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満州からの引き揚げ実現の内幕「どこにもない国」(NHKドラマ)

近所の親しくしている老夫婦は、満州からの引き揚げ者だ。今、85歳くらいだったかな。ずいぶん貧しくて苦労したって話を聞いたことがある。ただ、申し訳ないくらい満州については無知だった。満州がどこにあるのかも「引き揚げ」という言葉の意味すら分からずに話を聞いていた。

NHKオンデマンドで「どこにもない国」を見て初めて、満州からの引き揚げがどれほど大きなことだったのかを知った。こういう知識をもとに、また話が聞けるというのは尊いことだ。

ただの市民が、これだけ命をかけて同胞を救おうとするってのはすごい。

「どこにもない国」(あらすじ)

終戦後、満州はソ連に占領された。戦争が終わっているにも関わらずソ連軍は、満州にいた日本人を虐げ、略奪・暴行に明け暮れていた。満州の実情は本国に伝わっておらず、このままだと150万人の日本人は満州に取り残されたまま死んでゆく運命だった。命がけで満州を脱出し、日本に渡航し、GHQとの交渉、政府との交渉し、世論を動かし、ついには満州からの引き揚げを成功させた3人の男(丸山邦雄、新甫八朗、武蔵正道)の話だ。

ほぼ実話をもとにして作られたドラマだ。

満州からの引き揚げの経緯

丸山邦雄(内野聖陽)は満州製鉄の一社員に過ぎなかったが、彼は満州に取り残された日本人を救うために、満州を脱出して日本に行くことを決意する。誰かがやらねばらぬ。やがて、彼は資金力を持つ新甫八朗(原田泰造)や、中国語の達者な若者、武蔵正道(満島真之介)と共に計画を断行することになる。

当時の満州~中国は、ソ連侵攻だけではなく、中国共産党と国民党の内戦もあり非常に治安が悪かった。彼らは国民党(バックはアメリカ)の支援を受けつつ、満州を脱出するが、途中で何度も共産党スパイに間違えられ処刑される寸前まで行く。まさに命がけの脱出だったのだ。

日本に着いてからも、一市民が満州の引き揚げを実現させるのは簡単ではなかった。新聞社に訴え、GHQに訴え、当時はまだ外務大臣だった吉田茂に訴え出た。やがて吉田の進言もあり、全国で講演会を開き満州に取り残されている家族たちの支持を得て世論を盛り上げた。

マッカーサーへ40分間、直訴し続けて、引揚船の派遣を約束させることにも成功する。以前、NHKオンデマンドで視聴した吉田茂のドラマなどをみてもマッカーサーと渡り合うのは当時の総理大臣でもゆるくなかったことを考えると、丸山邦雄らの交渉がどれほど勇気あるものだったかが分かる。豪傑だった吉田茂をも正面から怒鳴りつける丸山邦雄は、立場はともかく人間力のある人だったようだ。

もっとも、この時期アメリカは、同じ連合国軍とはいえソ連の影響力をできるだけ少なくしたいと考えていたようなので、満州からの引き揚げを訴えて世論を動かした彼らの存在は好都合だったようだ。しかし、彼らの命がけの脱出・訴えがなければ、満州に残された日本人の窮状を気づく人はいなかったのだ。まさに偉業と言えるだろう。

もっとも、丸山邦雄らは、日本への引き揚げ後、自分たちの偉業を声高に語ることはなかったという。これも覚えておくべき日本史ではないかと思う。そもそも、なぜ日本が満州国を作ったのかとか、その経緯とか知らないことばかりだ。近所の老夫婦に改めて、話を聞いてみたい。

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大人のADHDグレーゾーンの片隅でひっそりと生活しています。メンタルを強くするために、睡眠至上主義・糖質制限プロテイン生活で生きています。プチkindle作家です(出品一覧:https://amzn.to/3oOl8tq