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PSVR2とQuest2の比較:お手軽VR対決!

Quest2が発売されて以来、お手軽にVRを楽しみたいという用途ではQuest2一択でした。しかしついにPlayStataion VR2が発売されました。確かに方式や用途が違いますが、どちらを買うべきか悩む方もいると思うので、両方のユーザーとして比較した結果を書きます。 1) 価格・スペック 2) 軽量ゲーム 3) AAAゲーム 4) 動画観賞 5) メタバース 6) その他の使い勝手 の6つの観点で比較しています。

すべての記述はPSVR2の発売直後、2023年2月のものです。

1. 価格・スペック

PSVR2の価格は74,980円で、高性能化と円安の影響で初代PSVRよりも高くなりました。一方でMeta Quest2も円安で値上がりして59,400円(128GB)、または74,400円(256GB)です。内蔵ストレージ容量によりますが、安い方はPSVR2よりも1万5千円安いことになります。

PSVR2を使うためにはPlayStation 5が必須であり、そのために 5万円~6万円がさらに必要ですが、既に持っている方は関係ないでしょう。一方でQuest2は単体で使うことができます。ただし後述しますが、高度なゲームを楽しむにはPCに接続する必要があり、そのPCはかなり高性能である必要があるため、その場合には全体的にはQuest2のシステムのほうがかなり高価になります。有線接続する場合にはケーブルが必要で、純正の3mケーブルは1万円します。光通信になっているからで、2mでよければAnkerなどの安いものが使えます。

カタログスペックとしてPSVR2が勝っている部分は、まず画面が有機ELで発色が良くHDR(ハイ・ダイナミクス・レンジ)に対応していて輝度の表現にも優れています。ユーザーが画面のどこを見ているかを認識する、アイトラッキングがあります。ヘッドセットが震動する機能があります。これらの機能はPC用としては20万円以上の高級機に相当します。画面解像度は高級機より劣りますが。また、コントローラーもハプティックフィードバック(触覚まで再現する震動機能)など高機能になっています。

一方でQuest2が勝っているのは、単体で使えることです。それなりの性能のCPU・GPUを内蔵しているので、本体だけでゲームなどができます。手軽でケーブルが不要なことはメリットでしょう。またPCと接続して使う場合にもWiFiで接続することができます。PSVR2はかならずケーブルが必要です。ただしWiFi接続にはデメリットもあります(後述)。

以上はカタログを見ればわかることですが、実際に使ってどうなのかについて書きます。

2. 軽量ゲーム

PlayStation5などゲーム機では、FFやエルデンリングなどお金のかかった大作、いわゆるAAAゲームが主流ですが、VRではもっと小規模なものが主流と言えます。その理由の一つはQuest2の性能の制約ですが、もう一つの理由はVRで長時間ゲームをやるのは疲れるので、軽いゲームがちょうどいいというのもあるでしょう。

そこで、まず軽量ゲームである「パズリング・プレイス」をやってみました。3次元でジグソーパズルするゲームで、ちょっとした時間でやるのに向いています。Quest2とPSVR2の両方に出ているので比較できます。

パズリング・プレイス(Quest2)

プレイ感覚について、両者にほぼ差はありません。ピースを目の前に近づけるとPSVR2版のほうがテクスチャが高精細なのがわかりますが、まぁ差は無いと言えます。

そうなると、Quest2の手軽さが優位です。電源を入れてヘッドセットをかぶればすぐにスタートできます。一方でPSVR2は(普段接続していなければ)PSVR2を接続し、テレビの電源を入れ、ヘッドセットをかぶり、2つのコントローラーのPSボタンを押して接続し、ゲームが始まったらプレイエリアを選択し、と妙に手順が多いのです。特にテレビはつけなくてもいいだろと思うのですが、つけないと進めないことが多いです。軽いゲームをちょっとプレイしたいというときは、Quest2のほうが断然使い勝手が良いと言えるでしょう。

