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フランス流 キノコ狩り

食の秋というのは、日本もフランスも共通していると思うが、その中でもキノコ狩りは栗拾いと並んでフランスでは最もポピュラーな楽しみだと思う。
日本でももちろんキノコ狩りができるが、ポピュラーなのはリンゴやブドウなどの果物狩りなのではないだろうか。

フランスの、「法令」では、公有地の森林におけるキノコ狩りは、個人消費に限り一家族5kgまでの採取が許されている。
もちろん見つからなければそれ以上採っても問題無いので、そういう人もいるだろうし、むしろそういう人ばかりな気がしないでもない。

そして多くのフランス人が狙うのは、なんと言っても「セップ茸」である。
イタリア語ではポルチーニと言われるので、こっちの名前で聞いたことがある人も多いのではないだろうか。
日本語ではヤマドリダケと呼ばれるらしい。マツタケのように香りの良い高級キノコである。

なぜこのキノコを狙うのか。理由は二つあると思う。
1、上記の通り高級キノコだから。最安なものでも、25€=約3000円/kgくらいするキノコなので、採れると本当にうれしい。
2、セップに似たキノコがあまり無いため、採集ミスが起きにくい。→キノコの食中毒リスクが低い。

ということで、私もフランス人らしいことをしてみるべく、夫を誘って出かけてみた。
とりあえず近場の森にナビをセットし、朝早く出発。

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森に到着したが、私有地なのか公有地なのかの表示がなく…戸惑いつつも中に入ってみた。
入って2分、セップ発見…!マジで!?こんな簡単に見つかるの!?と思い、写真を撮ろうとスマホを取り出したら向こうから四駆の車が…。

夫と二人で嫌な予感がする。

思っていた通り、私たちの横で止まって、「ここは私有地だから出てってくれよー。」と車から降りてきたおっちゃんに言われてしまった…。
看板が立ってなかったから知りませんでしたーとか、言い訳してみるも(実際そうだったし)、
「いやいや、ちゃんと書いてあるだろ!それにここは俺が狩猟用に借りている森だから、誤射しようものなら俺の責任なんだよ。」と言われてしまい、
私たちは狩猟よりキノコに興味があるんですよー、と言うと、「ここはキノコ狩りの土地じゃないよ!さぁ!」とピシャリ。

おっちゃんはそのまま森を出てどっかに行ってしまったけど、私有地、しかも狩猟用と聞いては仕方がない…。
わりと穏やかに注意してくれたし、こっそり居残って怒りを買いたくもないし、何より撃たれたくない(笑)
ので、セップを泣く泣く残して退散することに。

とはいえ、まだ朝9時前。このまま自宅に帰るのも悔しいので、リヨンを含む地域圏では有名なセップの産地に行くことに。
車を40分ほど走らせて到着。
ここは公有地なのでとりあえず撃たれる心配はない(笑)

森の奥へと歩みを進める。

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正直、こんな中でキノコを探すのは、ウォー●ーを探すより難しい。
栗とどんぐりの木を目安に、、、というが、そればっかりなので何が目安なのか最早わからない。
棒を拾ってガサガサしつつ、読んで字のごとく「目を皿のようにして」探す。

ふと顔を上げると、山道脇にセップ発見!
「あった!!あったーー!!」と思わず叫んでしまい、夫に笑われた…。

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ナメクジがお食事していたが、それをポイっと払って採集。状態が新しかったので、香りが良い。
単純にうれしい。人生初のセップ狩りである。
童心に帰ったような新鮮な嬉しさを感じながら、探索再開。

…が今度は探せど探せど見つからない。
見つかるのはほとんどがAmanite(アマニット)と呼ばれる「テングタケ」ばかり…。猛毒キノコである。
誰も採取しないから残る上に、赤いので目立つ。

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それでも探し続けるとこんなキノコに出会った。

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仏語でGirolle(ジロール)と呼ばれる、アンズタケか…?と思ったが、確信が全く持てないので放置。

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こういう群生するような株で生えるキノコにも出会った。
美味しそうだが…やはりやめておく。

他にも下記のようなキノコを見つけた

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野生動物にでも食べられたような跡がある。
ちなみにどのキノコも採取しなかった。中毒が怖いし。。。

フランスは伝統的に、採取したキノコを薬局に持っていくと、薬剤師が食べれるかどうかを判断してくれる。
日本人からすると不思議なシステムである。
というのも、薬剤師の教育課程では菌類学も勉強するため、ある程度キノコに関する知識があるらしい。
ただ、キノコの判別にかける時間は減らされつつあり、近年では「その地域の猛毒のキノコだけを識別する」ことがほとんどだそうだ。

私はその後セップを見つけられることは無かったが、夫が2つ見つけてくれた。
悔しい…が、うれしい。

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夕飯、自家栽培のパセリと一緒にソテーしてクリームパスタにした。
茎の部分はエリンギのような歯ごたえがあり、傘部分はすこしとろみがある。
美味しい。。。ありがとうフランス。

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ちなみにセップのようなキノコには、古いボルドーやピノノワールのワインを合わせるのが定番だが、気が向かなかったのとクリームソースだったので、シードル(リンゴの発泡酒)でいただいた。
これはこれでアリだと思った。

「来週末、もう一回キノコ狩りに行こう!」と夫と話していた矢先、2回目の全仏ロックダウンが決まり、行けずじまいのまま現在に至る。

次のキノコ狩りは1年後だ。
待ってろよ、セップ!!!

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