようにペインティングしていて、紅さんのジャケット右側に書かれていた『your's are the sweetest eyes』の『are』の部分が見えてました。
男役のみなさんは茶色のものを着ていて、あやなちゃんは当時自分で着ていた衣装を出してもらったのかな、などと思いながら観ていました。
途中、ペア振りでは朝月希和さんと組んでいましたが、アイコンタクトを取る姿すら頼もしく感じたりもして、朝月さんの娘役力の高さに感嘆しました。
JAZZは楽器を持つ前のダンスが特に好きだったのですが、全身の関節の可動域が広くて、自由で、洒脱で、小気味良くて…回を経るごとに熟すからこそ何度も観たくなるんだなと再確認した場面でもありました。
公演がこなれてくるとあやなちゃんの掛け声が凄くて、嬉しさに思わず笑ってしまうほどでした。


第9場~第13場 Classic World
音楽:竹内一宏
振付:御織ゆみ乃
クラシカの男A 綾凰華

中詰の娘役の衣装、あれだけは許せない。笑(GATO BONITO!!の中詰もなかなかでしたけど…!)
娘役のスカート捌きの上手さは学年に比例しないと思っているのですが、それにしたってあの中途半端なピラピラはあまりにも…扱いにくそうで観ていてきれいじゃなかったのがとても残念でした。

スターさんが順番に舞台に出てくるわくわく感はもちろん好きなのですが、この場面、2番手の咲さん(彩風咲奈さん)があの大きな舞台を一人っきりで空間を埋めることに感心しきってしまいました。得意な振りをつけてもらっている咲さんの無敵感は言葉にしつくせないです。

真彩希帆さんが銀橋で歌う「♪ラ・カンパネラ」の弦楽器のような歌声が大好きでした。その後ろ本舞台で踊る朝美絢さん、ひとさん、あやなちゃん。熱さもキレも最高でした。ここではいつしか投げキスが定番になり、ご本人もきっとテンションが上がりまくった場面だったのだと思います。
あやなちゃんの長い腕と指先でつくるシルエットが大好きなのですが、たぶん自由な振りの部分なのかなと思うのですが、舞台センター付近で片腕を上げてターンする様が本当に優美で。手ではらってから回転スピードをコントロールしているのか、シフォンの裾がゆっくり、ひらりと舞う様が本当に見とれてしまうほどで…あやなちゃんの良さが最大限に引き出された振りで大好きでした。
2019年のブックマークとして発売されたのもこの場面のワンシーンでしたね。

2019年当時はショーと言えば客席降りというくらいに毎公演のように、客席へ降りてくるジェンヌさん達を間近でみられることも生観劇の醍醐味でした。この公演の客席降りの時間は銀橋のスターさんたちも降りてきている組子のみなさんもすごく自由で、いわばボーナスタイムのようでした。
「♪威風堂々」の楽しいアレンジとともに、力強くバシバシとハイタッチしながら1階後方席の立ち位置へ駆け上がっていくのが面白かったです。勝手な印象ですが、5組の中で比較的大人しく見える雪組さんですが、ハイタッチはどの組より一番運動部みたいな力強いハイタッチだったと思います。

大劇場公演でのある日、大好きな娘役のりさちゃん(星南のぞみさん)が来てくれた時には凄く嬉しかったです。りさちゃんは、一人一人の手の位置を確認しながらゆっくり、おっとりハイタッチしてくれました。
客席降りでの男役さん達の釣りは学年ごとに徐々に磨かれていくのだと思うのですが、
当時研4だった男役さんがお隣に来てくださった時には、ハイタッチした後はひたすらにこにこ踊っていたり、別日にすぐ近くに降りていらした研5の男役さんははにかみながらウィンクしてくれ、その後のものすごく照れている(ウィンクしちゃったぁ!といった)様子が可愛らしくて、あやなちゃんも随分お姉さんになったんだなと思いました。