他にも「ピストルウイップ」や「Jurassic World Aftermath」のようなQuest2で人気のゲームがPSVR2でも出ますが、このようなQuest2用の軽いゲームではPSVR2でも体験に差は出にくいと思われます。しかし大差がつくものもありました。「Rez Infinite」は電脳空間に入り込んで戦うシューティングゲームで、元々はPS2のゲームなので軽いはずなのですが、映像に大差があります。両方の画面を見てください。

Rez Infinite (Quest2版)
Rez Infinite (PSVR2版)

同じ敵のシーンで、敵が細かいパーティクルで表現されています。でもPSVR2版のほうがはるかに細かくてシャープなのが分かるでしょう。

また、PSVR2は画面が有機ELなので、背景の黒が漆黒です。Quest2は液晶なのでやや黒が浮いています。PSVR2はHDR対応で輝度の表現力が高いので、明るいところがまぶしいくらいにきらびやかでパーティクルも美しいです。このゲームは光と音の渦に包まれるビデオドラッグ的なものなので、体験はPSVR2のほうが圧倒的に良いと言えます。

Quest2をPCにつないでPC版のRez Infiniteをプレイすれば、パーティクルの細かさなどは改善するかもしれません。しかしパネルの画質の差はどうにもならないでしょう。また、Rez Infiniteは敵をロックオンして撃つゲームなのですが、PSVR2版はアイトラッキングを使って視線でロックオンできます。「敵が来た」と意識したところに勝手にロックされるので、まるで脳波でコントロールしている気分であり、電脳空間にジャックインしている気分がさらに盛り上がります。ヘッドセットの震動も有効に使われています。

以上のように、軽量ゲームについては手軽さでQuest2に分があるが、一部のゲームについては画質が違うのでPSVR2で遊びたいということになります。

3. AAAゲーム(PC版ゲーム)

いわゆる大作ゲーム、AAAゲームはQuest2にはほとんどありません。性能や容量に制約があるからです。そのため、そのようなゲームを遊ぶ場合はPC版のVRゲームを購入し、Oculus Link使ってQuest2をヘッドセットとして使うことになります。したがってここではQuest2をPCに接続した状態での比較を行います。

使うPCのスペックは、CPUが Core i7-12700K、ビデオカードが Geforce RTX2080(クロックアップ版) で、最新ゲームも高設定で遊べています。今でいえばRTX 3060Tiくらいの性能です。

設定ですが、アンチエイリアスはON、リフレッシュレートを72Hz、レンダリング解像度を1.3倍の5408x2736 に設定しています。パネルの解像度よりも高いですが、VRではディストーション変換を行う関係で、パネルより高い解像度で描画しないとボケるのです。これについて興味のある方は私の以前の記事を見てください。

リフレッシュレートを72Hzにしているのは、そこまで下げないと解像度が上げられないからです。RTX3080など使えば90Hzにできるでしょう。PSVR2は90Hzか120Hz(ゲームによる)です。

そしてゲームの比較をしたいのですが、残念ながらQuest2とPSVR2で同じAAAゲームを私は持っていません。そこでPC版の性能を活用したゲームということで、「Kayak VR」を使います。世界各地でカヤックに乗る体験ができるゲームで、フォトリアルなグラフィックが売りです。まずグラフィックを比較します。

Kayak VR (PC + Quest2)
Kayak VR (PSVR2)

このスクショでは違いが見えにくいですが、特に波のところがPSVR2版のほうが滑らかなのがわかるでしょうか。PC + Quest2版は波の頭のところにジャギーがあるのが目立ちます。スタート画面のプールの画面だとさらによく分かって、実物では一見してPSVR2版が綺麗です。

また、各地に移動するときにロードが入るのですが、PS5版のロード時間はコスタリカへの移動の場合で7秒、PC + Quest2は25秒です。PCもMVNO SSDにインストールしているのですが3倍以上違います。VRゲームではロード中は虚無で何もできないので、ロード時間は気になるものです。

次にレースゲームで比較してみます。同じゲームは持っていないので、PC版はProject Cars2で、PSVR2はGT7です。

Project Cars2 (PC + Quest2)
GT7 (PSVR2)

