筆者は20歳のときに「赤い便」を出した。最初は単なる下痢だと思い込もうとしたが、次第に症状はひどくなった。トイレの回数は数え切れず、そのたびに血の下痢。漏らしてしまって失感情症状態にもなる。なんと26キロも体重が減ったという。
病名は「潰瘍性大腸炎」。国が指定している難病だ。とはいえ、人によって症状の出方はかなり違いがあり、服薬しながら社会生活を送れている人もいる。筆者の場合はかなり重いほうで、絶食をともなう入院生活を13年間繰り返したあと、手術を受けてひとまずの寛解に至る。
現実世界との折り合いが難しくなり、著者は引きこもる。なかなか治らない難病の原因を、周囲からは心のせいにされることもあった。
しかし、手術を受けて強い薬の使用量が減り、感染症の心配が少なくなってくると潔癖症も治っていった。また、同じ病気の人の症状が重くなったとき、みるみる性格が変わっていくのを目の当たりにしたという。
ちなみに著者は現在、闘病生活で出合って救いとなったカフカの研究者として活躍している。この本の奥付にはこのように書かれている。「漏らすせつなさを描いた文学ばかりを集めた、『排泄文学』というアンソロジーをいつか出せたらと思っています。」
こころに残った一文