客席降りでの綾さんの立ち位置はセンターブロックの上手側通路1・2列目あたりで、ジジくんは1ブロック客席を挟んだサイドブロックの通路。
大劇場千秋楽の客席降りでは、ジジに向かって大きくゆっくり、真っ直ぐ投げキスした綾さん。ジジも満面の笑みを浮かべてから両手で受け取りギュッと大切そうに胸の中にしまい込むポーズをとっていて、その光景のあまりのあたたかさに目頭が熱くなりました。

とある東京公演の日には、望海さんが機転を効かせて「Ah…Yah!…oh…!!(ア・ヤ・オゥ)」と掛け声をいれてくださり、いつもは銀橋のスターさんたちとわちゃわちゃしているのに、おひとりであやなちゃんのそばまで来て構ってくださっていました。その後に必死でぴょんぴょん跳ねて、ファンの居る一帯へ大きく手を振ってくれたり、手でひさしを作って「見えてるよー」と見上げてくれるあやなちゃんが可愛くて仕方なかったです。客席降りの開放的で、自由で、楽しい空気感はたとえようがないのですが、とにかく幸せが沢山詰まった場面でした。
本舞台への階段を上がる前に「帰るよー」と後方に手を振ったり、親指をたてて合図するあやなちゃんはすっかりお姉さんなんだなぁと思いましたが、客席降りから戻ってくる下級生のめいちゃん(真友月れあさん;めいちゃんの立ち位置は上手サイド通路一番先頭でした。めいちゃんはハイタッチではなく、観客の指先を握手するようにキュッとしてくれていました)を銀橋付け根から本舞台へ走る時に「ガォー」っと可愛くふざけながら追いかけていたり、そこから走って本舞台のセンターへ戻るのですが、到着の瞬間、縣くんと“どっちが高く飛べるか対決”をしたり、お互いに盛大に衝突しにいきながらのハグをしたりと本当に仲の良いふたりがみられる場面でした。

東京公演後半の某日、そばに降りてきたジジくんとゆきのちゃんに見とれていた時に、ふと、あやなちゃんの方へ顔を向けると、待っていたかのように小犬のように笑顔を輝かせ、ウィンクをして手を振ってくれたことがありました。
間近で見るその姿は舞台の上から見せる表情よりも限りなく普段の可愛いあやなちゃんに近く、あまりの可愛さと嬉しさにときめき破顔しながらも、人間の形を保とうと少し冷静に、この先あやなちゃんも上級生になって舞台上でのかっこよさが増して、少しずつ振る舞いもスターさんになっていくのだろうから、こんな幸運な瞬間はもう来ないかもしれないんだよと自分に言い聞かせた瞬間でした。

それでも、銀橋で自由に、可愛い姿をみせながら魅せつづけてくれている上級生スターさん達を観ながら、たまにこんな風に可愛い姿をみせてくれたらいいなぁと思いました。

第14場 Dance Revolution!
音楽:甲斐正人
振付:KAZUMI-BOY
カノンの男

あやなちゃんも大好きなBOY先生振付の、ひとさん中心とした計14人のダンサーばかりの場面。
この場面は先生の当時のブログによると3時間で振り付けが終わったとのこと。ひとさんもNOW ON STAGEでおっしゃっていましたが、「身体の利く子ばかり」の場面で観ていてとても楽しかったです。
楽しい場面が終わり暗転すると銀橋にひとり残るひとさん。ふわりと腕を上げ、歌い始めると空気が澄むような、爽やかな空気が流れてくるようでした。
上手からあやなちゃん。下手からあがたくん。飛び入るみんなが五線譜の上で鳴るひとつひとつの音符のようで、楽しい時間の始まりに心が踊りました。
楽曲はパッヘルベルの「♪カノン」ですが、後打ちアレンジのおかげで、sweet boxの「♪Everything’s gonna be allright」を思い起こしました。
初日から本当に圧巻で、自然に手拍子や拍手が入り、全員でのフェッテでは回ると汗がキラキラと光って綺麗でした。生き生きと楽しそうに、手拍子やフェッテの拍手にも嬉しそうに踊っていて、その熱量と煌めきに「素晴らしい」以外の言葉が思いつきませんでした。音楽が止まった時の劇場の拍手は一段と大きく、達成感あふれる14人の笑顔は眩いほどでした。
(2日目に何も前情報を入れずに一緒に観劇した妹は隣で大号泣していました)
ジジのソロパートでは愛おしそうに、その姿を見つめるあやなちゃん。ただただ嬉しそうにしていることもあれば、目を潤ませて口を結んでいたりすることもあって、きっと組替してきたときにも、特に新公の長だったときにも、支え合ってきたんだろうなと思うと、私自身ジジ君を観てきた年数は決して長くはなかったけれど、いつも感極まっていました。


