ノスタルジックドリームガール

感想:ノスタルジックドリームガール


トーマ、といったら2011年から2013年初頭、いわゆる”ボカロ全盛期”で活躍した一人であり、そのあまりに独特な曲調、世界表現でもって多くの人の心にその名を刻みつけた方だ。


一見するとそれ以前からの流行である高速VOCAROCKに聴こえる点、歌詞はまさに同じ時代で活躍したじんさん、kemuさんで一時期大々的なブームとなった”物語音楽”、「ストーリーを歌詞に乗せて複数の楽曲をリンクさせ、物語を進行する」という手法に近い歌詞であるという点から没個性的な評価をされることがままあるが、本質はそうではない。

ストーリーを感じさせる歌詞でそれぞれの曲が少しずつ紐付いた形ではあるが、それは同氏の描いた架空の街の全体や一部を切り取ったものを並べた横の繋がりで、物語的な縦の繋がりを持ってはいない。

また曲調はテンポだけを見ればいかにも早口な高速VOCAROCKだが、BPM変化を厭わない多彩なリズム変化、パートが変わるごとに曲が変わったのかと思わせるほどの変化を見せる斬新な曲展開。そして一度聴いたら忘れられない非常にクセの強い調声。どれをとっても文句なしに「個性的」である。

その証拠に、幻想的な曲調や大幅な変拍子、BPM変化が見られる曲には「トーマっぽい」というコメントがつくことすらある。そのように簡単に連想させるほどにリスナーに強く印象づける曲を多数輩出したということだ。




勢いこんで作曲者の話から始めてしまった、曲の話に入ろう。


【初音ミク】ノスタルジックドリームガール【オリジナル曲PV】

(ヘッダー画像はこちらの動画のスクリーンショットになります)


トーマさんを知ってる人でも、もしかしたらこの曲がトーマさんの作品だと知らなかった人がいるのではないだろうか。というのもトーマさんが公開している自身の曲を収めたマイリストにこの曲が入っていないからだ。この曲だけはそれとは別のマイリストに保管されているのだ。おそらくこれがコラボ作品と銘打っているため他とは区別しているのだろう。


そう、これはコラボ作品なのである。投稿者コメントには『詞,監修 / 染香』とある。

つまり歌詞や歌詞における世界の確立を担当しているのがトーマさんではないということだ。それによってこの作品は同氏の他曲とはひと味違う仕上がりとなっている。

この違いの最大の要因は歌詞であることは間違いないのだが、いかんせん私は歌詞をあまり注意深く聴かない人なので、こちらの歌詞も味わい深くて好きではあるけれど分析的に語るということは私にはできそうにない。



しかし、歌詞の担当が変わることでもうひとつ変化がある。歌のメロディだ。


トーマさんが詞と曲どちらを先に作るのかはわからないが、曲先ならメロディに対する歌詞の詰め方が、詞先ならそもそものメロディの進行から変わってくるだろうと想像できる。

Aメロやラストなど、多くの場面で見られる伸び伸びとした歌声などは従来のトーマ曲のイメージとは少し外れたメロディ使いだ。

この新しい要素がいつもと変わらない調教や曲調を一気に華やかにする。普段通りの変則的なリズムや世界観に浸れる耽美な音使いはトーマさんとしての色をより濃くし、安心感と興奮を与えてくれる。アクの強い調声はゆったりした歌声という新たな一面を見せることで魅力をより引き立て、ここからさらにどんな声を聴かせてくれるのかという期待が膨らむ。こういった相乗効果は普段と違う、コラボ作品だからこその強みと言える。



氏の特徴としてしばしば挙げられる「世界観」。それをコラボという形で他の方に委ねてなお輝きは増すばかりだ。歌詞だけではなく、トーマさんの曲単体としての魅力がこれ以上ないほどに証明された瞬間である。このコラボでの次の作品を見たくなる、そんな一作だった。好きです



・・・こういったブログ的なもので長文を書くのは初めてだし、せっかくの初投稿ということで精一杯カッコつけてしまったけど、次回からはもう少し肩肘張らずに書きたいです。


#vocanote #感想 #VOCALOID

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