これもスクショでわかりにくいでしょうけれど、Project Cars2のほうが柵など直線部分にジャギーが目立ち、動いてるとそれがちらちらするので汚く見えます。一方でGT7ジャギーがほとんど気にならない滑らかな画面です(Shareボタンで撮ったスクショが実際より汚いですが)。それにより現実感がぐっと向上します。

PSVR2の優位点の一つに、アイトラッキングを活用した「フォービエイトレンダリング」があります。VRは通常、画面の中心付近の解像度が高くて端に行くほど解像度が低くなります。そのため視線だけを端に動かすとボケているのが分かります。「フォービエイトレンダリング」では、アイトラッキングを活用して視線が向いているところを高い解像度で描画するので、より違和感のない視界が得られます。実際にGT7でも、視界の端にあるサイドミラーを見てもくっきりとレンダリングされて、効果があることが実感できます。

このように、私のRTX2080搭載のPC(RTX3060Ti相当)と比較すれば、PS5 + PSVR2のほうが画質が良いと言えます。ゲームにもよるかもしれませんが、それでは埋まらないくらいの差があるように見えました。理論性能(TFlops)は少し上なのですが、PS5の実効性能の高さとフォービエイトレンダリングなどのおかげなのでしょう。Pavlov VRの開発者が「PS5とPSVR2の性能はRTX3090Tiを10%上回る」と発言したそうです。(リンク

4. 動画観賞

動画観賞もVRの重要な用途の一つだと私は思います。2Dの映像でも大スクリーンで見ている迫力がありますし、3D映像は別格の迫力です。

PSVR2にはNetflixやAmazon Prime Videoなど一通りの動画サービスがありますが、ほとんどが2D用のアプリでそれをVR空間上のスクリーンで見ることになります(シネマチックモード)。有機ELパネルなので画質は良いのではと期待していましたが、Amazon PrimeアプリはQuest2にもあるので見比べると、PSVR2のほうが映像の精細感が低いのが気になりました。Quest2の方はVR用アプリなので、2D映像であってもVRでの描画に最適化されているのでしょう。また、Quest2版のPrime VideoアプリにはVRコンテンツもありますが、PSVR2のほうには当然ありません。今後PSVR2にもVRモードで動作するPrime Videoアプリなどが出ることを期待します。Youtubeなどもそうですね。

PSVR2でVRモードで動く映像アプリは、今のところ「DMM TV」しかなさそうです。これにはアダルトもあって、いわゆるVR AVを見ることができます。ただその手のものは、専用アプリが必要だったりPCにダウンロードして見るものが多く、Quest2の方がそれらも使えるので大幅に見られるコンテンツが多いです。

PSVR2に「SKYBOX VR」のようなアプリが欲しいところです。本体やPCにあるビデオファイルをQuest2で見ることができるアプリで、2Dにも3DVRにも対応しています。これがあれば動画観賞用としての実用度はかなり上がるでしょう。SKYBOXは画質が良く使い勝手も良いのでお気に入りです。

今のところPSVR2にちゃんと対応した動画鑑賞アプリは少ないですし、本質的な問題として起動して使えるまでの手順が面倒という問題もあるので、動画観賞用としてはQuest2のほうが断然優れていると言えるでしょう。画質はPSVR2のポテンシャルのほうが高いはずなので、今後それを生かせるアプリが登場することに期待したいです。

5. メタバース

メタバースというとあいまいですが、「VRChat」のようなVR SNSや「VARK」のようなVRライブのことをここでは言っています。これらのほとんどはQuest2に対応しており、PSVR2には対応していない状態なので、もちろんQuest2が強い分野です。VRChatのQuest2版は制約が強いのですが、PCとOculus Linkでつなげばフル機能を使うことができます。VRでそういうことをしたい方はQuest2一択と言えるでしょう。