第15場~第16場 Music is My Life
音楽:青木朝子
振付:KAZUMI-BOY
音命男 綾凰華

望海さんが着ていたのは、「BOLERO」で柚希礼音さんが着ていた衣装、真彩さんは愛加あゆさんが「My Dream TAKARAZUKA」で着ていたものでした。

雪組屈指の娘役ダンサーのあゆみさん(沙月愛奈さん)とペア振りがついていたことがとても嬉しかったです。あゆみさんとは全国ツアーのSUPER VOYAGER!ぶりのペア振りでした。あのダンサー泣かせな衣装(身体の動きが見えにくい衣装)でも凄く美しくて、首や顔のつき方、手指の表情が際立って最高でした。
のちのちにあやなちゃんも語っていますが、「宝塚ならでは」の全員がひとつになる、あたたかい場面でした。大劇場初日に観劇した際に、組の結束力の高まりや、充足感をひしひしと感じ、真っ白な場面なことも相まって、だいもん辞めちゃうのかなぁとぼんやりと思ったのは私だけではないはず…。
専科のかちゃさん(凪七瑠海さん)が同期のだいもんとあゆみさんとニコニコ楽しそうにしているのを観て、なんかあったかくていいなぁ、宝塚ってひとつなんだなぁ、と感じました。そしてあの衣装でもかちゃさんのスーパースタイルは際立ってました。


第17場A フィナーレA(青年の歌)
音楽:鞍富真一
振付:Bryant Baldwin
フィナーレの青年A 綾凰華

綾凰華さんの初銀橋ソロ。
衣装は花組公演「Le Paradis!!」で壮一帆さん・愛音羽麗さん、雪組公演「La Esmeralda」で彩風さん・彩凪翔さん、星組公演「ロマンス!!」で礼真琴さん・七海ひろきさんも着ていたものでした。

エルヴィス・プレスリーの「♪Such a Night」に、ブライアント先生がつけた洒脱で小粋な振りを1人で銀橋で踊らせてもらえることの幸福感と幾分か感じていたであろうプレッシャー。銀橋ソロがあると聞いて迎えた初日は祈るような気持ちで観ていました。その気持ちを言葉にするのは難しいのですが、とにかく幸せで、ありがたくって、ご本人にとってひとつの勝負でもあって、応援する気持ちが殊更に溢れ出てくるような瞬間でした。
公演を経るごとに、少しずつ大きく、ほどけていく感じが愛おしく、見守るような思いでいつも観ていました。

