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レポート:東京ゲームショウ2019でのVTuberに関する講演・アメリカ事情、新しい技術など

「東京ゲームショウ2019」が開催されましたが、それに併設されたTGSフォーラムの、「VTuber、バーチャルインフルエンサー、デジタルヒューマンの最前線とゲーム業界への展開」というセッションを聴講しました。興味深い内容だったので、自分なりにピックアップしてまとめてみます。

講演は英語で行われていて、同時通訳はあったのですが聞きづらく、内容に間違いがあったらすみません。責は私にあります。

ディープフェイクの光と影

セッションのメインは、Signia Venture Partnersのサニー・ディロン氏の講演でした。バーチャル関係への投資をされているそうです。

最初は「ディープフェイク」の話題からでした。「ディープフェイクって聞いたことありますか?」と会場に聞いて、私は手を上げましたが、数人だったようです。私はこの記事で知ったのですが。

昔から、アダルトな画像に別人の顔を貼るようなコラージューはありましたが、今はディープラーニング技術を使うことで、アダルト動画に別人の顔を自然に当てはめて、表情なども自然に作ることができるという話です。それもツールを使って簡単にできるようです。

今回の講演ではこの例はありませんでしたが(さすがに避けてたかも)、ディープフェイクの悪用例として、政治家の姿を使って違うことを喋らせ、フェイクニュースを作るなどを挙げていました。

だから「気味が悪い技術」と言われがちですが、技術としては良いもので、良い活用例もあります。例えばこれは、右のおじいさんがキレキレのダンスを踊るというものですが、実際はそんなに踊れません。おじいさんは自分なりの踊りをして、それをAIに見せます。AIはそこから「この動きならこの映像」と学習して、プロのダンサーの動きをあてはめて、おじいさんにその動きさせることができるのです。

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この技術の応用として、「ボットチャット」が考えられます。商品について質問すると、スタッフが答えてくれるようなものですね。テキストチャットのものは既にありますが、リアルな人(女優さんとか)が自然に答えてくれるものが可能になるでしょう。

また、「ゲーム内のアバターを自分にする」という応用もあるし、ゲームの中に有名人を出すこともできます。実際に「フォートナイト」ではそれを使ったライブが行われていて、例えばこの、”DJマシュメロ”のライブは1000万人が見たということが話題になっていました。

欧米ではフォートナイトはものすごく流行っていて、大人から子供までみんなやってるみたいです。本来はオンラインの対戦ゲームですが、ゲーム内でアバターチャットもできるので、バーチャルなコミュニティスペースとして、ある種のデファクトになっています。これだけ人が集まっていれば、それはもうビジネスチャンスがあるわけです。

講演では、名前を聞き逃しましたが女性アーティストの例を紹介していました。アーティストがモーションキャプチャスーツでパフォーマンスして、それがリアルタイムにフォートナイトのゲーム内に反映されます。

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モーションキャプチャーとホログラムの可能性

このモーションキャプチャ技術とホログラム技術を組み合わせると、さらに可能性があるという話をしていました。まず下の写真は韓国のアイドルのライブで、アイドルとゲームのキャラクタが一緒に踊っています。ただしこれは画面で合成しているので、テレビの画面上でしか見えません。

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現実世界に投影する方法の一つとして、HYPERVSNというシステムが紹介されていました。HYPERVSNの原理は、プロペラ的なものがあって、その回転に同期して光を当てます。すると、空間に光が浮き上がって見えます。

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これをさらに、マトリックス状に並べます。プロペラが隣同士で干渉しそうですが、回転が同期しているので大丈夫です。

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これを使うと、このように、何もない(ように見える)空間に映像を投影することができます。動画は公式サイトより。

ここから私の意見ですが、確かにこれは、うまいやり方です。日本でも、初音ミクやVTuberのライブで半透過スクリーン(ARスクリーン)が使われますが、あくまで「半」透過なので、背面の映像を明るくすると前面の映像が見えなくなるし、逆もあります。以前にARスクリーンについて記事を書きましたが、妥協の産物だとは言えます。

HYPERVSNの優れているところは、羽根に反射する瞬間しか光を出さないので、光が後ろに漏れず、原理的にいくらでも明るくできることです。羽根が細いために光が当たらないところはほぼ透明です。つまり「半」透過ではない、本物の空間投影スクリーンにかなり近いと言えます。

アメリカではすでに、これを使ったライブコンサートも行われて人気を博したということでした。こういったホログラム技術と、モーションキャプチャ技術、およびバーチャルキャラクタの組み合わせにはものすごく可能性があるというのが、ディロン氏の意見でした。

デジタルセレブリティの活躍

日本のバーチャルキャラクタ、いわゆるVTuberは、アニメ的なテイストがほとんどですが、アメリカではリアル志向のものが主流で、「バーチャルインフルエンサー」「デジタルセレブリティ」などと呼ばれます。

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これを見ると、CGぽい方もいるようですが、やはり日本のテイストとは違います。

リル・ミケーラ(Lil Miquela・ディロン氏は”マッケイラ”と発音していた)は代表例で、私も聞いたことがありますが、ヴィトンやカルバン・クラインなど有名ファッションブランドの広告にも起用されているし、タイムズスクウェアでも広告が流れたという話をしていました。これはもう、本物のセレブですね。

