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VTuberフェス「ななしふぇす どぅーいっと!」は規模も内容も凄かった

本日(2020年12月19日)、VTuber事務所「774inc.」 の全体フェスである「ななしふぇす どぅーいっと!」が開催されました。13時から21時半くらいまで、途中休憩はあるものの8時間半にわたるステージイベントです。VTuberでもっと長時間のステージイベントはありましたが、その場合は多くのパートが事前に収録した動画を流す形式だと思えます。「どぅーいっと」は完全に生配信で、その形式では空前の規模ではないでしょうか。これだけ長時間の生ライブをやるというのは大変なことで、1ヵ月以上前から頻繁に練習やリハーサルが行われ、さらにはメンバー間で集まって自主練習するなど並々ならぬ準備がされていました。

4部+フィナーレに分かれていたので、ここではまずそれぞれの感想を書き、最後に全体について書きたいと思います。

第1部・あにまーれと どぅーいっと!

774inc.には4つのグループがあり、第1部は「有閑喫茶あにまーれ」がメインのステージです。このステージの印象は一口で言えば「キラキラしたアイドル」でした。あにまーれは芸人集団と呼ばれていて、わちゃわちゃとしているのが持ち味ですが、今回は少し違いましたね。一つは揃いのアイドル衣装の効果でしょう。ホロライブのステージ衣装を見て「いいなー」と思っていましたが、まさかあにまーれでも実現するとは。この衣装でみんなで楽しそうにトークをしていると、ただのトークでもキラキラして見えてきます。

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でも衣装だけの効果ではないと思うんですよ。11月くらいから毎週、時には週に何回も集まって長時間練習していたようで、大変だけど部活みたいで楽しかったと言っていました。青春していたと。そうやって絆が強まったことが、これまでと少し違う雰囲気として出ていたのでしょう。フォーメーションが難しそうな曲(サンタさんとか)でもまとまっていて、がんばって練習したのが伝わってきました。

女性VTuberグループは自分たちをアイドルと定義しているところが多いですが、あにまーれはそう言ってなかったし、実際アイドルという感じは薄かったでしょう。これまでのあにまーれとしてのイベントも、トークや企画物がメインでした。しかし今回、公式が「あにまーれはアイドルです!!!」とツイートしました。

あにまーれはアイドル

実際、今日のあにまーれはわちゃわちゃと楽しい持ち味は生かしつつ、アイドル衣装やダンスでキラキラしていて、厳しい練習によって団結して青春していました。もうどこから見てもアイドルでしょう。「そうか、あにまーれはアイドルだったんだ!」と多くのファンが気づかされた、そんなステージでしたね。今後もアイドルとしてのあにまーれをもっと見たいし、きっと見られると思います。

ふぁんふぁーれ

第2部・ブイアパと どぅーいっと!

ブイアパのステージで印象的だったのは、歌のうまさです。今回のステージに上がった4人はみんなゲーマーで、普段はゲーム配信ばかりしていますが、たまに歌枠をすることがあり、みんな声が良くてうまいのは知ってしまいた。今回のステージでもその歌を生かしていましたね。ラストの花奏かのんちゃんによるオリジナル曲も素晴らしかった。ダンスもなにげにうまくて、さすが器用だなと。

ブイアパ

3D配信はダンスだけでなく、普段の動きなども見られるのが良いですが、小森めとちゃんの動きがいいなーと見ていました。ダンスも普段の動きも綺麗で、かっこよさと可愛さのバランスが絶妙。「ばか王」などでのポンコツな感じとのギャップがすごいです。

めとちゃん

あ、因幡はねるちゃんの動きも良かったですよ。3D配信の最初の頃はなんかぎこちない動きだったことを思い出しますが(それも可愛かったけれど)、最近ダンスの先生についている効果なのか、ダンスだけでなく普段の何気ない動きもきれいでアイドルっぽかったです。

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第3部・シュガリリと どぅーいっと!

シュガーリリックのステージで印象的だったのは、ユニットとしての絶妙なまとまりです。龍ヶ崎リンちゃんが言ってましたが、3人とも個性は全然違うんですよね。歌声もダンスの感じも違う。でも3人だとそれが絶妙に溶け合って、違っていることがむしろ良いんですよ。これはケミストリー(化学反応)だなと。

シュガリリ

私はそもそも、韓流アイドルみたいなビシっとそろったダンスよりも、個性が出ていてそれが溶け合っているようなダンスのほうが好きなので、シュガリリのステージはとても好みでしたね。

シュガリリはハニストの妹分という位置づけですが、これまで3Dで共演したことがなく、それがシャッフルユニットの形ですが一部実現したのも見どころでした。

シャッフル

第4部・ハニストと どぅーいっと!