歌詞「月明かりのKISS」でのウィンク&投げキスは気まぐれで毎公演あちこちに投げていたのですが、ある時には、投げキスを遠くに飛ばすように盛大に、そして捌け際のウィンクは“ずっと見ていてくれた君だけに”という感じの、見つめて優しくウィンクしてまた見つめる系でほんの数十秒の間にパターンを変えて攻めてみたりと、人を人の形で無くすることを男役として楽しんでいるようでした。
大劇場公演の千秋楽には歌中から手拍子が入ったことが本当に嬉しかったです。登場の拍手の後、そのまま手拍子になった時には、私自身驚きのあまり思わず客席を見渡してしまいました。手拍子に嬉しそうにしているあやなちゃんをみて、私も嬉し泣きしながら手拍子し、その姿を焼き付けました。
銀橋渡りのあの一人の空間を以前よりずっと埋められるようになっていたこと、そして、狭い銀橋の上でそれを感じさせないくらいに全身自由に小粋に踊る姿は本当に美しかったです。
きっとこうやって少しずつ経験を重ねて上級生になっていくのだなと思った場面でした。

第17場B フィナーレA(ロケット)
音楽:竹内一宏
振付:Bryant Baldwin

衣装は「ME&MY GIRL」94期の初舞台ロケット衣装でした。

センターは潤花ちゃん。ひとり雉羽をつけてセンターで率いる姿はパーンとした華を持った彼女にピッタリの振りでした。

第18場 フィナーレB(淑女・紳士)
音楽:竹内一宏
音楽:鞍富真一
振付:西川卓

真彩さんのドレスは蒼乃夕妃さんが「Misty Station」で、妃海風さんが「One Voice」で着ていたもの。
かちゃさんの衣装は「CAPTAIN NEMO」のフィナーレで彩風さんが着ていたもの。

黄色いドレスの娘役さんたちが可愛らしくて、本領発揮しひらひらと裾を翻す様はとてもきれいでした。あゆみさんの鍛えられた背中の美しいことといったら。そして何を着て何を躍らせても本当に素敵な娘役さんでした。
裾を捌く技術はダンスの技術とは別物だし、鏡に映る姿がよく見える位置で踊ってきた方のほうが必然的に裾にまで気を使えるのだろうと思うのですが、りさちゃんの裾はいつも美しかったです。細い鎖骨に腰高でウエストが細い骨格も素晴らしかったけれど、裾を持つ位置、捌くスピードはもちろん、脚を上げたときのドレスの裾がきれいに二枚重なって弧を描いていて、波打つドレスまでをもきちんとコントロールできていて、ただ踊れるのではなく、娘役の技術をもって踊れるところが大好きでした。シンプルなドレスでりさちゃんの良さが最大限に出せていた場面だったと思います。


第19場 フィナーレC(男役)
音楽:青木朝子
振付:平澤智
紳士 綾凰華

黒燕尾はこの公演の中でも最高にかっこよかったです。
回を経るごとに黒燕尾の後ろ姿がとてつもなくかっこよくなっていたことが本当に嬉しかったです。
あそこが良かった、ここが良かった、と思っていると次に観劇した時には更に最高得点をたたき出すような日々で、あの上級生さんのこんな所が素敵だったな、と思っているとそこにグッと近づけてきて、常に自己ベストを更新してくださるような燕尾でした。

大劇場の千秋楽、大階段に板付き、幕が上がっていく時のゾクゾク感はたまりませんでした。赤く照らされた大階段に居並ぶ黒燕尾の男役たちの後ろ姿と、公演を経て格段と美しく整えられたあやなちゃんの後頭部、そして肩から皺歪みのない背中のライン。腰を落とした時の低さや角度が彩風さんとぴたりと並行に揃えられた時の感動をどんな言葉で表現して良いのかわからないほどでした。
大劇場でもうすごく感動していたのに、東京公演が始まると、あやなちゃんの黒燕尾はまるで違うニュアンス、拍の感じ方動かし方になっていてその進化に思考停止しそうなほどでした。大階段ではねっとりとした色気と、熱い空気を身に纏っているのに、本舞台へ降りてくるスマートな足運びと繊細な指先、上半身の面の見せ方も素敵で、すまし顔でクールを装ってるかのように踊り、リズムインしたところからは重力、遠心力を感じるダンスを楽しそうに、でも、カッコつけるという感じで、とにかく男役を楽しむ姿に終始翻弄されていました。
公演期間中に伸びていく様子をこんなにも見せつけられたのは初めてだったかもしれません。