リアル志向なのでリアルのモデルさんとも違和感なくコラボできます。左がリアルのセレブ、右がデジタルのセレブです。

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この技術を活用すれば、広告の「ハイパーパーソナライゼーション」が可能になります。セレブがユーザーに対して、その人だけに向けた広告をしてくれるなら、効果は大きいでしょう。

ディロン氏と、WFLE荒木氏の対談

ディロン氏の講演の後、Wright Flyer Live Entertainment(WFLE)社長の荒木英士氏が登壇し、対談形式になりました。WFLEはグリーの系列で、配信プラットフォームのREALITYの運営などで知られています。

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荒木氏は日本のバーチャルキャラクター特徴として、「後ろに人がいる」ことをまず挙げていました。日本のファンは、キャラクタよりもその「魂」を見ているところはあるということでしょう。キズナアイが魂を増やしたところ、結構な反発がありましたし(←ここは私の感想です)。一方、アメリカではあくまで「バーチャルな存在」という認識が強いようです。

またWFLEの強みとして、垂直統合モデルであることを挙げていました。基礎技術を開発し、プラットフォームを運営し、タレントも育てるという。日本のVTuber業界には、WFLEを含めてそういうところは多いですね。結果的にプラットフォームが乱立しがちで、良し悪しだとは思ますが(←私の感想です)。

「タレントを育てるのではなく、有名なキャラクタを使うのはどうか。ドラゴンボールなどは世界中で人気があるが」というディロン氏の問いに、荒木氏は「ハローキティなどの例はあるが、主流ではない」と答えました。ドラゴンボールなどはバックグラウンドのストーリーが大事なので、単純にバーチャルにするのは難しいと。

VTuberが他のエンタテイメントと差別化できるポイントは「相互関係性」であり、それを生かせるライブ配信が今は大事。でもゲームとタイアップしたり、VTuberがテーマのゲームを作ったりということは考えられると荒木氏は話していました。また技術的には、普通のカメラだけで3Dのモーションキャプチャができるシステムを開発しているとのこと。今はクオリティの高い3Dモーションキャプチャをするためには、高価な3Dカメラを複数台使っていますからね。

「フォトリアルな方向には行かないのか。有名ブランドとコラボしたりしないのか」というディロン氏の問いには、「フォトリアルには行かない。今のところ有名ファッションブランドは難しく、ゲームやお菓子などとの親和性が高い」という答えでした。

質疑応答で、「アバターを使ったコミュニケーション自体は新しくないが、昔からあるものとどう違うのか」という質問がありました。荒木氏はそれに「コミュニケーションだけではコンテンツにならず、盛り上がりにくい。何か目的が必要で、例えばフォートナイトが流行っているのは目的があるからだと思う」と答えていました。

感想

文中に感想をちょいちょい書いてしまいましたが、改めて全体の感想を。印象的だったのは、VTuberの発展は技術の進歩と一体なのだな、ということです。ひと昔前のゲーム文化に近い感覚です。新しいことができるようになるから、コンテンツの幅も広がっていくという状態にあり、今が面白いステージでしょう。ディープラーニング、モーションキャプチャ、ホログラム(AR)などの技術の進歩と組み合わさって、どうなっていくのか楽しみだし、先行しているアメリカの動向は要注目でしょう。

対談で、アメリカと日本の違いについて語られていましたが、なぜそうなるのか、日本のVTuberが世界に受け入れられるにはどうすればいいか、というところは、もう少し突っ込んだ話が聴きたかったところではあります。もちろん、難しいところなわけですが。ディロン氏は「日本のアニメコンテンツは世界で人気があるのだから、VTuberも世界に行けるんじゃないの」というニュアンスでしたが、荒木氏はあまりそれには食いついていませんでした。実は秘策があって、ここでは言えないのかもしれませんが。

アメリカのデジタルセレブリティの、一般層への人気を見ると、日本のVTuberはまだまだなのかもしれません。アニメテイストだからでしょうか? でも今では地方自治体とアニメがタイアップするわけで、昔は考えられませんでした。アニメとコンビニなどとのコラボも頻繁に行われており、日本ではアニメテイストのVTuberが広く受け入れられる素地はあると思えます。そのキッカケの一つとして技術の進歩はありえて、例えばホログラム技術で「リアル次元に存在する」ように見えるようになれば、活躍の場が広がって新しいことが起こるかもしれない、などと考えさせられた講演でした。

東京ゲームショウでの、VRおよびVTuber関係の展示の記事も書いてますのでどうぞ。


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メルクマ

人類の行き着く先はバーチャルであるはず。なのでVRやVTuber関係をウオッチしています

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コメント2件

日本にはデジタルセレブリティ的存在は居ないのか、と考えて真っ先に思いついたのが
ガチャピン、ムックの存在です。(デジタルでもなんでもない)
彼らは魂やバックグラウンドのストーリーに影響を受けない数少ないアバターなのでは!
…ちと無理があるかな?
ガチャピンはいろんなことに挑戦しますが、そのたびに中の人が違うであろうことは暗黙の了解でり、ガチャピンシステムと呼ばれたりします。
VTuberでガチャピンシステムの人は多くいますから(ダンスは人のモーションを使うなど)、そういう意味でもVTuber的と言えるかもしれませんね。
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