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Meta Quest3とPlayStation VR2を比較・ゲームに限ったらどちらが良い?

こちらはMeta Quest3とPSVR2の比較記事です。価格的にほぼ同じなのでライバルだとは言えるでしょう。でもタイトルにわざわざ「ゲームに限ったら」と書いたように、ゲームに限らない汎用性であればQuest3のほうが明らかによく、比較にもなりません。Quest3は動画などメディアを視聴したり、仮想デスクトップを使って仕事をしたり、VR Chatなどのメタバースを楽しんだりと、いろんなことに使えます。一方でPSVR2はほぼゲームしかできません。初代のPSVR1はAmazon Prime Videoなどメディアアプリはそこそこあったのですが、PSVR2はいまだにDMMプレイヤーしかない有様です。発売後に増えるかと思ったら8か月経っても(記事執筆時点)増えないし、PSVR1にはあったライブ視聴などのアプリも無いので、PSVR2はゲームに特化する方針なのでしょう。ですから「VRでいろいろやりたい」という方はQuest3一択です。発売当初はPSVR2にもうちょっと期待していたので、こういう記事を書きました。

しかしゲーム用途に限れば、PSVR2も勝負になるはずです。「自分は主にゲーム用途でVRが欲しいので比較したい」という方や、「Questは既に持っているのでゲーム用にPSVR2を買い増す価値があるか検討している」という方に向けた記事になります。

画質

ではまず、画質はどちらが優れているでしょうか。一言で画質といっても複数の要素が絡んでおり、主に「パネル」「レンズ」「処理能力」の3つが重要です。結論から言えばパネルと処理能力はPSVR2が、レンズはQuest3が優れています。

同じゲームで比較します。「Red Matter2」は両方で発売されており、かなり画質の良いタイトルです。Meta Quest用のゲームはほとんどがQuest2向けに作られているので、Quest3の性能を生かしていないものが多いですが、このゲームはQuest3向けに画質改善パッチが配信されているので性能が活用されているはずです。まず下のスクリーンショットを見てください。

Meta Quest3
PlayStation VR2

左の宇宙カプセルを見るとわかりますが、Quest3のほうがのっぺりしています。実際の画面だともっと差があり、PSVR2だとカプセルの微妙な曲面、部分的に凹面になってるデザインなどがよく分かりますが、Quest3ではのっぺりしていてあまり分かりません。この理由は、一つはPSVR2の方が処理能力が高いため、リアルな陰影の計算や描画がしっかりできることです。もう一つはパネルの性能で、PSVR2の有機ELパネルのほうがQuest3の液晶パネルよりもコントラストが高いことです。

これはワイヤーフレームのCG映像が投影されているシーンなのですが、PSVR2では背景は暗く、ワイヤーのCG映像は輝いていてコントラストが美しいです。Quest3では背景の黒は浮いており、かつCG映像の輝度は低いのでPSVR2と比べてしまうとノッペリしている印象になります。

このように、パネルのコントラスト、および処理能力による陰影の表現が重要なフォトリアルなゲームでは、PSVR2のほうが画質が良いと言えます。大差があるわけではないのですが、没入感に影響していて、VRは没入感がとても大事です。

PSVR2

これは別のゲームで「Rez Infinite」ですが、こういう漆黒の空間にパーティクルが煌めくゲームはPSVR2の独壇場です。有機ELパネルは素晴らしい。

では画質に関して一方的にPSVR2が良いかといえばそうでもなく、アニメっぽい映像のようなコントラストが不要な映像の場合は、Quest3のほうが良いことがあります。なぜならQuest3はパンケーキレンズを搭載していてレンズ性能が良く、隅々までピントが合っているからです。PSVR2はシンプルなフレネルレンズ(凸レンズ)なので収差や歪みがあり、中央から外れた部分を見るとあきらかにボヤけています。それについてはこちらの記事に詳しく書きました。

ではどういうゲームだとQuest3のほうが良いでしょうか。以下が例です。

これは「アングリーバード」のスクリーンショットで、Quest3だと画面中央から外れているバードたちもくっきり見えますが、PSVR2ではボヤけてしまいます。ちなみにQuest2でもボヤけます。Quest3のパンケーキレンズの威力です。

これは人気アプリの3次元ジグソーパズル「パズリング・プレイス」ですが、これもQuest3でやったほうがずっとよいですね。ピースが探しやすいです。

つまりこのようなアニメ調の、コントラストが強くないゲームはPSVR2の強みは発揮できず、Quest3のレンズの良さが利くのでQuest3のほうが見栄えが良いのです。さらにスクリーンドア効果と呼ばれる、ドットの隙間が網目状に見える現象がPSVR2はありますが、Quest3はほとんどありません。これも映像がすっきりしている理由の一つです。画質に関しては一長一短でゲームによるというのが結論です。

遊べるゲームの種類

遊べるゲームの種類ですが、数で言えばQuest3が圧倒しています。Quest1からの蓄積があるので、ゲームだけでもおそらく1000前後あるはず。一方でPSVR2対応のゲームは現時点(2023年11月)で100くらいです。Questの人気ゲームはけっこうPSVR2でも出ていますが、無いものもたくさんありますね。例えばGolf+とかFirst Person Tennisとかスポーツ系が手薄なのが残念。