第20場 フィナーレD(紳士・淑女)
音楽:青木朝子
振付:平澤智
紳士 綾凰華


黒燕尾のあとにもうひと盛り上がりしてくれるのも一徳先生のショーならではだと思います。
曲は引き続き「♪Tico-Tico no Fuba」なのですが、より、原曲の小鳥達の賑々しさを感じるアレンジと、虹色の大階段。ジジはたくさんの娘役さんたちと、上級生男役さんも列になって、銀橋を渡っていくお祭り感というか、フィーバー感というか。一徳ショーを一際感じる場面でした。

朝美さん永久輝さんが銀橋を渡り歌っている時の本舞台センターで踊るあやなちゃん、気持ちの上がっている時だけなのか“「そっと微笑みかけて」”の部分だけ口ずさんでいたのですが、ある時それに加えてその次の“「君のすべて僕のもの」”と唇が動いていたのをみたときには動悸が止まりませんでした。
大劇場と東京それぞれの千秋楽には、「そっと微笑みかけて」でニコッとしてから(君のすべて)“「僕のもの」”だけ口ずさんでいらして、この公演が終わってもこれからもファンの心は君のものだよ…と誓いのようなものを立てました。
黒燕尾最後の人差し指を口元に当てる振りは、「そのまま視線を逸らさないで黙って見ていて」と言われている気持ちになりましたし、最後の最後にあんなふうに手招き(というの?)するのは反則です。

大階段からここまでの流れが秀逸で、それでいてあやなちゃんに似合う振りだらけだったので、平澤先生の振付けたフィナーレの黒燕尾を踊る姿をまた観たい!そう思わずにはいられませんでした。


第21場 フィナーレE(デュエット)
音楽:竹内一宏
振付:御織ゆみ乃

デュエットはいつもだいもんの歌声にうっとりしていて耳福すぎたことによって記憶力がお留守になりがちだったんです。
きぃちゃんは、一人でも立てる、というか共鳴させるタイプの娘役さんではないかなと思っていたのですが、ファントムを経て二人の歌声がきれいに重なるようになったと感じていたのが、この公演のデュエットダンスの時に驚くほどに身のこなしもしっとりとした娘役さんになっていると感じて、そしてこの公演のときに背中がぐんぐん綺麗に変化していて、どこまでも進化していけることに感動しました。そして、一層にだいもんの人間としての包容力みたいなものまでをも感じたデュエットダンスでした。
大階段をかけていってそっと男役さんに寄り添う娘役さんは本当に美しい。。


第22場 パレード
音楽:竹内一宏
振付:御織ゆみ乃
パレードの紳士A 綾凰華

パレードを迎えるときの淋しさは何度経験しても感じるのに、いつも幕がおりるその時には必ず、その観劇の充足感、幸福感とで満たされて、「今日も楽しかった」だけではなく「また自分も頑張ろう」と思えるところが宝塚の良さの一つだと常々感じているのですが、その思いに至らせてくれるのはいつだって最後に咲いている舞台の上のたくさんの眩しい笑顔によるところもあるのだろうなと思っています。

あやなちゃんはひとつのショーの中でのギャップが本当に大きくて、場面ごとに変化するだけではなくて、どんなにかっこつけても最終的に可愛い顔をみせてくれるところがたまらなく好きでした。パレードはさながらいたずらっ子と女神が同居しているようだと感じていました。
パレードで歌いながら大階段を降りてきたあとの袖にはけていくときに客席へ向ける微笑みや、たまに見せる満足そうなふにゃぁっとした笑顔、シャンシャンを振ってきゅるんとして見せる仕草、幕がおりるときの「ひと仕事終えた感」は本当に可愛くて、「ばいばーい」だとか「ありがとー」と手をぶんぶん振りながら口をパクつかせる姿には本編でのときめきに加えて、何度も何度も元気をもらいました。

