暮らしには「たぬき」が足りなかったのかもしれない
どん
どどどん
買いました。白いたぬきを。
どう?きみの生活に、たぬきは足りてる?
わたしは成ったよ。たぬきを持っている側の人間に。
たぬきがいた生活
わたしは特殊な環境で過ごした。
そう、日常にたぬきがいる生活だ。
両親は熊本でちいさな居酒屋を営んでいた。
超地域密着型な店で、店名はたぬきにやや縁のあるものだった。
父が着ていたTシャツ(仕事着)もバックプリントにたぬき。使っていたマグカップもたぬきモチーフ。店の入り口には、みんなが一度は居酒屋の店先で見たことがあるような"あの"たぬきのデカい置物。傘かぶって、酒瓶持ったあれ。
そういえば店で出していた徳利とお猪口もたぬきモチーフだった。
そうやって生活のいたるところに「てへら」(てへっとした顔でもあり、へらっとした顔でもある)と気の抜ける笑みを浮かべたたぬきがいたのだ。
たぬきが足りない生活
就職を機に東京へ。
ちなみに店はそれから5年ほど経った頃に閉店した。
きょうだいはわたし含め3人いるが両親は誰にも後継を強制しなかった。
東京の自宅はもちろん、実家からもたぬきの気配が年々薄まっていき、そして今年、父を亡くした。とにかく物持ちのいい父だったので、父の部屋からは店をやっていた時代から愛用していたたぬきモチーフのマグカップや小さなたぬきの置物が。
どれかひとつ「想い出たぬき」として東京に連れて帰ろうかなぁと考えてみたけれど、このたぬきたちもやっぱり住み慣れた我が家に居たいかなと思い。実家のリビングや仏壇でまた「てへら」とたぬきたちは笑ってる。
そうなってくるとわたしはわたしで「マイたぬき」をやっぱり家に1体はお迎えしたくなったのだ。お守りというか友だちというか。そんなときにSNSで出会ったのが、この子だったのだ。
紹介します、わたしの「マイたぬき」
わたしがお迎えしたのは、さきほど貼ったポストにも記載のある「お餅ホワイト」ちゃん。
「てへら」とうすら笑みを浮かべたおなじみのたぬき顔ではなく、このキョトン・ぼんやり顔がもうかわいくって。手のりサイズでどこにでも飾れるし、どこに飾っても存在感がある。
わたしは知らなかったが、どうやらソフビがガチャになるほど人気の子らしい。あらためて紹介させてもらうと、こちらは「ぼんやり子だぬき」というヒダカナオトさんの作品だ。マイたぬきとしてお迎えするなら絶対この子だと思った。
見て。このもちゃっとしたお腹と足を。
夢と希望がたっぷり詰まったぽってぽてのお腹は見るたびに愛おしい。
何がいいって、届く段ボールもいい。
誰がどう見ても「たぬきの置物を買ったんだ」「ぼんやり子だぬきを買ったんだ」とわかる段ボールで届く。わたしが配送業者なら「この人はたぬきの置物を買うほど心にゆとりのある人なんだ」と思わずにはいられない。
リモートワーク。仕事で「これはわたしの能力じゃ無理っすよ」と嘆きたくなるタスクが降りかかったとき。ちらっと子だぬきを見るとこの顔である。
まるい腹を堂々と見せながらこの表情。
「んー……なんかもう、とりあえず気楽に進めてみるか」とふっと肩の力が抜けるのだ。お迎えして正解すぎる。やっぱりわたしは生活にたぬきが足りなかったのだ。
あらためて、
わたしは成ったよ。たぬきを持っている側の人間に。
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