フィールドワーク

初めての公園で長男は見知らぬ親子にロックオン。何やら会話しているのを遠巻きに見ていたが、やがてそのまま見えなくなってしまった。様子を見に行くと、それはそれは魅力的なフィールドワークの現場。男の子がぷっくりとして透き通るような薄緑のいもむしを大事そうに葉っぱに包み見せてくれる。山の麓の公園で、崩れ防止でコンクリートのあみあみで舗装された山の斜面の隙間にいろんな生物が生きている。

「そのへんアシナガバチいるからね、気をつけて」静かな声で、その子のお父さんが注意をくれた。虫取り網を持ち軽装のリュックに虫かご斜めがけ。こなれている。気をつけてと言った次の瞬間にはまた小さないもむしや毛虫を見つける。"虫眼"を持つお父さんだった。わたしも虫眼を持っているほうだと自負してたけどかないっこないレベル。かっこいい。子供のほうはお父さんが見つけて危険でないとわかった虫を手にとり観察する。彼はこの素敵なフィールドワークをどれほど経験しているのだろう。

お父さんがずっと不自然な格好で持っている虫取り網にはトカゲが入っていた。しっぽは彼らに見つかったときに切り落としたらしい。20センチほどありそうなトカゲを虫取り網から取り出して「食べるかな」と地面のミミズに近づけた。みみずは半分干からびていたがまだ生きていて危険を察知して身体の一部を切り離した(知らなかったみみずのこの機能)。餌を食べるかいというときのトカゲの持ち方もお父さん非常にこなれている。今日は連れて帰らないというこのトカゲだが、どのように捕食するのだろう、生き餌じゃなきゃダメなのか、尻尾はいつ元どおりになるのだろう、いつどのように寝るのか、と気になることがいくつも出てきた。

養老孟司さんと宮崎駿さんの対談『虫眼とアニ眼』をもう何度めかで読んでいたところだった。「人間に関心が向きすぎている...」というあたりが気になっていたが、この日ほんとうにそうですねと深く頷いた。

すてきなフィールドワークをありがとう。



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