一方でPSVR2には、Questには出ていないAAAタイトル(大作タイトル)があります。例えばグランツーリスモ7や、バイオハザードVILLAGEなどです。これらは通常のテレビゲームですがVRモードもあるということで、そういう作り方ができるのがPSVR2の強みではあるでしょう。グランツーリスモ7のVRモードはめちゃくちゃ良いです。多少酔いますが。

AAAタイトルではなくても、PSVR2やPCVRには出ていて、Questには出ていないゲームはいろいろあります。例えばNo Mans Skyカヤックなどです。いずれも処理能力や描画性能的にQuestでは難しいのでしょう。純粋な処理性能は大差がありますからね。No Mans Skyは宇宙探検するゲームでVRだと探検気分が盛り上がるし、カヤックはコスタリカや南極でカヤックを漕ぐリアルな体験ができます。

Quest3でもPCに接続してQuest Linkを使えばこれらは遊べるのですが、高性能なゲーミングPCが必要で、設定などもわりと難しいです。PSVR2は高性能がお手軽に楽しめるのが魅力ですね。

PSVR2には視線入力ヘッドセットの振動などQuest3には無い機能があり、これらをうまく活用したゲームは没入感が高いです。一方でQuest3には、外の風景とゲーム画面を合成したいわゆるMRのゲームがあります。

このようにゲームの種類についても、一長一短あると言えます。

使用感・利便性

ここまで「一長一短」という結論になっているので、玉虫色というか、忖度しているような感がしてしまいますが、この項目、「使用感・利便性」についてはQuest3が圧倒しています。

まずQuest3はケーブルが不要で単体で動作するので、そこは当然良いですね。PSVR2はPS5につないだり、電源入れたりということが必要です。2つのコントローラーのPSボタンを押す必要があるなど、使えるまでの手順が長いです。ケーブルは邪魔になることがあります。

さらに、私としてはむしろこちらの方が重要なのですが、Quest3はかぶったあとであまり微調整をしなくても、映像が綺麗に見えます。一方、PSVR2はきれいに見える位置が狭いので、かなり気を使って位置合わせをする必要があります。これはレンズの違いから来ていて、PSVR2のフレネルレンズは目がレンズの中央にないと綺麗に見えないのに対して、Quest3のパンケーキレンズは許容範囲が広いのです。これは使用感に大きく影響します。詳しくは前述のQuest3の記事にも書いています。

また、PSVR2はストラップがあまり良くありません。頭を前後から締め付ける構造で、Quest3のように上にストラップがないために、どうしても下にズレやすいのです。頭の形状にもよると思いますが、ネットでも多くの人がズレやすいと言っているので私だけではないと思います。Quest3は付属のストラップが気に入らなければ、別売りのエリートストラップや社外品のストラップに交換できます。PSVR2は構造的にストラップが交換できません。

VRが普及しずらい最大の理由は「ゴーグルをかぶるのがめんどくさい」ことだとよく言われますが、Quest3はそれを軽減するために工夫しているのでしょう。PSVR2には工夫がなく、めんどくささで大きな違いができています。

PSVR2のほうが良い点といえば、ケーブルがあるので電池切れの心配が無いことや、ゲームの画面が常にテレビに出ているので複数人で楽しみやすいことはあります(Quest3もストリーミングすることはできる)。とはいっても、やはり使用感・利便性はQuest3の圧勝でしょう。

コスト

価格はPSVR2が74,980円、Quest3の128GB版は74,800円ということでほぼ同じです。512GB版なら96,800円になります(2023年11月時点)。もちろんPSVR2は別にPS5も必要で、既に持っているならよいのですが、持っていないなら追加コストになります。Quest3はエリートストラップなどアクセサリも欲しくなるかもしれません。

遊ぶためにはゲームを買う必要がありますが、ゲームはQuest3のほうが安い印象です。例えば前述のRed Matter2はQuest版は2990円ですが、PSVR2版は3740円です。PSVR2版はたいていSteam版と同じ値段で、Quest版はそれより安いことが多いですね。

またMeta Questのストアはよくセールをしており、Red Matter2はブラックフライデーのセールで40%オフでした。一方でPlayStation Storeでは30%オフでした。つまり割引後の値段は1794円2618円なので、けっこう違いました。割引率は場合によりますが、コストが低いのはQuest3のほうだと言えるでしょう。まぁRed Matter2に関して言えばPSVR2版のほうが画質が良いのでコスパが悪いとは思いませんが、画質が大差ないゲームならQuest3版を買うでしょうね。

まとめ

まとめると、Quest3は万人向けで、PSVR2はピーキーな性質があると言えます。Quest3はゲームの種類が多いし、VRによくあるアニメ調のゲームならば映像はきれいだし、ゴーグルのつけ外しが楽でストレスが少ないのがメリットです。ゲームも安いし、万人向けでお勧めしやすいです。

一方でPSVR2はリアル調のゲームならば画質が良いし、そもそもリアル調のゲームはPSVR2かPCでしか出ていないことが多いです。しかしゲームの種類は多くないし、ケーブルや微調整など面倒が多い。だから手放しではお勧めしにくいがピーク性能は高いです。

確かにQuest3は間違いないでしょう。楽しいしラクだしお勧めできます。でもPSVR2のグランツーリスモ7や、Rez Infiniteや、No Mans Skyなどの体験は素晴らしい。VRは本来、そういう凄い体験を仮想現実として味わうためのもののはずで、そこを重視するならPSVR2を先に買うという選択肢もありえるでしょう。私としては、両方買うのがお勧めですね。

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