VARKは初代PSVR版はあったので(今はサポート終了)、PSVR2に対応する可能性は高そうです。Quest2からPSVR2への移植は難しくないはずなので、今後メタバース系のアプリも出てくるとは思われます。

6. その他の使い勝手

その他、使い勝手で気づいたことについて。まず装着感ですが、Quest2は標準ではゴムバンドで固定する方式なので装着感は良くありません。私はサードパーティー製の「BOBOVR M2」というバンドを付けており、VIVE Pro風の装着感になるので気に入っていて、PSVR2よりもむしろ良いと思っています。PSVR2も悪くありませんが、上下にズレやすいのが気になります。

PSVR2が良いのはケーブルが後ろから出ていることです。Quest2の場合にはゴーグルの横から出るので、手に当たって邪魔になります。Oculus Linkでつないでいるときや、充電ケーブルをつないでいるときに気になるポイントです。

Oculus LinkはWiFi接続もできるのですが、遅延が発生するし安定感も落ちるので私はあまり使っていません。VRでは頭を動かしたときに映像が遅延すると酔いの原因になります。環境にもシビアで、WiFiルーターが近くにあって5GHzで通信できないと画質がかなり落ちます。

PSVR2の不満点はボリュームボタンが無いことです。ボリュームを設定するにはPSボタンを押してHomeに戻り、下の方にあるボリューム設定を選ぶ必要があって煩雑だしゲームが中断します。私はボリュームをわりと頻繁に変更する方なので。Quest2はボリュームボタンがあるし、初代PSVRにもありました。なぜ改悪したか疑問です。

今後のアップデートで、せめて設定をもう少し楽にしてほしいところです。他にも上にも書きましたが、起動して使えるようになるまでの手順が煩雑など、PSVR2には今後リファインして欲しい部分があります。

視野角について言及していませんでした。VRゴーグルをかぶると視野が狭まって水中眼鏡で見ているような感覚になります。臨場感のためには視野角が広いほうがよいですが、PSVR2の視野角はQuest2よりかなり広いと感じました。カタログ値の視野角はPSVR2が110度でQuest2は非公開です。VIVE Proも110度ですがそれより広く感じます。レンズの位置を前後スライドして調整できるのですが、顔に近いほうが視野角が広いので眼鏡にぶつかるくらいまで近くしていて、そうすればフチがほとんど気にならなくなります。

まとめ

まとめると、「VRを買ってとりあえずいろいろやってみたい」という方にお勧めなのは、やはりQuest2だと思えます。できることの幅が違うので。

ゲーム重視の場合はどうでしょうか。Quest2はゲームの数が多いし、PCのVRゲームも入れるとさらに多いので数では圧勝しています。前述のように軽いゲームを手軽に遊ぶこともQuest2が優れています。

しかしPSVR2の性能を生かせるゲームの体験は圧倒的に良く、他に代えがたいものです。まだゲームの数は少ないですが人気作は移植されるでしょうし、ソニーの独占タイトルも出るでしょう。初代PSVRのときは「アストロボット」や「Firewall Zero Hour」などソニー製の優れたゲームがありました。

PCはセットアップやトラブルシュートに知識が必要ですが、PS5は何も考えずにハイパワーが使えるのが良いところです。PC用のハイエンドなVR機器はアイトラッキングやHDRに対応してますが、ゲーム側で対応されていないことがほとんどです。PCゲームは様々なVR機器に対応する必要があるため、個々の機能に対応しきれません。一方でPSVR2は専用ハードと専用ゲームなので、しっかり対応されるのも強みです。最初から機能をフル活用している「Rez Infinite」は必見です。

というわけで、いろいろやりたい方はQuest2現代最高峰のVRゲーム体験がしたいならPSVR2ということになります。私としては両方買うのがお勧めですが、目的も決めきれないほど悩むならPSVR2を買うのもいいかもしれません。最初に最高峰のVRを体験したほうが「なんだこんなものか」とならないで済むと思うからです。まだ発売されたばかりなので、いま足りない部分も今後充実する余地は大いにあります。それではよいVRライフを!


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