東京公演の大千穐楽でのあやなちゃんはジジ君の挨拶を聞きながら、大粒の涙をぽろぽろと、顎から滴るほどこぼし、抜け殻のようなお顔をしていました。その抜け殻のお顔のインパクトがあまりに強くて、心配してしまうほどでしたが、最後の幕がおりる時、ふと我に返ったかのようにいつも以上に、笑顔で手を振ってくれるあやなちゃんの強さに心を打たれました。
いつだって、ちゃんと、プロなんですよね。

新公卒業後1作目の大劇場公演。
毎回スチール写真が出ることがこんなに嬉しいことだったのだと思い知りました。髪色はブラウンにしていましたが、リーゼントにすると黒髪に見えてとてもお得(?)な髪色だなと思いました。
公演が始まったころはリーゼントも少し四角くて、まだ“似合う”を探しているような雰囲気だったのが、重ねるごとにだんだんと艶っぽく、似合う形になっていったり、プロローグの前髪は前におろしたり、斜めの前髪を作ったり、前髪をふわっとさせて横をタイトにしてみたりと、他にも全場変えようと試行錯誤して楽しませてもらえたことも嬉しかったです。
ショーの化粧も、星組あるあるなのか公演を経るごとに段々と濃くなっていくのも、雪組でのあやなちゃんのアイデンティティのようで愛おしかったですし、色々と変えてくれるのが楽しみでいつもわくわくしてました。

薄いブルーの目元にピンクのリップだったり、濃い目のブルーに赤のリップを組み合わせてくることが多かったのですが、東京公演の半ば頃に、薄いブルーの目元×赤リップのことがあって、それがものすごくあやなちゃんにも、衣装にも合っていると感じて大好きでした。
お顔のサイズにちょうどいい大きさの綺麗な形の唇にひいた赤リップはすごく色っぽくて素敵でした。(個人的にはこのお化粧に前髪をふわっと作ってサイドをタイトにしているのが特に好きでした!)

公演が始まった頃は違う化粧をしていたはずのひとさんとあやなちゃん。気づけば、ひとさんの地の色はあやなちゃんに近くなってるし、あやなちゃんもリップの色はひとさんと揃えていたり、きっとお化粧前でもわちゃわちゃと楽しく過ごしていたんだろうなと想像してしまいました。

元々永久輝さんを見る為に雪組遠征するくらいには好きだったのですが、上級生のみなさんから弟のように可愛がられるひとこちゃんが、あやなちゃんの前ではお兄ちゃんのように振る舞ってくれるのも、あやなちゃんがひとさんにじゃれるのを見られるのもとても嬉しかったです。
この期間公演以外にも、FNS歌謡祭への出演(収録)やKITTEのトークイベント公開収録、トークスペシャルin東京への登壇など公式のお仕事があって本当に慌ただしい日々でしたが、きっとどの時間も上級生スターさん達のそばで学べる事が沢山あったんだろうなと思います。
誰もが経験できる事では無かったので、ファンとしても本当に幸せな日々でしたし、こういったお仕事を通して、咲さんや凪さま、ひとさんと一緒に居るところを見られてとても嬉しかったです。
(上記についてはまた別途纏めたいな)

別記事でファンサについて言及しましたが、このMusic Revolutionというショーは新公を卒業し、下級生からひとりのスターさんへと移行していく綾さんの「ファンサらしいファンサ」が詰め込まれた公演だったとも思います。(このあとの全ツのそれも相当なものでした)
どちらもその恩恵を大いにあずかり、寿命が縮まるような思いをさせていただきました。すべてのそれらの発生源は綾凰華さんの楽しい気持ちがそうさせていたのかな思うくらいに、ポジティブなエネルギーがそのまま伝染してくるような公演でした。

脇目も振らずに、ただただ一直線に走り抜けた暑い熱い夏の公演でした。

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