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その瘡蓋を剥がさずにはいられない

そこに小さな瘡蓋がある
すっかり固まった血
はがれそうかな
もしはがしたら
また血が出るだろうか
この小さな傷は
どこでどうして
そこに生まれたのか
未来に受けた傷
過去に受ける傷
今からつける傷
治ったはずの傷
あなたがつけた傷
わたしがつける傷
生まれつきの傷
命を奪う傷
傷のない世界は孤独
傷でできた世界は賑い
傷を恐れるあなたは壁になり
傷を恐れない私は乞食のよう
この瘡蓋をはがしてみよう
もしかしたら
血が出るかもしれない
もしかしたら
治っているかもしれない
放っておけば
そのうち勝手にはがれるが
放っておけないわたしがいる
この瘡蓋をはがしたい
治りかけの傷を
えぐり返すことになるだろうか
あなたはきっとやめろと言う
あなたはきっとやめろと言うのだ
あなたは無垢の壁
わたしは壁際の乞食
いつからあるのか
はがれない瘡蓋に覆われた
わたしの弱い脛
この瘡蓋をはがしたい

Copyright : memento morix

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