印象残欠

 比較的近代的な家に住んでいる。

 そこで私は男を見送ったり迎えたりするのだが、その男はそういうとき、私に舌をねじこみこそしないものの、深いくちづけをするのが常だった。親愛の表現だという。そうなのだろうと特に私も疑問に思ってはいない。共住みの女はそれを咎めることもなく見つめている。男の印象も女の印象もわたしからはぼやけているが、どのみちとても年上だとは容易に知れた。

 比較的近代的な家に住んでいる。

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