【中編】詭弁の正体。

こんにちは、もすです。

今回は中編です。



A.論点のすり替え


---③人身攻撃(レッテル貼りも含む)


前回に引き続き、論点のすり替えを解説していく。(前回は①相殺法、②トーンポリシングを解説)

人身攻撃は、ある論証や事実の主張に対して、その主張自体に具体的に反論するのではなく、主張した人の個性や信念を攻撃すること、またそのような論法。論点をすりかえる作用をもたらす。
wikipedia

すこし、トーンポリシングに似ているだろう。トーンポリシングは、人身攻撃を一部含む概念なので当然ではあるが、違いを説明する。

↓は「グレアムの反論のヒエラルキー」と言って、反論の質を7つの段階に分けたものである。これを反論レベル①主眼論破、レベル⑦罵倒だとするならば、議論する価値がある反論はレベル①〜③までである。

レベル⑤の論調批判がいわゆるトーンポリシングであり、レベル⑥⑦が人身攻撃であると言える。(ちなみにストローマン論法は④に当たる。後述するが、④故に厄介なのである。)

グレアムの反論のヒエラルキー
2008年発表されたもので結構新しい


余談はさておき、人身攻撃の例を挙げていく。
ちなみに、人身攻撃は
①生活や生き方を攻撃
②性格や性質を攻撃
③レッテル貼りをして攻撃 

の大きく3つに分けることができる。それぞれに分類して例を挙げていく。

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①生活や生き方を攻撃
「育ちが悪くてわからないですよね」
「貧乏人(金持ち)には分からないでしょうね」
「親の顔が見てみたい」
「そんなんだから友達いないんだよ」

②性格や性質を攻撃
「そんなことを言うなんて最低だ」(感情論)
「そんなこともわからないなんて、バカか?」
「話が通じないからお話にならない。」

③レッテル貼りをして攻撃
「これだから男性(女性)は。」
「あなたのそういうところ日本人って感じがして嫌い」
「あなたはB型だから性格悪い」
「そんなことを言うなんて人間失格だ。卑怯者だ。右翼だ。左翼だ。不適合者だ。犯罪者予備軍だ。など」
「友達いなさそう」
「早口で喋ってそう」
「口臭そう」
「アニメアイコンがなんか言ってる」

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とまあこんな感じである。誰しもどれか1つは言われたことがあるのではないだろうか?

議論とは、主張の質を考える時は発言者の性格や経歴は主張とは切り離して考えるべきである。それが議論の基本だ。
誰が言うか、ではなく何を言うかなのである。

それで言うと、人身攻撃は論点をすり替えて議論を進めないだけでなく、相手の感情も害するという最悪の手法と言える。

対処法はやはり、人身攻撃という論点のすり替えにに気づき指摘するしかないだろう。


---④ストローマン論法(言ってないことをでっち上げる)

論点のすり替えの中で、個人的に1番正体に気付きづらく難しいものがこのストローマン論法(藁人形論法)であるが、多く使われているのもこれである。ひろゆきが議論番組で使っているのもよく目にする。

簡単に説明すると、
相手が主張していないことを自分に都合の良いように表現し直して(藁人形を作り)、さも相手がそう言ったかのように取り上げて否定する(釘を刺す)という事である。拡大解釈や曲解と表現しても良い。

藁人形。
釘を刺すことで恨みがある人間に呪いをかけることができる代物。
恨みのある人に藁人形を送りつけることは脅迫罪にあたるらしい。


わかりづらいと思うので例を挙げていく。

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A「子供が道路で遊ぶのは危険だからやめた方がいい」
B「子供は外で遊ばせず家に閉じ込めておけというのか!酷い意見だ!」


A「今の資本主義のままだと格差が広がるばかりだ。制度を見直す必要がある。」
B「あなたは共産主義者ということか?日本を共産主義にすることは反対だ。」


ひろゆきととろサーモン久保田のディベート番組での一説。議題は「出演者が不祥事を犯したとき、作品そのものを止めるべきかどうか」
久保田「作品に罪はないし、他の出演者にも金銭的迷惑がかかるから止めないべきだ」
ひろゆき「殺人をした人が出たら映画の興行収入が良くなるけど、そうやって金儲けしてもいいんですか?」

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①と②は簡単だろう。
①は「道路で遊ぶな」と言っているだけで「外で遊ばせるな」とは言っていないし、②は「資本主義の制度を見直すべきだ」と言っているだけで「共産主義にするべきだ」などとは言っていない。
勝手な藁人形を作られて、それを主張している風に見せられ釘を打たれているのだ。

③も、気づきづらいかもしれないがまさにその手法である。
久保田は殺人などの罪については一切言及しておらず、主張としては「他の出演者に被害が出てしまう」というものなのに、
ひろゆきの主張では「犯罪を利用してお金を儲ける」という話にすり替わっているのである。

このストローマン論法の何が問題かと言うと、賢い人間には全く通用しないが、リテラシーのないバカな人間はアレをみて「論破するひろゆきカッケェー!」みたいに思ってしまうのが問題なのである。

あんなのは論破でもなんでもない、ましてや議論でもない。ただの論点のすり替えなのである。

このストローマン論法は、グレアムの反論のヒエラルキーで言うところの④単純否定に当てはまるだろう。
中身は全く伴ってないが、一見論理の体は成しているように見える。だからこそ、気づきづらく厄介なのである。


まとめ

今回は論点のすり替え(③人身攻撃、④ストローマン論法について解説した。

「A.論点のすり替え」シリーズ①相殺法 ②トーンポリシング ③人身攻撃 ④ストローマン論法についてはわかっていただけたかと思う。

詭弁と言うのは、こちらがその正体に気付かないことには本当に言い負かされて終わるので、ぜひ正体に気づいてほしい。

次回は、
「B.感情論」
「C.ポジショントーク」
「D.チェリーピッキング」
「E.二元論」
「F.難しい言葉を使う」
「G.逆を用いた詭弁(後件肯定の虚偽 )」
「H.裏を用いた詭弁(前件否定の虚偽)」
「I.主語がでかい(早まった一般化)」
「K.ダブルスタンダード」
を解説します。

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