ハニーストラップのステージは「実家のような安心感」という印象でしたね。彼女たちは元々すごく仲が良く、しかも2年半もずっと一緒なので一緒にいることの安定感がすごい。モノマネのコーナーがどのステージでもあったのですが、ハニストがやはり一番安定感ありましたね。普段モノマネはやらないそうですがしっかり面白い。

歌はパトラちゃんが作った曲を中心にした構成で、オリジナル曲が豊富にあるのは強いです。ファンが見たいものを期待以上のクオリティで見せてくれたというステージでした。

ハニスト

グランドフィナーレ

VTuberのライブには弱点があって、それはステージに同時に上がれる人数に制限があることです。生身であればAKBみたいに何十人も上がれますが、VTuberは動きをキャプチャする必要があるので何十人というのは普通は無理で。例えばBalusのスタジオで5人、バンダイナムコのスタジオで9人、ドワンゴの最新鋭のスタジオでも10人以上とあります。

しかしグランドフィナーレでは、20人の774inc.のメンバーが一同に会していました。1グループづつ最後の挨拶をしたので、(事前収録ではなく)リアルタイムにキャプチャしているはずです。ただステージが島状に分かれていたので、複数のスタジオでキャプチャしたものを合成すればできそうに思えます。

フィナーレ01

フィナーレ03

なるほど複数の島に分かれていたのはこのためだったか、と思いましたが、ラストでは全員が1つのステージに上がっていました。

フィナーレ06

個々のキャラクタのローカル座標をもとにメインステージに強制的に配置したか、などとつい裏側を考えてしまいますが、視覚効果は抜群で大いに盛り上がりました。全員がソロをとって「ぶいちゅっばの歌」を歌うのは最高の演出で、それを可能にしたのは技術陣の努力であり、喝采を送りたいですね。VTuberのライブで20人がリアルタイムにステージに上がった前例はあるのか気になります。

技術力と言えば、VTuberのライブってMCから曲に入る前に完全に暗転することが多いのですよね。そこで曲モードに切り替えたり、場合によっては収録したものに差し替えたりするわけですが、ななしふぇすでは暗転する場合でも真っ暗にはならず、ちゃんと映像がつながっていました。これは技術的には難度が上がると思えますが、ライブ感があるので好きです。いろいろ難しそうなことをやって、ノートラブルで終えたのは本当に凄いと思いますよ。

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全体的な感想

冒頭にも書きましたが、完全に生のVTuberライブをこの規模でやったことは凄まじいでしょう。しかも最後は20人同時にオンステージ。スタジオや機材を大量に使っているし、準備やリハーサルは大変で、とてもコストがかかっているはずです。

かつてあにまーれやハニストも所属していたupd8の撤退が決まった時、おめがシスターズが社長の大坂氏にインタビューした動画があります。その中で社長は「upd8フェスをやりたかった。でもめちゃくちゃお金がかかる(からできなかった)」と語りました。

大規模フェスはとにかくお金がかかるのでしょうね。ななしふぇすが採算がとれているのかは気になるところです。でも大坂氏は「1回思い切ってやれば変わったのかもしれない」とも言っています。たらればですが、僕は変わったんじゃないかと思えますね。ななしふぇすも仮に単体で赤字だったとしても、この成功は774inc.にとって大きいのではないでしょうか。

以前に、774inc.歌謡祭についての記事を書きました。あれはメンバーが自発的に始めたもので、今回のイベントよりずっと小さな規模ですが、それまで「一つの箱」という感覚が希薄だった774inc.が変わりるのではないか、と思えた内容でした。今年のGWの話です。

いつか公式のイベントがあるといいなと思っていましたが、これほどの規模とは驚きでした。それだけ運営に力が入っていて、774inc.としての一体感を出したいということなのでしょう。それはリスナーに大いに伝わったと思います。私もこのフェスで、774inc.の魅力にさらに気づかされました。シャッフルユニットもとても良い試みでした。

あと特に、あにまーれにとっては今回が初の現行メンバーでのステージイベントでした。あにまーれは今年の2月にステージイベントを行いましたが、このときは3人でした。

それが今は9人です。新メンバーはあにまーれに馴染んでいると思いますが、2年以上のキャリアの初期メンバーと今年からの新人しかいないという構成もあって、グループとしての一体感はまだまだだったかもしれません。今回、長期にわたる部活のような練習を共にしてイベントを作り上げたことで、絆が強まったことは間違いないのでしょう。ライブのMCでのやり取りでも空気感で伝わってきました。リーダーの因幡はねるちゃんも最後の挨拶で、いろいろあったけれど、これからはこのメンバーで手を取り合ってがんばっていくと言いました。

フィナーレ02

この初の全体フェスは774inc.にとって大きな転機になったでしょうし、それに立ち合えて嬉しかったですね。これからも続く774inc.の物語を楽しみにしています。

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