印象残欠

 夢の中は夜であることが常なのだが、その割に夢のわたしはいろいろなところに出かけている。

 百貨店は地上に大きなコロッセオ風の広場を持ち、上階にはマネキンがずらりときらびやかな姿を見せている。顔のないタイプのマネキンはその用途に反してずらりと力なくしんなりと立っており、生気のあるポーズを取っているものはなにひとつとしてなかった。
 そしてこの百貨店、夢の終わりに必ず火事が出る。そのとき決まってわたしはこの上階にいて、燃え落ちてフィルムのように歪むマネキンの中を逃げ惑うのだ。最終的に煙に巻かれて目が覚める。

 街は桜の大木を奥に持ち、放射状に道が並ぶ。大病院がロビーの灯りを暗く落として路地の脇に建っていて、わたしは用向きもないのにそこに足を踏み入れるのだ。ロビーの中には脱ぎ散らかされたジャージやら手術着やらが散乱していて、状況を不可解なものにしている。桜へたどり着ければそこから帰れるが、病院に行くと戻ってこられない。

 図書館はいつのまにかそこにいる。合わせ鏡なのか実際に続いているのか判然としないいくつもの長い回廊をわたると、なぜか超能力大戦をするはめになる。

 遊園地は始まった時点で帰り際だ。高速を通って帰る際になぜだか羽が生える。そしてそこで夢が終わる。

残るは水没と崖、そしてもうひとつの遊園地。こちらは常に昼の様相だが、後日に譲る。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?